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2021年05月12日 06:05日本百名山の短歌全体に公開

短歌の詠う百名山 23 会津駒ケ岳 

短歌で詠う百名山23 会津駒ケ岳
深田久弥は、会津駒ケ岳を次のように書いている。
 「私か初めてこの山を親しく望んだのは、尾瀬の燧岳の頂上からであった。北にあたって長い山稜を持った山が見える。一頭地を抜いた峻抜な山の形には見えないが、その尾根の長いおだやかな山容が私を魅惑した。そこで私は会津駒ヶ岳へ向った。昭和十一年(1936年)六月のことである。
 尾瀬沼から沼山峠を越え桧枝岐へ行って泊った。近頃の尾瀬はいつも満員で、前約なしには泊られないほどの盛況だが、三十年前はまだ静かな山地で、殆んど登山者の姿を見かけなかった。まして桧枝岐などは、平家の末裔という伝説も信じたくなるほど、僻村の風情を持っていた。
  会津の名山と言えば、すぐ磐梯山の名があげられる。それは猪苗代の平地から誰にでも仰がれた からであろう。会津駒は磐梯より三百米も高いにも拘らず、あまり人に知られないのは、平地からはどこからも見えないからであろう。二十万分の一「日光」図を拡げてみるがいい。いかに多くの山々が蠢いている中にあるかが分るだろう。私が訪れた頃の桧枝岐は、村の人が「日本一の山奥の部落だ」と言っていたのも道理、隣村まで一里、 郵便局まで五里、汽車のある所までは一日もかかるという状態であった。」
と言うように、奥深い山村であった。
桧枝岐の村には1996年の正月に勤めていた企業が桧枝岐の小さなスキー大会のスポンサーをしていたので初めて訪問した。当時は人口900人、住む人の名字が三種類、星、平野ともう一つの名字しかいないのだ。

尾瀬と言えば、平野長英氏のことが最初に思い浮べて、平野長英の歌を取り上げよう。
平野長英 会津駒ケ岳七首 「尾瀬沼のほとり」                                                                                                                                                                                                                                                                         栂(ツガ)木立いづるころより霧深く雨ぽつぽつと降りいでにけり
美しく南京小桜むらがりて咲ける高嶺に吾がおとり立つ
霧かせにかすかに花のゆらぐさへ心にふれてわが見つつゐし
山の上の狭霧にぬれてあやしくもべにばないちご花さきゐたり
いただきにやすらひ居れば駒が岳ふもとべにして雷鳴りわたる
霧の中に吾が立ち居れば何鳥か真近く来り鳴かず飛びげり
駒が岳いただきとざす霧の中に鴫く鶯の声のあかるさ

この歌は長男が生まれての後の歌で、昭和10年前後と思える。
また、その後に、「尾根づたひ」18首に駒ケ岳が詠われている。

ひとしきりこめしさ霧のはれゆきて駒の高嶺は白く照りいづ
駒ケ岳のいたき近くなりにけり眼に迫り來し大雪山
いくとせののぞみをここに駒ケ岳の大きいいただき雪ふみて立つ
雪山に照れる春日のまぶしさにたへつつ遠き山を見廻す
駒ケ岳ゆ大杉岳と尾根づたひ今日ぞわがゆく燧にむかひて
越後の山日光の山右左ほしいままに見つつ尾根つたいゆく
暮れなずむ駒の高嶺をかへりみて息づく友もわれもつかれぬ

があるが、これらは戦前に詠まれた歌で、戦後には読まれていないのが残念だ。
平野以外に会津駒ケ岳を詠う歌人は、中西悟堂しかいないであろうと思い、彼の歌集「安達太良」をみると、「会津駒ケ嶽」6首があった。
そのふたつ手前の「西多摩夏居」4首の1首が昭和26年宮中歌会に取られているので、昭和20年代の作品とみていいだろう。と言うのも、歌の後に添えられた文章を紹介したかったからだ。中西は平野が桧枝岐から登っているが、中西は新潟から枝折峠を越えて会津に入っ手いるのです。
以下中西悟堂の『会津駒ケ嶽』を紹介する。

