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売る本ではなく、個人の方からの依頼で作る本もあった。、趣味について書いたもの、人生などを1冊の本にまとめたりする。
読む方(作る方)からすると、企業や団体の本よりも、特に趣味の本はどんなジャンルであれ、面白いのだ。何十年もひとつの趣味を突き詰めてきた人の書くものだから、面白いのは当然だろう。
自分の直接担当したものではないが、山の本もいくつか関わったりした。
中でも、丹沢や道志、中央沿線の山々中心に、山の神を探し訪ねている人の本は、とても面白かったし、また貴重なものでもあると思う。そもそも、類書がない。あっても、民俗学などの学問的な研究になってしまうので、知識として知る上ではいいだろうが、「読み物」ではないし、例えば実際にその山の神を訪ねてみたりする時、あまり参考にならない。そもそも専門書は高額だ(その点、柳田国男は別格ですね)。
ここ数年、丹沢のメジャーではないところに行くようになると、その本に出ていた山の神を訪れることもある。
例えば、丹沢には東と西に、山神峠という峠がふたつある(ところで丹沢の西と東ってどう分けるのが普通なんだろう)。
東の峠は、伊勢沢ノ頭から北西に伸びる尾根の鞍部。古くは玄倉からユーシンに行く際のメジャーなルートだったそうで、実際、この本でもそのように書いてあるのだが、今では峠の玄倉側、ユーシン側ともども、崩落で通行禁止となっている。すでに峠としての機能は失われてしまっているのだ。だが、今でもちょっと傾いてしまってはいるが、山の神の祠は残っている。
西の峠は、椿丸の南西になる山神峠。本では、この峠を探し求めて、小山の古老から聞いた話や、周辺山域をさまよった様子が書かれていて、とても興味深い。この峠は現在の丹沢湖の西端にある浅瀬から、世附川の上流、水の木(昔は馬印といったそうで、馬印の炭を生産していたそうだ)に抜ける。浅瀬からは小山に行けるので、炭を運んだ経路だったのだろう。
この峠にも昔からの山の神が残っているという(こちらは行ったことがまだないのだ)。
山の神は、深い山中にあるのではなく、人里と山の境界でもある。今では歩いても人と出会うことのほうが珍しい極西丹沢だが、木とのつきあいがもっと深かった昔は、人の影もずっと濃かったのだろう。
このような本を読むのは、実際にその場所を知っていると、実に楽しいことだ。自分の知っている場所で自分とは違うものを見ている他人の目を経験することでもある。
この先、そういう本に関わることができたら、どんなに面白いだろうと思う。もし自分の山の記録や随筆、写真集を1冊の本にしてみたいという人がいたら、ぜひ声をかけて欲しいと思うのだが、広告みたいになってきたので、これ以上はやめておこう(^^;
ヤマレコの記録を見るのも、同じ意味で面白い。これからの計画の参考になるだけでなく、同じ日、同じ場所に行った人の記録を見るのは、みなさんも楽しみにしているのではなかろうか。
山の写真は、写真の出来以上に、「記録」という側面、撮影するポイントと対象探しこそが命だろうと思う。技術を尽くさなくても、この場所からこんなものが見えるんだ、という驚きが欲しいといつも思いつつ、写真を撮っている(そもそも技術はないのだが)。
その驚きをヤマレコの記録で感じることが、なにより楽しい最近である。
写真:東の山神峠の祠
山には、
特に低山にはそんな面白さが満載だと思います。
お客様の本に書かれていないことまで見えてきそうな(想像がしやすい)恵まれた仕事、羨ましい!
低山は、高山とは全然違った面白さがありますよね。どっちも好き。
仕事は面白いけど、仕事そのものがいつもいつもあるわけではないのが・・・(>_<;
ペブさん
この祠はすてきですね。50年くらいでしょうか。人々が生活のために山を歩いていた、最後の時代の名残でしょうか。
僕は転勤であちこちの地方都市に住んできましたが、地方でそういう本を探すのが大好きです。
有名な山域といっても、古老に話を聞いてまで、しかも書く人はほんのわずかです。
同じ本でも「バイパスチェーン店文化」みたいな本とは大違いです。ぜひ「添加物」抜きのおいしい本を。
東の山神峠の祠は、どのくらいたっているんでしょうか。水神も一緒にお祀りされているらしいです。
西の山神峠の祠は、江戸時代の小田原藩の役人によって建立されているそうで、幕末の甲相国境紛争で、相模の領土である証拠としてとりあげられているらしいので、それ以前のものみたいです。
いい原稿だと、作る方もそれだけ気合入りますね。
山に関わる最近の著作はフィクション小説もエッセイも「雰囲気押し」「流行り押し」な感じで10年後、20年後、読み返したいようなものが減ってる気がします。それこそ、自費出版のもののほうが味わいのある読み返したい1冊がありそうです。東海地方は山関係の蔵書に乏しくて(古本やなどかほとんどない)出会えるきっかけがほしいですね;
最近の本はそれほど知らないんですが、多分昔からいいものは限られていたと思うんです。昔のは、いいものしか今に残りませんし(^^; 個人の本は、「売れる」ことを頭から考えていないので、非常に内容に偏りがあったりしますが、それがまたマニアックな感じだったりしますね。アマゾンとかには、とにかくなんでもある感じですが、実際に中を見られないので、ちょっとわかりませんよねぇ。。
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