山人生の転機（Ⅰ）

2010年09月27日 13:30山岳クラブ全体に公開

岩の上に2人で座っている。もはや現実を離れた不思議な感覚だ。
目の前には秋を感じる澄んだ空気と少し雲の懸かった青い空が広がり、
下の方へ目を向けると、奥多摩の街並みが山々に囲まれひっそりと佇む。
午後になりハイカー達を乗せた臨時バスが駅に戻ってきたようだ。
岩の上に座り気さくに自分に対して話しかけてくれる相手は、
過去の日記や山行記録で幾度か触れたことのある憬れのクライマーで、
まさに雲の上の存在だったが、今氷川屏風岩のC 峰の上で
1本のザイルによって私と結ばれている。

朝は6時に目覚まし時計をセットしていた。9時15分奥多摩駅集合予定なので、
電車の時刻を考慮すると7時10分に自宅を出れば十分間に合う。
１，２本早めの電車に乗ろうかとも考えていたが、やはり数日前からの緊張が
続いたせいか身体も思うように動かなく定刻に自宅を出発することになった。
駅に近付きコンビニエンスストアでコピーを取り朝食と昼食を買おうと
お店の中へと入っていくと財布が無い。冷静に考えるが無い。間違いなく無い。
電車の時刻まであと12分。とりあえずザックをコンビニに預け猛烈に走る。
自宅から駅までおよそ2kmコンビニからでも1.5km。タクシーなどどこにもいない。
むりだ。不覚にも今日落ち合うメンバーの携帯番号も聞いていない。
トントン拍子で今日の日程が決まり、この日に照準を合わせてこの10日間くらい
身体を作って来た。この十数年財布を忘れたことなど無いが、この何日間か続いた
緊張がピークに達したのか信じられないミスを犯してしまった。
なおも走りながら考える。もしこのまま連絡が取れず遅刻すると快速電車も
逃すために1時間半は連絡無しで待たせることになる。ありえない。泣きそうだ。　

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　つづく

2010-09-09 また身体の脱皮がはじまったかな

2010-10-09 山人生の転機（Ⅱ）

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