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そんな昔の山行日記の大部分は、絶景や美しい花に囲まれて「サイコー!」と叫ぶ内容ですが、たまに結構グサッと生々しい話題もあり、久しぶりに読み返してみて胸が締め付けられる気分でした。そこで、今から19年前のとある日の日記を引用してみましょう。
【1998.6.29-30 梅雨の晴れ間の那須岳山行】
初日の当初計画では、那須ロープウェイ下から峰の茶屋に向かい、朝日岳・隠居倉を周遊し、三斗小屋温泉煙草屋


◆ ◆ ◆
11:15 慌てて下山する学校登山の行列と頻繁にすれ違いつつ、峰の茶屋に到着。初見参の、完成間もなくピカピカな避難小屋は極めて快適で、板の間もある。折からの雨で小屋に駆け込んできた人々としばし会話を楽しんだのち、しばらくここで停滞するのが良かろうと思い、昼食に。
パンを頬張りつつ、備え付けのノートを読む。
展望を楽しんだ喜びが綴られているのがほとんどである中、極めて衝撃的だったのが、単独行で来た、自分と同年代のヤローの記事である。
世の中には失恋を嘆く男女が余りにも多い。
しかし、少なくとも一度は愛されたことがあるだけ幸せだ。
自分は生まれてこのかた28年間彼女がいない。
寂しさを紛らわすために旅をし、山に登っているが、救われない。
カップルで楽しそうに歩いているのを見ると嫉妬を感じてしまう。
でも30までに見つからなければもう諦める……。
そして極めつけは、その後の「一人旅」と称する詩!!
君はなぜ一人旅を続けるのか。
苦しくはないのか。
寂しくはないのか。
彼は笑顔で答える、一人旅は気楽だと。
しかしその瞳の奥には、どうしようもない涙があふれていた……。
11:55 ラジオで天気予報を聴く。どうも今日の日中は期待しても仕方がないものの、夕方以降は良いとのこと。
12:00 そこで、きょう朝日岳・隠居倉を経由するのは諦め、直接三斗小屋に向かうことに。西からの風の吹き上げに耐えつつ、峰の茶屋を出発。
◆ ◆ ◆
12:30 快調なペースで延命水に到着。うまい水で喉を潤した後、水に濡れるコケを撮影。
12:45 出発。ここから三斗小屋までは、時間がたっぷりあることもあり、林床の植物を眺め、撮影し……完全にコースタイム無視。
13:40 この頃までには雨も上がり、煙草屋旅館到着。まずは本館2階の四畳半に落ちつき、茶を楽しむ。
14:05 露天風呂に入る。やっぱり三斗小屋の露天は良いものだ!! ぬるめの湯は長風呂には最適で、くつろぎを欲しいままにする。
14:45 露天から出て、酒をあおりつつ一旦読書モードに入る。
15:45 今度は内風呂に突撃。熱い湯を頭からかぶって快感は最高潮に!!
16:25 のんびりしていたら太鼓が鳴り、慌てて風呂から上がって晩飯。この日の宿泊客は
*愛知からのおっちゃん2人が2泊目
*「ついに三斗小屋に来る念願が叶った」爺さんと孝行娘おばさんの2人
*茨城からの20代末〜30代前半の2人
(会話の内容から、茨城大か筑波大あたりの技官に違いない)。
*素泊まりのおっちゃんが2人
*そして自分
*夜の8時に到着した自分と同年代のライダー4人組
……というわけで極めて少ない。
食事に集った計7名は三斗小屋に来た喜びで、メシを盛るのも茶を入れるのも互助精神を発揮し、和気藹々とした時間を過ごす。
17:15 一旦自室に戻る。
18:00 露天風呂へ。空模様は、露天の真上から茶臼・隠居倉方向の空は晴れて、雲が薄くピンク色に染まったりしている。肝心の真正面の流石・大倉だけは、会津側と那須側の気流がせめぎ合って雲がかかり、すっきりとしない。まあ肝心の風呂は、暮れなずむ山の雰囲気満点で、気分は良い。
18:30 一旦露天風呂から出て、再び酒を飲みつつ読書モード。
19:50 内風呂に入り、檜風呂でゴロゴロする快楽を味わう。
20:20 内風呂を出ると、玄関の辺りが何やら騒がしい。行ってみると、若いライダー(つなぎを着ている)4人が到着したところ。宿の方では「すっぽかされたと思っていた」ということですっかり片づけてしまった後のため、改めて残り物で晩飯を準備するのも大変そうである。自分はひとまず部屋に戻って布団を敷く。
◆ ◆ ◆
21:10 この日の消灯は21時15分。しかし、消灯を待っていても仕方がないかと思い、いつの間にか広がった満天の星空の露天風呂に繰り出す。
あー、大大満足!!
ライダー4人組もそのうち繰り出し、「これマジですげーよ」「車が通るとか、もっと整備されたら絶対アベックだらけになるよなー」と口々に驚嘆している。
好青年ながらもイマイチ女ウケする要素を欠く彼らには、全員彼女がいないことは明らかで、峰の茶屋避難小屋のノートの例の記述をめぐり「あれシャレにならないよなー」という会話をしている。年齢も丁度自分と同じくらいと思われる。
やがて歌モードに入り、これまた如何にも女に縁のなさそうな懐メロを歌い始め、自分も思わず感じ入ってしまった。
♪青雲 それは君が見た光 僕が見た希望
青雲 それはふれあいの心 幸せの青い雲〜♪
青雲〜♪
◇22:00 星が雲に霞むようになる。そして、ライダー諸氏が本格的に昭和50年代ネタ・カラオケモードに入りヒートアップしつつあったので、とりあえず遠慮して、露天を出る。
◇22:15 就寝。
……日記引用ここまで。なお「青雲の歌」は、線香のCMの主題歌です。
それにしても、あのときのライダー諸氏達は、懐メロを愛する純朴な心で

