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2019年03月15日 12:33なんてことはない話全体に公開

ASAMA山荘事件

(; ´ Д`)ノ
しゃ… しゃもじを…
しゃもじを返してくれ…

※参考:妖怪「泥田坊(どろたぼう)」
苦労して開墾した田んぼを遺して死んだ翁が、遊びほうけて田んぼを売ってしまった放蕩息子を恨み、夜な夜な田んぼから上半身を出しては「田んぼを返せ、田んぼを返せ」と叫ぶという。

( ̄∀ ̄)
それは、5年前の秋のこと。
友人と山登りに来た私は、登山口にあるA山荘に宿をとった。
“天狗温泉”を名乗るこの宿は、天狗のお面が掲げられ、
天狗土産も満載である。
「ここの天狗は、あまりいい天狗さんじゃなかったらしいですけどね」
とは、宿のご主人談。
ここの温泉は天狗の顔のように赤くおどろおどろしく、
これから起こる出来事を暗示しているようであった。

晴天の中で素敵な山登りを堪能し、
満足して宿に戻った私達。
夕食も美味しく、温泉に何度も入り、
「明日はどこへ行こうか」なんて話していたら、
医療関係者の友人にまさかの呼び出し電話。
残念だが、翌日は朝食後に即帰ることとなった。

そして最後の晩餐…いえ、朝餉の時間。
4人テーブルを2つくっつけた長テーブル状態の右側が、
私達の席だった。
すでにおかずやお茶碗が並べられており、
ごはんは、私達が席に着いた後、
小さなおひつが温かい状態で運ばれて来た。
私達は3人組だったので、全員がおかわりするには少ないかも…

美味しい朝餉を楽しみながら、話もはずむ私たち。
10分ほど遅れて、左側のテーブルに
若い男性客2人組が座った。
くっつけたテーブルの境目に置かれたお茶ポットは、
彼らとの共有だ。
彼らは、まず、お茶を淹れた。

私はその頃、ごはんをひとまず食べ終わり、
おかわりしようかな、と思いつつ、
友人の話を聞きながら何となく動けないでいた。
自分だけおかわりするのが恥ずかしかったのかもしれない。
まぁいっか、朝から食べ過ぎると後でつらいもんな。
うーん、でもやっぱり食べたい。
どうでもいい葛藤をしながら、
動くタイミングを見計らっていた、その時…

左のテーブルの若者が、おもむろに立ち上がり、
手を伸ばしてこちらのおひつの蓋を取り、
しゃもじを手に持った。

そう。彼らの分のおひつはまだ運ばれて来ておらず、
彼らはてっきり、お茶ポットと同様、おひつも共用だと思ったのだ。
『えっ? 違うンじゃないの?』
戸惑う私に気付くことなく、友人は話を続けている。
このままでは、私のおかわり分が食べられてしまう!
そう思った瞬間…

彼らのおひつが運ばれて来た。

「助かった…」
ホッとしたのも束の間、若者は、こちらのしゃもじを持ったまま、
席に座ってしまった。
自分の間違いが恥ずかしく、ばつが悪かったのだろう。
しかし、しゃもじは返さなきゃダメじゃないか。
彼らのおひつにはちゃぁんと、彼らの為のしゃもじが挟まれていたのだから。

ウッカリ座ってしまった若者は、しゃもじを返すタイミングを逃し、
そのまま気付かないフリをして、ごはんをよそって食べ始めた。
もう一人も知らないフリをして、会話を続けている。
おい、しゃもじ、返してくれよ…
しゃもじは2つもいらないだろ…

立ち上がって手を伸ばせば、
彼らの陣地に放置されたしゃもじに十分手が届くであろう。
しかし、それは微妙な行為だ。
例え私のしゃもじであろうと、彼らの陣地にある以上、
「すいません…」などと声をかけるしかないからである。
日本では、ぶつかった方もぶつかられた方も、
「すいません」とお互いに謝る文化がある。
だが、本来、悪いのは彼の方なのだ。

私がヘタに手を伸ばせば、
彼らの会話は一瞬止まるだろう。
その沈黙が怖い。
それに、私は、人の間違いを指摘するのが苦手だ。
私自身、おならした時知らん顔する、姑息な人間だからだ。
人の間違いを指摘するのは、何だか恐縮してしまう。
相手の気持ちを慮る、優しい人間なのだ(自称)
しかし、私は、おかわりしたい。
もう一杯、ごはんを食べたい。
どうしたらいいのか…。

そんな私の心の葛藤に気付くこともなく、
友人達は話し続けている。
当然だ。
私も必死で胸の内をひた隠し、
彼女らの話に付き合っていたからだ。
こういう時、人は、とても器用になれる。
そして、何も出来ないまま、いたずらに時は過ぎ、
友人はとうとうこう言ったのだった。
「そろそろごちそうさましようか」

あの時、私がおかわりをしても、
何が変わったわけでもないだろう。
だが、後悔とは、
してしまった後悔よりも、
しなかったことへの後悔の方が、
より深いという…

しゃもじを返さなかった彼を責める気はない(嘘八百)
それを言い訳にするつもりもない。
欲しいものは、時には奪い取ってでも
手に入れなければならない時がある。
人生とは、辛く厳しいものなのだ。

※この話はノンフィクションです
訪問者数:291人
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この日記へのコメント

登録日: 2015/3/6
投稿数: 445
2019/3/15 17:19
 RE: ASAMA山荘事件
食い物の恨みは怖いです。一生忘れません・・・。
登録日: 2013/12/14
投稿数: 1376
2019/3/15 22:03
 RE: ASAMA山荘事件
(^皿^)iga_1966さんこんにちは。
大丈夫です、私はサッパリしてますから、
全然恨んでませンよ。
恨んでませンとも
登録日: 2014/1/11
投稿数: 400
2019/3/15 22:55
 RE: ASAMA山荘事件
imoneeさん、こんばんは。

あるあるボタンを10回押させていただきました〜。
登録日: 2013/12/14
投稿数: 1376
2019/3/15 23:39
 RE: ASAMA山荘事件
(^^)harunonekoさんこんにちは。
あるあるなンですか? 相席あるある?
山小屋あるあるかな?
登録日: 2011/12/11
投稿数: 328
2019/3/16 8:59
 RE: ASAMA山荘事件
おっ! 復活!!
久しぶりにimoneeさんらしい。
話題に明るさが、夜明け前って感じかな。

そんな乙女の時代も有ったんだ、とツッコミを入れておいて。( ̄▽ ̄;)
月刊imonee期待してます。(*^^)v
登録日: 2013/12/14
投稿数: 1376
2019/3/16 10:13
 RE: ASAMA山荘事件
(^^)tahara_t2さんこんにちは。
話題に明るさというか、くだらなさが復活…
今考えるとしゃもじがなくても箸で何とか出来るだろ?
乙女が編集長の月刊いもねぇ、今月は2月・3月合併号とします。
(ただの手抜き)


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