「越後の小出駅からすぐ歩き始めて枝折峠にかかり、越後駒、八海、中ノ岳三山の雲を眺めて銀山平に下るまで十里の山越えをやって、銀山荘で一泊。翌日は雨中を出発。元禄湯女の哀話などのある買石原から傾城沢を渡って福島県に入り、ルリビタキやノポソの鳴く大津岐峠の森林限界を超えて頂上の草原に辿りづいた時は篠突く雨。同行の天狗さんこと小林章君ほどの猛者も少々寒がっていた。食事をするにも木の蔭がなく、取り出したムスビはリュックの中で懐濾灰といっしょくたに溶けて黒い塊になっているのを、標高一九四五米の豪雨にたたかれて食べたが、あとば駈足でジグザグをキリンテに下り、檜枝岐の丸屋に一泊。翌日は有難や快晴で、午前中に会津駒の登頂を果した。頂上は広い草原に池塘をつらね、残雪の中に岩鏡が咲き、メボソ、ウソ、カヤクグリ、クロジ、コマドリ、ルリビタキ、キクイタダキと亜高山の鳥の聲々。
――チングルマ、長之助草、南京小桜、如百千鳥の草尾根が、前日雨に悩んだ大津岐峠へと美しく伸び、その向うに燧嶽の雄姿も近い。人影もなく、紙屑一つないめでたい山頂であった。

 會津駒ヶ嶽
(銀山平と上流只見川)
雨の中二つ縣を境する木橋わたり只見川越す
(大津岐峠二首)
昨夜過ぎし颱風の暴れいまだ残る森林限界を登り悩みつ
大津岐はただに雨しぶく草原にして寄る蔭もなし
(桧枝岐村にて)
檜枝岐は路傍にならぶ墓石も濡れそぼちつつけぶる夕雨
(会津駒ケ嶽頂上二首)
のぼり来し會津駒ヶ嶽の頂は池塘つしねて青く草萌ゆ
まなかひに燧嶽立つ朝晴よ大津岐指す尾根ものびつつ

小林章、野村安政、野村孝の諸君と、とあり、四人で登ったのであろう。たぶん昭和27、8年ごろだと思う。とすれば、小出から銀山平まで歩くと言う文章が理解されるのだ。深田久弥が登ったのが昭和16年で、汽車の着く駅まで2日と言う時代であっただろう。如何に遠く山深い山であるかがわかる。
今は那須塩原のインターから2時間程度でいけるかもしれない。

私にとってこの山は実に思い出深い山であり、桧枝岐も懐かしいのだ。
桧枝岐村には私が郡山市の企業に単身で務めていた時、1996年の1月に桧枝岐村の小さなスキー大会のスポンサーになっていたのです。それでこの村を初めて雪の中を尋ねたのです。実に雪深い村ではあったが、人口900人、しかし、この村は尾瀬を控えて、今では農協から借り入れがまったくない村だと言うほどに豊だと言うのです。実際に泊まった宿も、自分の山から伐ってきた木材で建てたと言います。その夏ですかね、実際に、この山に登ったのが。深田久弥から遅れること六十年後の1996年、友人の横山さんが山をはじめたいと言うので、では優しい会津駒ケ岳はどうかと那須塩原で待ち合わせて、桧枝岐へ入ったのです。横山氏とはその後、仙丈岳、焼岳、表銀座、不帰のキレットから白馬、中央アルプスなどを歩いたのですが、その後癌で亡くなられてしまい残念だった。弓道三段の五歳先輩の方でした。
その後に、2011年にひとりで登って、後にヤマレコの投稿者でフォロワーの多い人となったピカチャンと出会ったのが会津駒ケ岳であった。彼女との出会いが私を再び山への復活を促すきっかけになったのです。
この山もその後、私の現在の山のパートナーであるYumesoufさんやAonuma1000さんとも登ったり、松本の「山道の会」の登山日に合わせて、所沢のメンバーと登って、そのメンバーのラインのグループ名は「会津駒ケ岳グループ」のままです。4回ほど登ったけど、中門岳まで行ったのはYumeさんとAoさんとのコラボの時でした。登山口まで行くのが大変ですが、行けば楽しいし、小屋に泊まればなお楽しい山と言えるでしょう。私的には比較的回数の多い山と言えるでしょう。
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