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しかし、山にカメラを持っていくようになったのは、大学生になってからである。初めは自分にとって挑戦的な山行の記録を残したいという思いからだったが、次第に日の出、入日が一瞬見せる神秘的な景色や雪がひかり輝く山々を撮るのに魅力を感じるようになった。
初めてのカメラは、父親が家族写真を撮っていた35�个両�型カメラだった。しかし、少しばかり知識が増えてくると、ニコンのカメラが欲しくなった。何といってもレンズがよいと評判だったのだ。そこで手に入れたのが、一眼レフカメラでも、ニコンFマウント廉価版のニコマート。それを中古で買った。ニコンFは中古であってもとても買えなかったからだ。
夕焼けの朝焼けの空を撮るようになって、自然とカラーフィルムを使う機会が増えていった。最初は、ネガフィルムを使っていたが、山仲間から色彩の再現性はポジのフィルムが断然優れているという知識を得てからは、リバーサルのフィルムを使うようになった。当時、さくらや富士といった国内メーカーのフィルムもあったが、風景写真となるとアメリカのコダック社のフィルム（商品名エクタクローム）の色彩再現性には到底太刀打ちできない。問題は、値段の高さである。
この辺りは、総合大学の強み。理系の学生は普段から実験結果の写真などを暗室で焼き伸ばしているから、彼らに教えを乞えばよいのである。彼らは、大規模なフィールドワークに出る時など、長尺のフィルムを買ってきて使い終わったフィルムケースに小分けして経費を節約していたのだった。実際、街のカメラ屋でも、長尺のものを切って使い廻しのフィルムケースに入れて販売しているところがあった。これは大助かりであった。
また、オレンジフィルターをつけて赤外線フィルムを使うと、コントラストの強い新感覚の山岳写真が撮れるという新知識を得て、挑戦してみたこともあった。
もちろん、遠くの山並みを撮ろうとすれば、望遠レンズが必要だ。そちらは、135�个遼庄鵐譽鵐困鬚海譴泙臣羝鼎杷磴ぢ�した。冬山に持っていくとなると、それなりの重量をとってしまうので勘弁願いたいところだが、写真熱の方が勝って、何とか持って行ったものだ。
本棚に昭和４７年（1972年）に買った「山岳写真入門」（白籏史朗著）がある。当時、白籏史朗氏の南アルプスの写真集には、大きな刺激を受けたことも懐かしい思い出だ。この頃がいい写真を撮るために、一番労を惜しまなかった頃だったかもしれない。
就職して数年がたち、満を持して買ったのがニコンF３である。発売と同時ぐらいに買った。F１桁として初めて電子制御式シャッター・絞り優先AEを搭載していた。
しかし、だんだん年齢を重ねると、山に行く回数もひどく減り、重いカメラを担いで山に行こうなどという情熱も気力もなくなってくる。結局、F３が活躍したのは、山というより、異国の風景・日常を撮りまくった中国での語学留学の時代だった。
蛇足かもしれないが、その後のカメラ遍歴を、スケッチしておこう。
これからはカートリッジフィルム（APS）の時代だとの触れ込みで買ったのが、「キャノンのIXY320」である。インデックス写真付きで、撮影日時などの情報も保存できる画期的フィルムということだったが、10年もしないうちにデジタルカメラにすっかり置き換わってしまった。私がAPSフィルムを使用した期間は、1996年から2002年までの数年だけ。カメラは、すっかり無用の長物になってしまった。しかも、デジタル化しようにも、以前はニコンが個人用の専用スキャナーを販売していたが、製造中止して久しい。今や、デジタル化するには専門業者に依頼せざるをえないという、負の遺産となってしまった。
初めてのデジカメは、リコー製。2002年に四国愛媛に単身生活をした時に買った。日帰りの山登りには、ハンディーさが何よりだと、以後、デジカメはコンパクトデジタルカメラで通している。単身赴任だと、休日に家族サービスに充てる時間は必要ないので、暇を見つけては一通り主だった四国の山を登った。下山すると、印象に残った山の風物を短歌に詠んで写真と一緒に印刷して、「デジタン」と称して留守家族あてに送っていた。この時の思い出は、ヤマレコ日記に「短歌でつづる四国の山」として、16編ほどにまとめている。このカメラも、画面にからすのような灰色の影が写り込むようになって、寿命と悟った。
2005年の秋の発売と同時に買ったのが、キャノンの「Power Shot S80」である。800万画素だが、レンズは35�丱侫�ルム換算で28ー100mm、デジタルズームで40倍と、使いやすいものだった。これも10年弱使って、買い替えた。後継機は、キャノンの「SX700HS」である。1610万画素、光学30倍ズームレンズを搭載した厚さ約34.8mmのスリムボディーで、デジタルズームとして60倍という触れ込みだった。遠くの景色をとるのはこれで十分だが、2018年からヤマレコユーザーになってみると、四季の草花を楽しんでいるレコが結構あることに気づいた。これも、山の楽しみ方の一つであると知った。
しかし、いざ丹沢にハナネコノメの花を撮りにでかけると、想像よりかなり小さい花だった。こうなると接写機能のあるカメラが断然有利である。そこで、今年の2月に思い切って買ったのが、オリンパスの「Tough-6」。おかげで、近頃の山行では、山の花を撮る機会が多くなってペースが上がらないという贅沢な悩みの種ができてしまった。
山でのカメラの付き合い方も、年を重ねるごとに変わってくるのも、思えば面白いものである。
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