八ヶ岳縦走(白駒池-硫黄岳-赤岳)〜苔むす森から盟主まで〜
- GPS
- 14:09
- 距離
- 30.7km
- 登り
- 2,133m
- 下り
- 2,689m
コースタイム
- 山行
- 6:03
- 休憩
- 0:56
- 合計
- 6:59
- 山行
- 5:22
- 休憩
- 1:07
- 合計
- 6:29
天候 | 20日曇り一時雨 21日曇り一時晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス タクシー
20日 白駒池着5:30 21日 美濃戸口発12:45(アルピコ交通タクシー、5740円)茅野ステーションホテル着13:15、茅野駅発14:40(えきねっと50%引き2820円) ※バス時刻表の読み間違いによりタクシー利用。 |
その他周辺情報 | 硫黄岳山荘:稜線上の山小屋とは思えない!設備(シャワー、洗浄便座なども)が整っていて快適。シーツ、布団カバー、枕カバーが都度洗濯で清潔。食事も予想以上の充実ぶり。各種カードによる割引。夕食付一般10000円。 日帰り温泉:ちのステーションホテル、駅から2分、500円、10時から16時まで。 |
写真
感想
どんよりとした空模様。このままもってくれれば良いのだが。祈るように白駒池に向かい、歩き出す。北八ヶ岳特有の苔むす森を久しぶりに歩く。清々しく気持ちが良い。ほどなく分岐点、今日は北岸の道に踏み込む。
キャンプ場から大学の山岳部員らしきパーティーとほぼ同じペースで歩くこととなった。右手に白駒池、まだまだ紅葉には程遠い。それにしても重装備、稜線上に幕営地は無い、いったいどこまで行くのだろう。俄かに過ぎし日が甦る。緩やかに高度を上げ、尾根に乗ると今日の目的地、硫黄岳が目に入った。そんなに遠くじゃない。いつものように楽観視、5時間後の辛さなど思いもよらず。
にゅう、予想以上に良い山だった。駐車場から手軽に登れて、晴天であれば360度の眺望が得られる。本沢温泉まで行くという彼らよりも一足先に出発した。にゅう分岐で高見石からの道に合流する。小雨が降り始めた。ここから先は5年前にも歩いた道、中山峠から先の岩場は記憶に新しいが、久しぶりの岩場、少しぎこちない。何とか勘を取り戻し、東天狗岳へ駆け上がる。
出発後約3時間半、ペースが早すぎるかもしれない。雨は一旦止んだが、予報によれば昼前後に再び降り始める。風も出てきた。今のうちに行けるところまで行こう。僅かな滞在で、その賑やかな場所を後にする。本沢温泉への道を分け、夏沢峠を目指す。根石岳山荘で暖かい飲み物をいただく思いを振り切って先を急いだ。2軒の小屋が閉まっている夏沢峠は寂しく、休む間もなく硫黄岳への登りにかかる。
ガレ場の続く斜面は些か退屈である上に、横からの強風に晒され、容赦なく体力を削がれてゆく。ロープの外に在るケルン以外に隠れる場所は無い。ひたすら歩き続けるしかなかった。約1時間ののち、ようやく硫黄岳に到着した。
4年前も風が吹きすさび、濃霧が立ち込めていた。どうもこの広い山頂を見渡すことは叶わないようだ。写真2枚を撮り、とっとと山荘に向かうことにした。ケルンに導かれると、硫黄岳山荘は忽然と姿を現した。白駒池駐車場を出発してから7時間が経過していた。
受付を済ますと部屋に案内された。布団は1枚おきに整然と並べられ、清潔なシーツをはじめリネン3点セットが置かれていた。これだけで十分にこの山小屋の意志を感じることができる。
身支度をして談話室に向かう。白玉ぜんざいを注文した。今日の記録を付けていると、いつもどおり睡魔が訪れる。2時間ほど横になってから再び談話室へ。夕食を待つ間、単独行の方が多いことに気付いた。館内は理想的な静けさが保たれている。夕食は美味しく、広い水回り、洗浄便座、コンセント、シャワーなど設備も充実、何よりスタッフの方々の親しみやすさが嬉しかった。
