はがき

私の父は大正生まれで長男でした。
次男三男四男と居て、末に長女という家族でした。
祖父は一高から帝大に行く直前で結核により九州に放浪。
そこで教員となる。
また同じように父も学生の時に結核に罹り東京へ放浪。
そこで銅鉄商となる。
祖父を守り実家を守ったのは科学の教師を生業とした次男。
三男は音楽教師となり、姉妹を育てる。
数年前に終の棲家と決めた一戸建てを売り
ご夫婦で介護付きのマンションに移っていました。

昨日、三男の奥様から初めて葉書をいただきました。
小さなカラー写真がついています。
そこには白髪の三男ご夫婦がお揃いのセーターを着て写っていました。
叔父はピースとポーズを取り、お二人ともにこやかな笑顔です。
キャプションには（平成２７年１月７日マンションレストランで
ご機嫌な健三先生です。）と記されています。
ワープロで横書き文章が印刷されていました。

以下に全文引用します。

平成２７年１０月１４日石富健三（仮名）は真青な秋の空に
千の風になって上がっていきました。
この葉書は喪中欠礼のお知らせではありません。
今後ずっとお年賀や近況報告など頂けましたら必ず健三先生に伝え、
私がお返事差し上げます。
平成２７年２月２５日にマンションの廊下で転び
両足の歩行が困難になりました。
３月中には日赤病院、４月からは別の病院に移り
精密な検査と治療を行っていただきました。
入院中車椅子でナースステーションに居ますと
そこは永年勤めた高校の職員室であり教室にいる気分でした。
そこでナースさんスタッフの方々から先生、
石富先生と呼んで頂いて本当に気持ちの良い生活を過ごしていました。
私も時折写真を見せました。
最後は腎臓心臓が弱り静かに安らかに逝きました。
教えることが大好きだったのでどこかで
又教えたり歌ったりしていると思います。

余白に手書きで
「今でも信じられません。毎日つらい日々をおくっています。」
と添えられていました。