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2017年02月18日 23:33読書レビュー(書籍)全体に公開

菜の花の沖

1月の中旬から読み始めた司馬遼太郎著「菜の花の沖」全6巻を読み終わりました。
予想外に面白かったです。
江戸時代後期に北前船で函館を拓き、国後択捉に漁場も拓きながらゴロウニン以下7名を略奪された副官リコルドにとらわれた高田屋嘉兵衛の一代記です。
この小説の基になるゴロウニン、リコルド、高田屋嘉兵衛の原書を読んでいたので興味深く読み進めることができました。またその遠因となったレザーノフの「日本滞在日記」も読んでいたので尚更面白く読めました。
山のサイトに掲載することに気も引けますが、日記ということでお許しください。
以下に他のサイトに掲載した「日本幽囚記」のレビューを再掲します。
1811年に起きたロシア戦艦ディアナ号船長ゴロウニンと士官ならびに水兵が国後島で捕まり2年3ヶ月か国後、函館、松前と舞台を移し幽囚された際のゴロウニンの手記です。
筆記用具が与えられるまでは、衣服の織り糸をほぐし、その色と結び目で記憶をとどめたそうです。
下巻はゴロウニンによる日本論とゴロウニン自身が勅命を受けた際、副艦長に指名した親友リコルドの手記になります。
このリコルドは高田屋嘉兵衛を非常に高く評価していますが、高田屋嘉兵衛遭厄自記では嘉兵衛自身は自らを狡猾な人物として記述しています。
誰に読ませるかで内容が非常に変わる良い例でしょう。
本書は江戸時代の木版による出版を別にすれば、メジャーな出版社による初めての書籍です。
太平洋戦争も真っ最中、山本五十六戦死発表の数日後に出版されました。
ソ連が北方四島に進軍する前です。
当然、旧漢字旧仮名遣い活版印刷です。
これが苦手な人は講談社版の日本俘虜実記をお勧めします。
邦題が違うだけで底本はほぼ同じです。
こちらは新漢字現代仮名遣いです。
但し、字は更に小さいです。
以上二点は新刊では手に入らず、古本を購入することになります。
これらに対し、高田屋嘉平顕彰館では新刊で全四冊が購入可能です。
顕彰館の学芸員の方が翻訳して自主出版したものです。
サイズもA5判と大きく翻訳も良く非常に読みやすいです。
また最も安価です。

話を戻して本書の最大の売りは冒頭の訳者による解説と当時の帝政ロシア時代
評論家エヌ・グレッチのゴロウニン略伝、そして非常に充実した各巻末の訳注です。
訳注には当時の徳川幕府側の資料も多く掲載されています。

以下にディアナ号事件の一次的資料となる出版物を挙げておきます。
岩波文庫
井上満訳 日本幽囚記(上)昭和18年5月30日 434頁  
井上満訳 日本幽囚記(中)昭和18年10月10日 302頁
井上満訳 日本幽囚記(下)昭和21年6月10日 390頁
     (日本国及び日本人論 日本沿岸航海および対日折衝記)
講談社学術文庫
徳田真太郎訳 日本俘虜実記(上)昭和59年4月10日 317頁
徳田真太郎訳 日本俘虜実記(下)昭和59年5月10日 275頁
徳田真太郎訳 ロシア士官の見た徳川日本 昭和60年3月10日 345頁
     (日本国及び日本人論 日本沿岸航海および対日折衝記)
同時代社
徳田真太郎訳 南千島探検始末記 平成6年1月25日 211頁
岩波文庫
大島幹雄訳 日本滞在日記 レザーノフ 平成12年8月17日
平凡社東洋文庫
ニコライ・ブッセ サハリン島占領日記1853〜54 平成15年4月23日 347頁
東洋書店 
石巻若宮丸漂流民の会著 世界一周した漂流民 平成15年10月20日 64頁
教育社
間宮林蔵 東韃紀行 1981年4月20日 291頁
中央公論新社
チェーホフ サハリン島 209年7月10日 422頁
以下高田屋嘉平顕彰館で購入可能
斉藤智之訳 対日折衝記 平成14年8月1日 127頁
高田屋嘉兵衛翁顕彰会発行 高田屋嘉兵衛遭厄自記 平成15年5月 71頁
斎藤智之編集 高田屋嘉兵衛翁伝 平成17年4月29日 60頁
斉藤智之訳 日本幽囚記1平成18年12月10日 270頁
斉藤智之訳 日本幽囚記2平成18年12月10日 207頁
斉藤智之訳 日本幽囚記3平成18年12月10日 159頁
斎藤智之編集 高田屋外交 平成26年8月12日 128頁
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コメント

RE: 菜の花の沖
前函館にいた縁で、この本は読みたいなあと思いつつまだです。函館山の麓の元高田屋敷には嘉兵衛の像が誇らしげに立っていました。
高田屋嘉兵衛は探検家のような存在ですから、山レコの話題に相応しい人物紹介と思いますよ。まあふさわしくない話題でも構わないと思いますけど。
しかし司馬遼太郎から読み始めるのではなく、古典から始めて最後の仕上げに小説読むのですね。背表紙ピシリと紙揃って、幕末北方史充実と思います。
2017/2/19 10:45
RE: 菜の花の沖
1月に高田屋嘉兵衛顕彰館にお邪魔して学芸員であり日本幽囚記の英語版訳者である斎藤氏からいろいろお話を伺い、気分が高揚して勢いで全6巻を購入してしまいました。
小説の場合は「孤高の人」や「氷壁」などから見てあまり興味がなかったのですが、本作は膨大な資料を読み込み構築されていたので小説としての噓がなく、一気に読めました。
現在ゴローニンの手記は井上版、徳力版、斎藤版と3種類入手できますが斎藤版英語版からの翻訳ながら戦時下の制限がない分、情報量が多いようです。
また「日本滞在日記」を訳した大島幹雄氏も石巻でお会いしたことがありますが、在野の研究者の成果をもう少し評価したいものです。
3年前の2月に松前の跡を見に行った折に、函館の高田屋記念館?を見学したかったのですが、冬季閉館中でした。
2017/2/19 18:10
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