西穂−奥穂−前穂縦走
- GPS
- 56:00
- 距離
- 13.8km
- 登り
- 1,769m
- 下り
- 2,395m
コースタイム
天候 | ずっと天気はよかった |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
帰りは上高地からバスで新島々 松電とあずさで帰宅 公共交通機関利用はカラダが楽。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
以下は一昨年、50歳の体力テストで西穂‐奥穂‐前穂をテント泊で縦走した時の記録です。2012年となっていますが、実際は2010年です。これから同ルートを歩く方へのご参考に供したく、投稿しました。 全てのルートで注意深い行動が必要です。何でもなさそうなところで怪我をしがちです。下山後、クルマなら好きなところで入浴できますが、バス・電車利用だとそうもいかないのが、つらいところです。その分、酒が飲めますけど。 |
写真
感想
以下は一昨年、50歳の体力テストで西穂‐奥穂‐前穂をテント泊で縦走した時の記録です。
2010年8月18日(水)
6時過ぎに家を出、立川で7時21分のあずさ1号に乗り換え、9時39分松本着。松本駅で降りるのは久しぶり。アルピコバスターミナルに移動し、10時35分のバスで新穂高温泉へ。乗客は20名くらい。工事渋滞で平湯での休憩はなかったが、予定通り、12時35分に新穂高温泉到着。天気は快晴。シーズンとはいえ平日のせいか、ロープウェイ乗場もそれほど混んでいない。片道1500円に加え8kg以上の荷物の超過料金300円を払う。鍋平で1度乗り換え、高度差1000mを稼いでもらう。頂上駅でしょうが焼き丼の昼食後、14時前に出発する。西穂山荘方面に向かう人も、戻ってくる人もけっこういる。1時間弱で山荘(標高2315m)に着き、テン泊(500円)を申し込む。先客は2張り。15時半だが、テントを張ると、もうすることもない。ガスも出てきたので明朝の下見をする気もなくなった。ビールを飲んだりして、小屋前のベンチで時間をつぶす。周りの話を聞いていると、明日、奥穂を目指すという人もいるようだ。3日目は前穂から岳沢を下りることにしよう。新しく出来た岳沢小屋も見たい。テントは最終的に10張り程度になった。18時過ぎに、松本で買ったおにぎり、ビールで夕食。歯を磨いてシュラフに潜り込む。携帯で自宅に電話し、明日の高山の天気予報を聞く。まあまあのようだ。外はガスで真っ白。20時過ぎに就寝し、11時過ぎに一度目を覚ます。外を覗くと、まだガスガスだった。3時起床、4時出発の予定だが…。
8月19日(木)
3時前に目がさめた。けっこうよく眠れた。外はやはりガス。フライシートの内側が結露で濡れている。一瞬やめようかと思ったが、天気予報もいいし、3時10分にシュラフを出る。テントの外に出ると少しの間、雲の切れ間から素晴らしい星空が見えた。よーし、とモチベーションUP。小屋組はもう出発している人もいる。用意を整え、4時15分に出発。まだ真っ暗でヘッデンを点けて、ハイマツのなかを歩く。30分弱で丸山通過。まだ暗いが、左手に笠が岳のシルエットが浮かぶ。1時間少しで独標を通過。これから進む岩稜が目の前に大きい。気を引き締めて最初の下降。ここから西穂高岳までも大小のピークが連続(13あるらしい)する。20分くらいでピラミッドピーク。もうすっかり陽も昇って明るい。振り返ると独標の向こうに焼岳、乗鞍岳も姿を現す。先行する中年女性を追い越す。聞くと、奥穂までとのこと。この人よりは早く着くかな、と少し気が休まる。登下降を10回くらい繰り返し、6時半に西穂高岳(2909m)頂上。よし、快晴で素晴らしい眺め。槍の左手の黒部五郎、鷲羽が懐かしい感じ。ここからが本番だ。先の岩稜の連なりを見て気を引き締めなおす。少し先から険しい下降。ペンキを頼りに慎重にコースを探す。ここからまた登りになるが、絶壁のてっぺんに出た。まさか、この先に下りるの?そんなことないよね、と少し戻って正しいマークを発見して安心する。慎重に足下を確認しながら進み、次のピークの赤石岳。この先も細い、ボロボロの切り立った登下降する稜線がずっと続く感じ。大変そうだ。陽は暑いが、道は基本的に飛騨側についており、日陰になると涼しいのが助かる。それと出発時に背負った2.7ℓのアクエリアスが命の綱。この先も、どこがどうだった、といえないほど気の抜けない岩場の登下降、トラバースが連続。浮石も多そうな迫力いっぱいの登りをこなし、間ノ岳(2907m)頂上。標識はなく、岩に大きく「間ノ岳」のペンキ文字。