今年に入ってからというもの、ひたすらフリーに出かけてはルートを登り、リードは無難にRPを重ねてはいるものの、元々フリーを重点に置いて集中していた目標に11aのRPというものがあった。
それがようやく達成された。
11aというのは、クライミングを始めたばかりの僕にとって、人が登れるものとは思えなかったし、今まで外岩と言えば穂高や谷川の岩壁の�控薀襦璽箸�限界だった僕にとって、それは未知の領域だった。
そもそも僕はソロが中心で、落ちたら死ぬ。ビレイしてても落ちたら死ぬというつもりでこれまでやってきた。
不確かで先の見えないルートの中で全力を出すという恐怖は、多分普通の人よりもずっと強かったように思う。
ところがフリーに慣れてしまうとどうだろう。全力を絞り出さないと登れないルートばかりだ。落ちるか落ちないかギリギリのラインで指を曲げ、岩にひっかけて体を振り回す。落ちるのは当たり前。3点保持だなんて言葉はフリークライマーにとっては失笑のネタでしかないのだ。
いやいや、3点保持どころか4点のバランスを取り続ける事がいかに重要な事かを嫌という程思い知っているのだが……。
フリーもやり続けていると、壁の長さや角度、形状、岩質、何よりグレードという超親切な数字が、その道の距離を教えてくれる。それがわかるようになる勘が培われていく。
10aならこのきつい傾斜であれば、ここにガバがある……みたいな予想が効く様になる。
逆に傾斜が緩くてグレードが辛ければ、探してもいいホールドなんてあるわけがないのだ。
ルートを見上げてトポ図と見比べて、ボルトを数える……。
あの時の登った同じグレードのルートは同じような傾斜だったから……みたいな計算が始まる。
そして選択する。1ピン目をプリクリップするのか、それともマスターでグランドアップするのか、トップロープを張ってホールドを確認するか、懸垂で降りてきてホールドだけ確認しつつヌンチャクをかけるのか、youtubeで動画を見てムーブを確認する……。
より安全に、最短でのRPする為に計算する。
他の人が登っている所なんて見れたら最高だ。動画よりも核心がよくわかる。
そんな風に狡くなってくる。
あぁ、僕は求めた11aをオンサイトするクライマーとはこういう事だったのか。
12をトライするクライマーとはこうだったのか。
自慢する為にグレード更新を目指すだけの底の浅いクライマーだったのか。
成果にこだわって自分が登れる得意なルートだけ触っていればいいのか？
僕は今、新品のトレッキングシューズを履いて日原行きのバスの中で不安げにザックを抱えているあの時以上にクライマーなのだろうか？
「クライミングは上手くなった。でも“フリー”はどこに行っちまったんだい？」
※ガメラさんの言葉なんだけどカッコイイよね
まさに名言ですね。ディランが歌っていそう。
もっと自由に上手くなりたいものです。
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