そして私自身も、見果てぬ幸せの青い雲を求めて、いつまでも旅を続けることになりそうです。
一人旅は最高に気楽です。寂しくも苦しくも何ともありません。

ただ、その土産話を心から楽しんでくれる誰かが傍らにいないのを寂しく思うのみです。
乱文乱筆大変失礼しました m(_ _;;)m
bobandouさんおはようございます。
山行の日記を綴っていたのですね。文章が上手な方は羨ましい。
私は文章を書くのが苦手で、ヤマレコを始めてから下手ですが少しずつ書くようになりました。
読み返してみるとその当時の情景が蘇ってきますね(^^)
一人旅の詩はとても心情を表していますね。昔はこんな若者も居たんですね。
土産話はレコや日記でみんなが楽しく読んでいますよ〜♪
おはようございます、コメントどうもありがとうございます!
山行日記を細かく綴っておくようにしたのは、山登りを始める前にやっていた海外バックパッカー旅のときの経験からです。夜になれば街が真っ暗になって、安宿のタコ部屋で仲良くなったヤツと食事に行くのでなければ、茶でも沸かしてウダウダするしかない中、細かく一日の見聞を記していたら面白くなってやめられなくなりました
登山の場合は翌朝2〜4時起きということもあって超早寝ですので、夜更かししてダラダラとノートに書き綴る
文章というもの、気分を丸ごと映す鏡ですので、普段はカタクルシイ文章しか書けない私でも、気分が高ぶったままにダーッと山行記録を書くと、結構読み返してみて面白いです
ということは、作家という人種は常にある意味でハイテンションでいなければならず
とりあえずは超個人的な記憶をダラダラ書いていても、誰かが拍手して下さり、どこかしら共感して下さっていることが分かるのが、ヤマレコの有り難く良いところですね
逆に、ネットが発達していなかった頃は、とりわけ周囲に自分と同じような趣味趣向の恋人・友人でもいなければ、何か見て感じて語りたい気持ちを結局胸の内にとどめておかざるを得ず、ある意味で気分をこじらせざるを得なかったのだろうと思います
私の場合は幸いにして、一人旅〜複数人旅でも何でもござれな友人が周囲にそれなりにいて、マニアックな会話で盛り上がることが出来ていましたし、一人旅や単独山行の最中でも周りの方々と会話を楽しむ余裕がありましたので、今回ご紹介した文章と詩ほどは思い詰めたことはないです
bobandouさん、
中山道の最後の難関レコが上がってるかな?と久しぶりにお邪魔したら、ジワリと来る日記が上がっていたので思わずコメントです。
那須・三斗小屋は懐かしさの宝庫ですな。
bobandouさんのまるで昨日の事のような日記を読むと、またあの白い飯を腹いっぱい食べたい衝動に駆られました。でも、思い出の中の白い飯は思い出の中に留めておく方が良いのかしら ~
それでは
こんばんは、コメントどうもありがとうございます!
いや〜、中山道の最後の難関、無事歩ききって帰宅しました
蒸し暑さと凄まじい虫攻撃で死にましたけど……
というわけで、レコは2〜3日後でしょうか?
三斗小屋、残念ながら昨年ご一緒した後はまだ行けていないのですが、なるべく早く再訪して、養鱒公園駅までの「会津抜け」をやりたいと念願しています。でないと、会津磐梯山や飯豊山への赤線延ばしが進みませんので……。
しかし、今年の夏の天気は、那須に行こうという気をとことん萎えさせるものでした……
それにしても我々の場合、本当に三斗小屋には思い出が沢山あるものですね
白い飯
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