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カブトムシは好きだが、スズメバチは嫌いだ。
嫌いというより、危険だ。
昆虫界の「最強対決」はオオスズメバチに軍配?――。
山口大大学院創成科学研究科(山口市)の小島渉講師(昆虫生態学)は、カブトムシがオオスズメバチの攻撃により餌場からあっという間に追い払われる実態を明らかにした。
夜行性で知られるカブトムシの活動時間は、オオスズメバチからの攻撃があるかどうかで変化するという。
研究結果は11月、米生態学専門誌エコロジーに掲載された。
写真 カブトムシの脚にかみつくオオスズメバチ=小島渉講師撮影
小島さんは2021年、埼玉県の小学生との共同研究で、モクセイ科の外来植物シマトネリコに集まるカブトムシが昼間も活動を続けることを突き止め、とどまる植物によっては昼間でも活動すると結論づけた。
その後もカブトムシの活動時間に着目し、22年8月中旬、山口市徳地のクヌギに集まる約15匹のカブトムシを観察している時に「事件」は起きた。
午前5時ごろ、2〜3匹のオオスズメバチがやってきて、カブトムシの急所である脚にかみつき、次々と地上に投げ落としていく様子を目撃。
カブトムシは約5分間で全て排除されてしまったという。
小島さんは「見たことがない光景で驚いた。とにかく記録を残そうと思った」と衝撃を振り返る。
同様の現象は3日連続で確認された。
クヌギにはもともと多くの昆虫が樹液を求めて集まるが、昼間はオオスズメバチが、夜間はカブトムシが、それぞれ他の昆虫を追い払って独占しようとする。
今回、オオスズメバチとカブトムシが出会い、オオスズメバチは逃げるカブトムシの脚にかみつき、追い払うことを確認。
時には地上に投げ落とした後もしつこく攻撃を続ける様子が見られた。
カブトムシはオオスズメバチよりも体重があり、硬い外骨格で守られているが、脚にかみつかれるとクヌギにしがみつく力がそぎ落とされ、抵抗できなくなるようだ。
オオスズメバチによる攻撃を受けなければ、カブトムシの活動時間は変化するのか。
調査4日目にスズメバチよけのスプレーを使って明け方から正午まで、周囲に飛んできたオオスズメバチに噴射して追い払うと、カブトムシの半数以上は少なくとも正午までクヌギにとどまり続けた。
今回の研究で、カブトムシは本来強い夜行性を示すわけではなく、オオスズメバチからの攻撃を受けなければ昼間も活動することが分かった。
小島さんは「どのようなカブトムシが昼間まで残って活動を続けるのか。
スズメバチがカブトムシを地上に落としてしまう現象は徳地地域だけではなく普遍的に起こっているのかなど、さらに詳しく調べていきたい」と話す。
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