北アルプス穂高岳 涸沢より
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- GPS
- 56:00
- 距離
- 36.4km
- 登り
- 2,053m
- 下り
- 2,042m
コースタイム
9/15 5:45上高地BS-6:45明神-7:25徳沢-8:30横尾-9:40本谷橋-11:30涸沢
9:16 4:40涸沢-6:10南稜取付-6:50北穂高岳-7:50涸沢コル-8:30涸沢岳-9:00穂高岳山荘(停滞)
11:30穂高岳山荘-12:20奥穂山頂-13:50穂高岳山荘-2:50ザイテングラート取付-4:30涸沢
9/17 4:40涸沢-5:50本谷橋-7:00横尾-8:30徳沢-9:00明神-10:00上高地BS
天候 | 晴れ 少しの夕立 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
コース状況/ 危険箇所等 |
涸沢まではよく整備された登山道です。小さなお子様でも安心です。 北穂から奥穂までの従走路は高度感もあり、ある程度、登山者の力量に任せられているので、高所恐怖症の方にはあまりお勧めできませんが、ご高齢の方も頑張って登られています。正直、負けそうでした。 |
写真
感想
山岳物の本を読むと穂高連峰がよく登場する。
井上靖の「氷壁」や松濤明の「風雪のビバーク」
「山靴の音」の芳野満彦が小屋番として冬の半年を一人で過ごした徳沢園。
夏の終わりの連休に初めての深夜バスを利用して上高地へ向かった。
上高地から横尾までは横尾ハイウェイとも呼ばれる?広くて緩やかな道が続く。
小説に登場する前穂や屏風岩を眺めながら梓川の河原脇を進む。
横尾から涸沢までは少しガレ場などがあり、少々登った感があるが、日本アルプスとは思えない位の快適な道だ。
ヒュッテ手前では岩をきちんと敷き詰めて、なんだか山奥とは思えない石畳が山荘へ続く。
それでも涸沢は標高2千3百メートルを超える。
涸沢ヒュッテはとても気持ちの良い山荘で、トイレも綺麗だし外に売店があって、何時でもビールやカレーなどが頂ける。
昼前に到着した僕は早々にテントを張って初日はゴロゴロしながら夜を迎えた。
さすがに夜中に何度も目が覚めると、テントから顔を出して星空を見上げる。
本当に降って来るような星空だった。
手を伸ばせば届きそうな天の川から星雲まで、オレンジ色にぼんやりといくつも浮かんでいる。
近くでは何とか撮影しようとカメラのフラッシュが瞬いていた。星空は難しいんだよね。
翌日、少し東の空が明るくなった頃にテントを出発した。
すでに遠くの山峰にはヘッドランプの光が列になって揺れている。
北穂への南稜付近で日の出を迎えた。涸沢名物のモルゲンロートを堪能する。
北穂は以外と地味な山頂で、どちらかというと槍ヶ岳への分岐路のイメージが強い。
しかし、ここで亡くなった松濤明の松濤のコルでは感慨深し。
眺望は360度晴天の中、槍ヶ岳が突き刺さる筋雲の背に堂々と聳える。
足元から続く大キレットを眺めながら、何時か行って見たい気がしてくる。
南には遠く南アルプスとそのまた遠くに富士山が小さく雲海の上に浮かんでいた。
涸沢岳へ続く吊尾根はなかなか大変な岩尾根で、ほぼ数百メートルは切れ込んだキレットが続く。ロッククライミングのメッカの滝谷を足元にしながら、必要最低限の鎖を頼りにまさしくカニのように渡っていく。
ご婦人方や若いカップルが次々と軽い足取りで通りすぎる。
やっぱり北アルプスを登る人は少し人種が違うのか?
