今から34年前?2月のお話です。
越沢バットレスで今のかみさん(昔は恋人)とアイゼンを履いてトレーニングをして
仕上げに谷川岳の東尾根を登ってみることにしました。
3月の北鎌尾根へのトレーニングなので尾根の途中でテントを張って一泊の行程です。
ノー天気に遅い時間に出かけたと思います。
取りつき始めて、振り返るとテールリッジのドン詰まり、つまり衝立岩の取り付き付近に単独の人がいました。
次の瞬間その赤い影が消えた。彼女と顔を見合わせる。
「今確かに人がいたよね。」
「いた。」
落ちたなら助けないとということで、荷物を置いてテールリッジに渡る。
ザイルなしでは結構やばい。
根元が確認できるところまで登るが、人影が確認できない。
「ま、いっか。」ということで戻り始める。
リッジ沿いに降りるのが面倒になり、緩い新雪の左斜面に飛び降りる。
躊躇する彼女も続く。
あっという間にテールリッジ末端まで駆け降り、東尾根に戻る。
森林限界の手前で幕営。
彼女が一所懸命にトイレを作っている。
彼女の後にそのトイレを使う。
雪の穴に黄色いしみが印象的だ。
翌日はガスッていて風も強い。いいトレーニング日和だ。
雑誌で見た事のあるピナクルに出た。
シュリンゲをかけてビレーしたような気がする。
ガスッていて何も見えない。
時々ガスが薄くなり、写真を撮る。
広い雪の斜面になったのでトップを彼女に譲る。
後で写真を見ると白い斜面に足跡と彼女の後姿。
そして右に弧を描きながら風に浮き上がるザイル。
なかなかかっこいい。
雪の割れ目を超えたあたりから、かなり急になってきた。
彼女が詰まっている。
次の瞬間、ガスが晴れ彼女の頭の上に壁がのしかかっている。
国境稜線の雪庇だ。
長谷川恒夫の映画がよみがえる。
彼も絵的には雪庇に穴を掘り山頂に立ちたかったがやめていたので
私も彼女に左手に雪庇を崩した跡があるから、そこに回れと指示を出す。
彼女がこちらを向いてピッケルをぶらぶらさせて降りてくる。
え、
予想通り彼女の足下が崩れ、しりもちをついて落ちてくる。
ちょっと待てよ俺は今雪の割れ目の上だ。
ピッケルが刺せない。
しょうがない。この割れ目に飛び込むか。
目の前で彼女は止まった。
ことの重大性に本人は気が付いていないようだ。
トップを変わる。
長谷川恒夫ごっこで、いや違うことらはピッケル一本だ。
どうにかトマだかオキの耳に転がる。
寝そべって穴から彼女を呼ぶ。
彼女もあがってきた。
空が晴れた。
穴から初めて自分たちが歩いてきた東尾根の雪綾が見えた。
美しい。
そこに我々だけの足跡。
立ち上がると越後側に雲が溜まっている。
少しずつ雲が稜線を越えて関東に滝のように流れ落ちていく。
避難小屋を目指して大きく弧を描く稜線を二人で闊歩する。
西黒尾根から綺麗に東尾根が見える。
晴れていたら怖そうだ。
これで北鎌への準備はできた。
しかしあの赤い人影はなんっだったのだろうか。
厳しさの伝わる素晴らしい写真をアップしてくださってありがとうございます。
晴れ渡った日に撮った壮大な景色ももちろんいいですが、現実感のあるこういった写真のほうが本当の意味で山の厳しさが伝わってきて非常にいいと思います。
失礼な話ですが、女性と登れるとは理解ある女性と知り合えて羨ましいばかり。ごちそうさまでしたw
seven sta777さん
コメントありがとうござます。
昔は常にカメラをぶら下げて歩いていました。
最近は無理ですが山の写真は麓からではなく、山の中で撮るのがいいですね。
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