|
|
|
電池節約で後輩だけがヘッデンを付ける。
バリンという音が聞こえた。
氷柱が落ちた音かと思ったが、次の瞬間ぷーんとワインの匂いがした。
ザックの上に着けていたワインが落ちてしまった。
2ルンゼの押し出しからテラスに向けて登り始める。
T4もアプローチとしてノーザイルで上がるおバカは当然そのまま登っていく。
後輩はどんどん登る。
私も負けじと登るが、「あれ!」
目の前を岩が走る。
登り口まで滑り落ちた。
幸いどこも怪我をしなかった。
別のパーティーの人かと思った。
やっと後輩のいる展望台に登りついた。
私はまた落ちるのが嫌なのでヘルメットをかぶりハーネスを着け、ハンマーもマイクロハーケンもぶら下げ、ザイルを流しながら登りなおしたのです。
(単なるおまじないです。)
こんなところでビバークかよ。
ここだけが右岸壁で雪崩の通り道から外れてるということだよと後輩は言う。
横尾谷に沿ってヘリが涸沢に向かっていく。
ヘリを見降ろすのは変な感じです。
「おい、ここ不安定だし、どう考えても安全とは思えないよ。」
「そうだ下に洞穴があるらしいからそこに降りてビバークしよう。」
大きな洞穴にツエルトで入り口を覆い快適な晩飯です。
彼女からの差し入れの甘納豆を雪と一緒に食べる。
加藤文太郎じゃ!
夜中じゅう降雪です。
初めに風がやってきて、次にざざざーと雪が落ちてきます。
一晩中ツエルトがバタバタ風圧にあおられ、次に雪がざざざーと落ちてきます。
時々雪かきをしなくては埋もれてしまいます。
静かな朝です。
快晴です。
急いで取り付く。
全く景色が変わっている。
一面新雪。
雪かきをしながらスタンスを探し左上トラバースしていく。
伸びるザイルが絵になる。
ディレッシマに着いた。
「オイやばいんじゃないか。」
「そう思う。」
決意したは早い。
脱兎の如く右岸壁下部を走る。
今思うとどうして壁の中を走れたか不思議でしょうがない。
やっと対岸の夏道まで逃げた。
煙草をくゆらしていると、2ルンゼに一条の雪がスーと走った。
みるみるうちにそれが太くなり、雪の大滝である。
下部で雪は跳ねかえり舞い上がる。
次の瞬間、右岸壁全体から新雪が音も無く剝がれ落ちる。
雪煙で右岸壁は完全に見えなくなった。
写真を撮ったが、乱反射で真っ白でした。
あのまま登っていればど真ん中。
二人とも無言で上高地に向かいました。
写真が出てきましたので掲載します。
左から
新雪の中を右岩壁展望台に向かう
2ルンゼから新雪雪崩が始まる
展望台でバウンドして雪煙が舞う
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する