今宵は在庫してあった「へしこ」である。若狭名物の鯖のへしこ漬けってやつだ。
これは京都の最北、船屋で有名な伊根町の道の駅で仕入れたもの。
ノルウェー産の大振りな鯖の半身を大量の塩でまぶし、糠に一年程漬けてある。国産の物より身の締り具合など、漬けるには向いているそうだ。
半身で800円くらいだったかな。買うときは高いと思ったが、伊根にツーリングで立ち寄った時に買ってから、もう三ヶ月も持っている。それなら安いか。
時々、無性に食べたくなるのである。試しに買ったとき切りたてをそのまま口にしてみたが、塩っ辛くてとても食べられたものではなかった。そう、これは刺身やキズシでは無いのだ。
冷蔵庫でカチカチになったやつを(冷凍ではない)、二切れ短冊に切る。研ぎすませた包丁でないと、とても切れない。買ったばかりのやつは周りに付いている糠もフライパンで炒ると、昼飯に丁度良いふりかけに変身したりするのだが、すでに乾燥して劣化が始まっているのでこそぎ取る。
オーブントースターで三分程軽くあぶったら、炊きたての白飯の上へ寝そべってもらおう。米のしとねに寝転んでどんな夢を見ているかな、サバくん。切り身やけど。
すぐに沸騰させたごく薄めの出汁をへしこを中心にかけてゆく。関西風うどんの四倍くらいの薄さでよいだろうか。それをへしこに降り注ぐ。さっきまで灼熱の電気に焼かれていたのが、今度は熱湯地獄だ。すまんのう、サバよ。
焼き切れなかった皮が、出汁にさらされかるく反り上がったら完成。箸で身をほぐし、いただく。上品さは不要。ただかきこむ。
しばし無言。
そう、絶品に言葉等いらないのだ。と言っても一人だから当たり前だが。これをかき込むと、なんとか茶漬けなど所詮インスタントなのだな、と思ってしまう。しかし、あの軽量かつ合理的なパッケージは山屋に取って捨て難い魅力があるのだが。
だが、ここは下界。たった二切れと思う無かれ。この世の塩分総てをかき集めたのではないかと錯覚する程しょっぱいので、これが適量。その塩味が薄い出汁に程よく溶かされ、きらびやかな米粒達に均等にまとわりつく。出汁の表面には、へしこから滲み出た脂がクルクルとフィギュアスケートのごとく踊っている。
ほぐれた身とともに口に滑り込んで来た小骨を舌で器用に取り分ける。本来口に入ると存在を否定したくなるその骨さえ、今は気にならない。ズルズルっと、出汁を飲む。そして、贅沢にほぐした身だけをひとつまみ奥歯で噛み締めたあと、上選の枡酒を口に含む。他に何がいるだろう。
オレはいま、世界でいちばん幸せなのではないだろうか。
今宵も我がホームバーはマスター独りで更けてゆく。
おはようございます。サバ街道走破の時に途中で買いました。買ってすぐに私も半分たべましたが辛いですね。冷蔵庫にある残りを食べてみたくなりました。
maron9393さん、こんにちは。コメントありがとうございます。
あのしょっぱさは、熱中症予防によいですね(^^)
しかし、頻繁に食べると塩分摂り過ぎですな。
焼いてアテにしてもよいのですが、やはりへしこ茶漬にしたほうが数倍美味いと思います。
もしした事が無かったら、麺つゆでもイケるのでお試しください。ポイントは、出汁を薄めにすることです。いわゆるだしは、サバからでますから。
sekitoriさんこんばんは。
私にとってヘシコは酒の肴、塩辛く噛み応えのあるスルメのような位置付けとでも申しましょうか…好物ではありますが、塩分の懸念から積極的にはどうも。。ちなみに若干癖の強い?イワシのへしこもそそられます
一昨年の冬、約30年振り!に福井(小浜)で一泊旅行をした際、サバ加工品の大半は若狭産ではないとの現実を知り、ショックでした
…味は十分満足したんですけど複雑な心境です
inakabusさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
サバシリーズを終え、今日からカレー街道に突入しました。多分、一日三食×四日くらいカレー漬けです^^;
本文にも書きましたが、土産で売られているへしこなどはノルウェー産が大半のようですね。おばちゃん曰く、こっちのほうが漬けたら美味いとの事ですが、セールストークかもしれません。
小浜や舞鶴では、サバの浜焼きを売っていますよね、太くて豪快なやつ。あれの地産の奴は、やっぱりうまいですね。あ、またサバに戻ってる^^;;
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