思わず、「間ノ岳だー」と声を出す。西穂奥穂間の事故の多くが間ノ岳前後で発生するという、ルート中の主要ポイントのひとつだ。と言っても、どこも気の抜けるところはないのだが。時間は8時過ぎ、ここまでいいペースではないだろうか。下りはいっそう慎重に行く。コルに下りる最後に8mくらいの垂直の鎖場。なるべく鎖を持たないように慎重に下降。無事に間ノ岳を越せてホッと一息。ここで反対側から来たガイド1名中高年客3名(内女性2人)のパーティーが待っていた。聞くと穂高山荘を3時半に出たと言う。すれ違って振り返ると、流石にガイドがザイルで確保していた。さあ、次は有名な天狗の頭への逆層スラブの登りだ。晴れているし、交換したばかりの靴底のフリクションが効いて、そんなに難しくはないが、雨だったり、逆コースだと手古摺るかもしれない。そんなことを思いながら、調子に乗って登っていて、ふと左手で掴んだ岩の先を見ると断崖絶壁。思わず冷や汗で慎重に右側に移動して登高を継続。登り終えたところが天狗の頭(2909m)だ。間ノ岳から1時間だった。ジャンダルムはまだずっと先に見える。出発して5時間弱、やっぱり大変なルートだ。頂上直下にビバーク跡があり、思わずその先に進んでとんでもないところにコースアウトしそうになった。正規のコースに戻る。よく印を見なくては。天狗のコルへの下りは最後のところで、長い垂直の鎖が最後切れていて足下が難しい(とガイドブックやWEBに書かれている)のだが、出来るだけ鎖に頼らずに下りれば、それほど怖い思いはしなかった。感覚も麻痺してきたか。しかしここは登るのもイヤだろうな。天狗のコルからは唯一のエスケープルートである岳沢へ下りる道がある。9時半過ぎだが、上高地のほうからガスが上がって来だした。前後の山の眺望がなくなりだしたのは残念だったが、実は翌日も同じ時間からガスが上がってきた。規則正しいこの時期の山岳気象のようだ。目の前に大きな登り。コブ尾根ノ頭への巨大な岩場のウンザリする登りだ。朝もロールパンだけ、行動食もおかきとドライフルーツ、それにアクエリアスだけでエネルギーも切れてきたか。しかし進むしかない。一歩一歩慎重に歩き、最後、大きな鎖を越えて頭(かしら)に出た。1時間弱くらいの登りだった。ここに来てこの登りは応える。ガスがかかってきたが、もう目の前はジャンダルム。こちらからだと、分岐から簡単な登りでジャンの頂上(3163m)に出た。11時半だ。やっと来られた。生憎ガスが出て眺望のないのが残念と思っていたら、しばらくの間、ガスが晴れ、奥穂高岳から穂高山荘がきれいに見えた。一人きりのジャン頂上で暫し休息の後、さきほどの分岐に戻り、奥穂を目指す。ただ分岐からの最初の1歩が難しかった。大きな岩に鎖がついて上に登るのだが、上手く手足のポジションがとれない。試行錯誤を繰り返し何とか上がれた。以前、フリークライミングの教室で教えてもらったことが役立ったと思う。ジャンは岳沢側を巻く。際どい断崖のトラバースだが感覚が麻痺してきたか、怖さを感じない。余計に危険な状態かもしれない。もうすぐゴールだが、ここからのロバの耳の通過が一番難儀したかもしれない。飛騨側の断崖を巻いていくが、下りで一箇所、トラバースで一箇所、何ともスタンス、ホールドの取り方で苦労した。エイヤッは絶対出来ない。頭を使い、試行錯誤で何とか通過した。さあ、もうすぐ奥穂高。その前に最後の難所の「馬の背」だ。切り立ったナイフリッジでこのルートの難所の代表のように言われるが、こちら側からだと登りになるし、ホールドも問題なく、感覚も麻痺しているのか、難なく通過できた。高所恐怖症の人とか、奥穂側からだと、下の絶壁が見えて怖いかもしれない。さあ、最後、奥穂までの登りだ。もうそこに見えているが、緊張も解け、力が抜けてきた。慌てることはない、ゆっくり一歩一歩で1時半に奥穂頂上に着いた。何とか、無事に辿り着けた。西穂山荘から9時間15分。岳沢を上がってきた4人の登山者が迎えてくれた。疲れた。かなり精神的に追い込まれたと思う。座り込む。ガスがわいて眺望は効かなくなったが、達成感は大きい。穂高小屋に歩き出したら、雨粒が落ちてきた。ガスのため直前になるため小屋は見えなかったが発電機の音が大きくなってきたと思ったら赤い屋根が目の前に見えた。テントも既にけっこう多く張られている。2時半に小屋に着いた。雨は止み青空も見える。テントの受付(600円)を済ませてテン場へ。けっこう混んでいたが一番上部の使っていないヘリポートに張らせてもらう。眺めもいいし最高だ。ふと、涸沢を見ると、まだ雪に埋まっているようで驚いた。小屋に戻り、ビールを買って土間のベンチで飲む。同席した金沢から来た熟年男性3人といろいろと話し、楽しい時間を過ごすことが出来た。5時半に水を仕込んでテントに戻る。雲は出ているが、太陽が反射してけっこうきれい。時折、雲が晴れることもあり、カメラを持った人が多く出ている。暗くなったので、夕食代わりのおかきとピーナッツを食べてシュラフに潜る。NHKは大阪の放送局が入る。8時くらいからけっこうな雨が1時間くらい降った。
