■ 運動で若返り
運動している人は生き生きとしていて見るからに若々しいですが、4年前に実施された「体力・運動能力調査」によると、20〜64歳の成人において運動する人としない人では最大20歳の体力差があることが分かったとのことです。運動を「週1回未満しか行わない群」と「週1〜2日程度の群」について見てみると、男子の20〜40歳代では10歳程度、50歳代以降では5歳程度、女子の20歳代では20歳程度、30歳代では15歳程度、40歳以降では5〜10歳程度の差がみられたという結果でした。
私は週4日以上の運動習慣がありますが、オムロンの体組成計で表示される年齢がいつも30歳以下です。実年齢とは20歳以上の差があります。
■ アンチエイジングに影響を与える話題の「テロメア」と運動の関係
超高齢社会といわれる時代を生きる私たちにとって、できるだけ長く健康的に若々しくいること、つまり「アンチエイジング」は重要な課題のひとつです。近年、科学の進歩により人の体内に存在する「テロメア」が老化防止のカギを握っていることが分かったといいます。このテロメアに注目した治療医学を推奨する医学博士・古賀祥嗣氏の著書『「最近、若返ったね」と言われたければ、テロメアをのばしなさい』から、テロメアとは何か、そして最新科学に裏付けられた、日常生活の中で誰でもできる若返りの方法をご紹介します。
◆ テロメアは人間の健康や寿命に大きな影響を与える「生命の回数券」
「テロメア」とは、私たちの体を作る細胞の中の染色体の末端にある構造で、大事な遺伝子情報を保護するキャップのようなもの。人間の体は生まれたときから細胞分裂を繰り返し、新しい細胞をつくることで生命を維持。しかし、細胞が分裂する回数には限りがあり、その回数に関係するのがテロメア。
「細胞が分裂するときは、まずDNAがコピーされますが、実はこのとき、染色体の最末端部分を完全にコピーすることはできないのです。ですから細胞分裂を繰り返すごとに、末端は徐々に短くなっていきます。つまりテロメア配列が少しずつ失われていくわけです」。こうしてテロメアは年齢とともに短くなるが、それによって染色体が不安定になり最終的に細胞は分裂をやめてしまう。細胞が分裂しないということは、新しい細胞が生まれなくなるので、老化が進み、やがては生命を維持できなくなってしまう。このことからテロメアは「生命の回数券」とも呼ばれている。
◆ テロメアを短くしてしまう4つの生活習慣
では、テロメアが短くなると具体的にどんなことが起きるのか。「老化が進むと、肌はたるみ、シミやくすみ、シワが目立ち、白髪、骨量の低下……といった現象が起こります。こうしたことはテロメアの短縮と深く関わっているのです。(中略)こうした見た目の変化だけではなく、すべての加齢関連疾患の事実上の原因となります。
」。加齢関連の疾患とは、がん、脳卒中、心筋梗塞、動脈硬化、感染症、認知症など。どれも悪化すれば生命に大きな影響を与える疾患。人間が生きていく以上、細胞分裂が起きるのは自然なことで、それに伴いテロメアが短くなるのもやむを得ない、と諦めるのは早い。2009年にテロメアの役割を明らかにした研究で3人の科学者がノーベル賞を受賞。その研究により、テロメアの短縮速度には個人差があることや、以下のような生活習慣がテロメアの短縮を加速させることが明らかになった。
<テロメアの短縮を加速させる生活習慣>
1. 不規則な食生活や偏食
2. 運動不足
3. 喫煙、過度の飲酒
4. 精神的なストレス
このような生活習慣は成人病の原因とも言われているが、実は老化にも悪影響を及ぼしている。他方で、生活習慣を改めればテロメアの短縮速度を遅らせることができる、つまり老化や病気を予防できるかもしれない。
◆ 若返りに効果的な運動量とは
【不規則な食生活や偏食】、【喫煙、過度の飲酒】といった悪習慣は、変えたり止めたりすることで改善される。最近は、喫煙できる場所が減ったり、コロナ禍で飲み会や会食の機会が減ったりした人は多い。一方で【運動不足】の解消は、これまでにない習慣をプラスすることなのでハードルが高い。しかも、最近は在宅勤務が増え運動不足が加速し、コロナ不安でストレスを感じやすい世の中。ストレス解消はもちろん、アンチエンジングのためにも、今こそ本格的に運動習慣を取り入れる時。
たとえば、「ウォーキング」「ジョギング」「スイミング」などの運動習慣を取り入れる。軽い有酸素運動を30分以上、できれば毎日、少なくとも週2〜3回程度行うだけでも、効果がある。30分以上のウォーキングを週3回というと一見多いように感じるが、たとえば朝30分の散歩を週に1回。片道15分のスーパーに週2回歩いて買い物にいく。それだけで30分以上のウォーキングを週3回行ったことになる。生活の一部に運動を取り入れる。この1歩が若返り、健康寿命に繋がると思えば、決して難しくない。また、適度な運動は気分転換になりストレスの発散にも役立つので、テロメアの短縮速度を抑えるのに一石二鳥。
■ 人類にとって永遠の課題
若さを保つことは、始皇帝をはじめ時の権力者が莫大な費用や人材をかけて追い求めてきた、人類の永遠の課題。しかし、科学技術が進んだ現代社会ではアンチエイジングは夢物語ではないようです。生活習慣の改善の中でも、運動は最も後回しにしやすいですが、だからこそ運動習慣のない人は、運動を日常生活に取り入れることで「若返り」をより実感できるのではないでしょうか。私もその一人です。
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