4月9日（木）読書ノート:「ウイルス・ルネッサンス　ウイルスの知られざる新世界」ウイルスとヒトと生命進化②

2020年04月09日 23:18コロナ・感染症全体に公開

4月9日（木）読書ノート:「ウイルス・ルネッサンス　ウイルスの知られざる新世界」ウイルスとヒトと生命進化②

先に知人から教えていただいたヒトの胎盤とウイルスとの関係など、ウイルスと生命進化の関係について、わかりやすく書かれた本を長期閉鎖寸前の区立図書館で見つけた。
「ウイルス・ルネッサンス　ウイルスの知られざる新世界」山内一也　東京化学同人　科学のとびら、2017
です。この本では、動物ウイルス、植物ウイルス、古細菌ウイルス、ヒト・ウイルスなどウイルスに関する基礎的解説やエマージング・ウイルス（新たな感染症を引き起こすような変異を繰り返す新たに出現するウイルス）や（人間の目から見て）善玉ウイルス、ヒト内在性レトロウイルス、ウイルスを利用する現代医学などについて、わかりやすく書かれています。
　榎本様指摘の妊娠・胎盤との関係については、
「ヒト内在性レトロウイルス＝HERV」として
① 妊娠を維持するHERV-W, HERV-FRD=3000万年前ころ、霊長類に感染し霊長類のゲノムに組み込まれたウイルスで、母体の中で父由来の遺伝形質を母体が攻撃しないように守る「合胞体栄養膜細胞」を生み出す原動力になっている。
② 初期胚の多能性を支えるHERV-H：ヒトの受精卵が細胞分裂を繰り返し、必要な体細胞を形成していくために働くHERV-Hは、霊長類のゲノムに2500～5000万年前に組み込まれたレトロウイルス起源のもの。
③ 初期胚をウイルスから守るHERV-K：初期胚発生の際、HERV-Kの転写が八細胞期頃から始まり、胚盤胞上層形成まで続き、HERV-Kのenv遺伝子の働きで抗ウイルス物質のインターフェロン産出を誘導し、胚胞をウイルスから守る役割を果たしている。HERV-Kは3000万年前頃、ヒトとチンパンジーが分岐する以前に霊長類のゲノムに組み込まれた。
④ 胎盤形成を支えるレトロトランスポゾン：父由来のPEG１０と名付けられた遺伝子はそれが破壊されると胎盤が形成されない。PEGは胎盤を持たないカモノハシには存在せず、胎盤を持つワラビーゲノムには見られることから、レトロウイルスが真獣類と有袋類の共通祖先にレトロウイルスが感染した結果、染色体に組み込まれたという。

などなど、これらもレトロウイルス起源のゲノムの一部なのでしょう。このようにウイルスと生命進化の関係は生命進化の歴史とともに古く、長いもののようです。一読をお勧めします。

2020-04-09 4月9日（木）読書ノート:ウイ

2020-04-10 4月10日(金）庭の花

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