三角形の廊下を一周すると35の部屋がある。
眠りやすい薬をもらうと2時間半の眠りが2回で5時間の爆睡が得られる。
冬山では重宝しそうだ。
検尿せよとトイレの扉に貼られていたので、そうする。
尿意が催してきたので紙コップに中間尿を排出した。
手術前と違い、尿意を感じてから排尿までの時間的猶予が全くない。
社会人生活に戻ったら「お漏らしオッサン」になるのではないかと危惧する。
廊下を三周して上下からガスを抜く。
しかし、歩くのが遅い。
昔、35年ほど前の2月に「むちゃくちゃ早いですね。」と
大同心から稜線に出てきた2人組パーティーに言われた。
このパーティーとは同じバスに乗り合わせていたようだ。
私は大学林?で降りてわけのわからない別荘地帯を抜けて
阿弥陀岳南稜に取りついた。
川を渡ったところに小屋があり、そこに泊まりたい誘惑に打ち勝ち
稜線へ出たが眠たい。
ガスっている中を歩いているとガスが一瞬切れ、山頂直下の岩稜が見えた。
森林限界で打ち止め。
ツエルトを張って8Rでウイロウを焼いて食べて寝てしまった。
暑いと思って目を開ける。
ウソだろ陽が燦々とツエルトに射している。
冬山では普通長い夜を過ごさなければならないのに
明るいうちから寝て、日差しで焼かれて起きたのは初めてでした。
あわてて撤収して歩き始めると、すぐに岩稜に着いた。
最後の10メートルくらいがブルーアイスの張ったルンゼの登攀か
その右手の壁の登攀かです。
アイゼンもピッケルも先輩からの借り物で、
しかも私が手入れをしないものだから、先が円い。
ルンゼの方が易しそうだが、途中で歯が立たなくなったら
進退窮まり、滑落あるのみ。
右手の壁はコンクリから石が飛び出しているような変な岩質だが
風化はしていないようだ。
ピッケルをアルペン差しにして、手袋をはずして、岩に取りつく。
快適と思ったのも束の間。
指が凍り始める。
もう感覚がない。
もう力が入らない。
次の瞬間、稜線に立てた。
厳冬期に素手で岩登りはやめましょう。
阿弥陀岳の山頂からはボブスレーコースのように掘れていた。
鞍部には数人のパーティーが一本立てている。
尻セードで降りる。
下のパーティーが私を見て「滑落だー。」!と叫んでいる。
雪の状況にもよるのだろうけど、あの斜面を尻セードで
2月に降りるバカはいないでしょう。
その後、何度か厳冬期に阿弥陀岳に登っているが
いまだにあの時の判断材料が何であったのか不明です。
若気の至り。
気分爽快快晴無風。
大同心で冒頭のお二人からお褒めのお言葉を頂きウッドぺカー。
夏沢峠からお気に入りの緑池を経由して松原湖駅まで歩いておりました。
振り返ると先ほどまでいた稜線が遥か彼方です。
若いころはアプローチも歩くことが多く、振り返り遠望する山容を
眺めるのが好きでした。
単にお金がなかったとも言えますが。
慣れた小淵沢から中央線で帰りたかったが、小諸行が先に来たので乗る。
小諸からは生まれて初めて乗る特急電車の快適さに感動する。
23:55しか知らなかった私には譬え通路に置かれたザックに座っていても
音も静か、揺れも少ない、高級品でした。
これが唯一山での爆睡と歩くのが早いと褒められた山行でした。
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