なかなか眠れなかったが、夜中に外を覗くと満天の星だった。思わず外に出た。天の川も流れ星も久しぶりに見た。
8月20日(金)
あまり眠れなかったが、5時過ぎに出るつもりで、4時頃にシュラフを出る。まだ星空がきれい。テントを出ると東の空が赤く輝き始めている。少し明るくなって、雲海の上に常念岳が小島のように浮かび上がる。前穂北尾根のシルエットもきれい。濡れたテントを撤収し、用意を整え、5時10分に出発。朝飯はあられとピーナッツだけ。何とかなるだろう。小屋で昨日の金沢の男性たちに挨拶する。彼らも前穂から岳沢を下りるとのこと。今日もいったん奥穂に向かう。小屋前の梯子を登っていると拍手が。ご来光だ。素晴らしい快晴になった。途中で振り返ると、薬師岳や白馬岳までハッキリと見える。奥穂頂上には既に多くの登山者がいた。早く出た登山者はもうジャンダルムの頂上にいる。奥穂にいる仲間がトランシーバで交信している。小休止して出発。このルートを歩くのも20数年ぶり。吊尾根を前穂に向かう。右手に昨日歩いた西穂から奥穂の稜線と上高地、左手には雪の残る涸沢を眺める素晴らしい尾根だ。ところどころ鎖も出るが昨日を思えば何ともない。西穂奥穂の稜線を見て、よくもあそこを歩いてきたものと思う。7時半に前穂分岐。ザックが2つデポされている。自分もザックをデポ。片手間のつもりだと、しっぺ返しを食らうなかなかきつい登りだ。最後の急登をしのいで、8時に前穂高岳(3090m)頂上へ。快晴の下、槍穂高連峰とその奥の山稜の眺めが鮮やか。前回来たときはガスの中で何も見えなかったが、今日は最高。しかし、岳沢からガスが上がり始めてきた。昨日も同様だった。下り始めると続々と登山者が上がってくる。分岐に戻るとザックがたくさん置かれている。9時前に重太郎新道を下り始める。岳沢小屋までコースタイム2時間900mの下りだが、ここは大変だった記憶がある。そのつもりで下ったからか、昨日と比べればということか、それほどの負担も感じず、休憩なしで淡々と下りた。途中、雷鳥広場で西穂−奥穂の連なりが大迫力で迫る。遥か下に岳沢小屋が見える。まだまだ遠い。このルートには梯子がいくつか、かかっているが、一番下のはビル3階分くらいの高さの垂直梯子だ。こんなのあったかな。慎重に下りる。雨が降っていたりしたら大変、高所恐怖症の人もつらそうだ。ほぼコースタイム通りの時間で岳沢小屋(2170m)に到着。岳沢ヒュッテの後継の新しい小屋、WEBでも毎日楽しませてもらっている。炭酸が欲しくなりペプシを買う。美味い。腹が減って集中力もなくなっていたのでラーメン(800円)を注文。美味い。生き返る。11時半過ぎに小屋を出る。帝国ホテルは大分下に見える。ここから上高地までまだ700mくらい下るのだ。コースタイムは2時間。ここからは道も険しいところはない。余韻を楽しみながらゆっくり行こう。途中、台風の影響か、樹木が凄まじくなぎ倒されているところがあった。上高地近くの樹林は、本当に静かでいいところだ。自然探勝路まで出ると、いっきょにハイカー、観光客で賑やかになる。河童橋周辺は観光客でにぎやか。ゆっくりする気にならず、バスターミナルに直行。発車直前の13:25発の新島々行きに飛び乗る。14:25に新島々着、14:45分発の上高地線で松本に15:14着。15:47発のあずさの指定券をゲット。駅で弁当とプレミアムモルツを買い、発車後に一人祝杯。美味い。18:09に立川に着き、19:00過ぎに自宅着。疲れた。
8月21日(土)
朝起きたら全身が痛い。前2日間のダメージは深刻だ。公園でテントを乾かす。本当に疲れた。
総括
この数年の念願だったルートを踏破できてよかったが、独標通過後、8時間くらい緊張を強いられるルートで精神的に参った。他の北アの一般ルートでも怖いところはあるが、それらはルートのごく一部であるのに対し、このルートは全部がそんなところだった。精神的というより、やはり体力勝負なのだろう。
西穂からよりも、奥穂から西穂を目指すほうが多少楽かもしれない。個人的には、こういう岩稜歩きより、ふつうのガッツリ稜線歩きのほうが趣味に合っている。今度は秋の北八ツをじっくり歩いてみたい。
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