涸沢岳を越えると穂高岳山荘があり、目の前が最後の奥穂の取付きだ。
人気の百名山だけあって行列が出来ている。
見ていると、上部の梯子で登り下りの方が身動きできなくなり、混乱している。
下から上に向かって「そこ早く登れ!」なんて誰かが怒号を発している。
なんだか少し嫌な気分になる。
今日下山される方は時間が気になるのかも知れないが、せっかくの晴天が台無しになるような気がして、暫らく小屋の貯水搭の屋根上のデッキの上で昼寝(朝まだ9:00)を決め込むことにする。
日差しが暖かく、喧騒も遠くなりすぐに熟睡した。
目覚めると11:00!なんと2時間も寝てしまった。日焼けで顔がヒリヒリする。
取付きを見ると、なにやら交通整理の方が出ていて、交互通行で登山者を誘導している。行列もずいぶん短くなった。
そろそろ行くか、と腰を上げて、少し短くなった行列に並ぶ。
30人位づつ交互に通しているのだけど、途中随分人が降りてこない。
どうしたのかと思っていると、小さな小学校にも上がらない子供が可愛いハーネスを付けて、
父親らしき人の前を降りてくる。
きっと、みんな待たされてイライラしているはずなのに、
「よく頑張った!」「偉いぞ坊や!」「将来の岳だな」と笑顔満面で声を掛けてあげている。
子供も得意満面に調子に乗って小さな岩を飛び降りる。
疲労困憊のお父さんは、苦笑いを浮かべてみんなに頭を下げていらした。
少し暗かった気分が随分晴れてくる。
ほんの十数メートル位の梯子と鎖場の岩壁を越えると、下りの方の行列が長く続いていた。帰りには解消されていることを期待して先へと進む。
山頂へは50分位の距離だが、以外とあっさりとしていた。
しかし、山頂の展望は少し雲が出てきたが、すばらしく、上高地が遠い眼下に梓川の先へ続いている。
昨日、河童橋から眺めたこの峰を反対側から見下ろしているのだ。
西に天狗から間ノ岳に続く西穂、東に吊尾根を越えて氷壁の前穂がはっきりと見える。いつかは縦走してみたいコースだ。
景色を堪能して穂高岳山荘へ下る。渋滞は少し解消されていた。
山荘前からザイテングラート経由で涸沢へ下る。
目で見るとあんなに近く見える涸沢ヒュッテのテント場が中々近づかない。
広大な涸沢カールの中で距離感を失ってしまう。
途中後ろから元気なおじいちゃんに追い越される。
「お元気ですね」と声を掛けると、
「今日は日帰りでい!」と駆け抜けて行かれた。
かなり膝にきている僕は大変ショックを受ける。こっちは三日もかけている。
そういえば、普段は前の方を抜かすことの多い僕が、今回は抜かれてばかりいる。
やはり北アルプスに登られる方々は山行のレベルが違うのか?
涸沢に到着したのが夕方4:30。本当は午前中に着く筈だったのだが、奥穂の停滞と渋滞ですっかり遅くなってしまった。
しかし、あまり早く着いてもビール飲んでぐだぐだするだけなので、かえって丁度良かったのかもしれない。
山も長く楽しめたし。
ヒュッテのデッキで生ビールとカレーを頂ながら、夕日に染まる今日歩いてきた峰々を眺めつつ、
至福のひと時を味わう。
しばらくの間、ぼんやりと暮れていく景色を眺めながら、夜を迎えた。
翌朝、周囲に迷惑が掛からなくなってから早々にテントを撤収する。今日は天気が崩れる予報だ。
4:30頃片付けを終えて出発する。
振り返ると、ナナカマドが少しづつ紅葉しかけている。
あと二週間もすると綺麗な紅葉に、この景色もまた変わっているはずだ。
今度は雪に覆われた涸沢も見てみたいなと思った。
そんな事を考えながら、一昨日来た同じ道を、ゆっくりと下った。
上高地に到着すると、河童橋から今一度、穂高の峰々を見返した。
かつてこの山域を日本アルプスと初めて名付けたウエストン師が、
この山峰のあまりの美しさに、思わず愛妻を抱きしめ涙を流したという。
多分その時と同じ景色を何度も名残惜しく振り返りながら、
たくさんの人が並ぶ帰りのバスへの列に駆け込んだ。
北アルプスですか!すごいですね〜〜
まだまだ私には憧れの対象
山の本を読むとその山に行きたくなりますよね
「氷壁」は読みました。「山靴の音」と「風雪のビバーク」、今度読んでみます。
尾瀬のレコにコメントありがとうございました。今年の夏(と、毎年思う)は暑くて、あれ以来どこにも足が向いていませんが、やっと秋の気配がしてきて「どこにしようかな」と考えるようになって来ました(^_^;)
秋の涸沢いいですよ〜
山小屋2泊も出来れば、何の問題もありません。
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