朝食のざわめきの中、夜明けを待たずに出発した。東の空をどんなに見つめても、ご来光は得られそうにない。富士山のシルエットに安堵しながら進み、ヘッドライトが必要無くなる頃、横岳の岩場に到達した。
鎖頼りのトラバースから梯子、桟橋、かなりの緊張を強いられる。時間にすれば僅かだが、やはり朝一番に通過するに越したことはない。横岳山頂、奥ノ院には6時少し前に到着した。素晴らしい眺望が眼前にあった。北アルプスが雲上に浮かび、赤岳と阿弥陀岳の向こうには南アルプスが聳え、振り返れば昨日辿った北八ヶ岳の山々が並んでいた。十分に堪能してから次なる峰へ向かう。
三叉峰で杣添尾根への道を分ける。美濃戸口への道は、いい加減飽きていたので、計画第2案としてここから野辺山への下山も考えていた。下りられるはずもない。一体何を考えていたのだろう。当然のように稜線を歩き続けた。岩場はまだまだ続く。徐々にその楽しさにのめり込んでゆく。眼前の赤岳には手が届きそうだった。
地蔵の頭、赤岳天望荘を過ぎると、赤岳への最後の登りにかかる。上部には多くの人、道はガレ場である。足元、頭上に注意を払いながら慎重に進む。そして7時34分、久しぶりに大きな達成感を得た。いつの間にか青空も広がっていた。やっぱり山はいい。無心になれる。すべてのことに感謝できる。
文三郎尾根を少し下り、中岳へと登り返す。これで、蓼科山から阿弥陀岳、編傘山まで八ヶ岳稜線の全山を踏破した。この時ばかりは、その昔、八ヶ岳を蹴飛ばした富士山を睨むことにしていた。良かった。姿が見えて。
中岳のコルで阿弥陀岳の壁を見上げ、下山の途についた。昨年9月、雨中に登った道であったが、屈曲部で先行者につられて直進してしまった。上から声をかけてくれた人がいなければ、二人して沢に引き込まれていたかもしれない。大反省である。
この出来事は、心身ともに一気に疲労をもたらした。行者小屋に着いて座り込む。あまりの人とテントの多さに驚き、逃げるようにその場を後にした。南沢の道は長く退屈だった。何度も往復しているからではない。とにかく情けなかった。
ちょうど2時間で美濃戸に着いた。冷えた飲み物に手を出しそうになったが、美濃戸口で、独り、反省会をするためにそのまま歩き続けた。満車の駐車場を横目で見ながら、多くの人とすれ違った。半数近くの人が、なぜか既に疲れた顔をしていた。
美濃戸口の八ヶ岳山荘には12時20分に到着した。バスの発車まで1時間ある。乗車券を購入してゆっくり待つとしよう。「次は14時45分、今日は2本です」信じられなかった。公共交通機関の時間を読み誤ることなど、今まで一度も無かった。慌てて千円札を引っ込める。うなだれて視線を下にずらすとタクシーの文字。せっかくあずさに半額で乗れるのに、これで差引きマイナスだ、ぶつぶつ言いながら呼んでもらうことにした。
道間違いの反省会どころではない。更なる反省を余儀なくされ、傷心の思いでリアシートに身をゆだねる。「見てください。道の両側にずーっと路上駐車ですよ。これじゃ、バスも走れない」確かに夥しい数の車がずらりと並んでいた。なるほどこんなに遠くから歩いていたのか。これもコロナ禍のなせる業か。
茅野駅の近くで日帰り温泉はありませんか。ダメもとで訊いてみた。運転手はすぐさま返してくれた。そしてそのホテルの前に付けてくれた。反省会はまたこんどにしよう。貸し切り状態の浴槽に身を沈めて、二つの失敗を忘れることにした。
臨時特急あずさは予想どおり空いていた。静かな道、静かな山小屋、静かな車内、「三静」が成立した。密かな満足を得て、窓の外を見る。この季節にはふさわしからぬ積乱雲が、立ち昇っていた。2時間半では日常に戻れそうもない。
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する