燕岳から大天井岳、西岳から東鎌を抜けて槍ヶ岳に至る道を切り開いた小林喜作の苦労話かと思い読み始めましたが、その時代の貧しい農村とさらに貧しい猟師の民衆史といってよいかと思います。
作者は「ああ野麦峠」の山本茂実。
聞き取り調査を中心に書き起こすドキュメント作家だそうです。
この夏に唐松岳から五竜岳、鹿島槍ヶ岳、爺ヶ岳を歩きましたが、その眼下で喜作親子が最期を迎えたことを知っていたら、随分違う山行になっていたでしょう。
各所に残る文書文献も参考にしていますが当時の噂話をこれでもかというほど集め、喜作は他殺か事故かを書き上げます。
結構暗くなる内容です。
しかし喜作はすごい。
殺生小屋から夕方から中房温泉に戻りトタンを60キロ背負って翌朝に戻ってくる。!
そして猟犬ペスとアカがこれがまたいい。
将来犬を飼うことができたら名前はペスだ。
時々「なめとこ山の熊」を思いながら喜作の人生に思いを寄せました。
先輩の別荘が松川にあるのでとてもリアルに物語に入っていけました。
山屋さんはもちろん、民俗学に興味のある方にも、犬好きにもお勧めできます。
しかし昔の猟師はすごい。
また、先日観た吉田博展に小林喜作をモデルにした絵があり、吉田博のガイドをしていたのが小林喜作であったこのと驚きました。
追伸
読むなら二刷をお勧めします。
巻末に素晴らしい犬の物語が追加されています。
こんにちわ、sari-papaです。
私も「喜作新道」読みました。岩波文庫か新潮社のか薄っぺらい文庫本で、今捜したんですが、ちょっと行方不明です。
あの本を読んだ後、上高地に入ると本当に感慨深いものがありました。
上高地に住んでた、喜作の猟師仲間(名前が思い出せない)、病気で上高地を離れるとき、「もう一度、上高地の紅葉を見たい」と言ったそうですね、願い叶わなかったですが。
人混みから細道入ると、身に染みる樹林、そよ吹く風、−喜作やその仲間たちの息吹が聞こえてくるようでした。
sari-papaさん
コメントありがとうござます。
秩父宮妃殿下を「オカミサン」と呼んだ逸話を持つ
人が良すぎて学生達に何ら見返りを求めずに自分の小屋で飲食宿泊をさせ
体が弱ってから生家に戻り20日後に息を引き取った上高地の常さですね。
作者はさんざん常さに世話になった当時の学生たちが、年老いて弱った常さに
日本の政財界の中枢にいたはずの彼らが何の援助もしなかったと怒っていましたね。
それにしても喜作の亡骸を守り貫いたアカと
二日間山を走り貫いて急を知らせたペスは凄いです。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する