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さて、「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」である。これから読まれる方も多いだろうから慎重に書こう。まずは奇妙なタイトルについて。Colorless Tsukuru and HisYears of Pilgrimage と表紙に小さく英訳されている。日本語タイトルよりはるかにおさまりがよく、しっくりくる。春樹はこの小説のタイトルを最初に英語で書いたと思う。
自分の過去の大きな謎を探る本筋に、様々なサブモチーフが次々と現れ、消え、また浮上しつながっていく。春樹らしいストーリー展開である。主人公はシンプルな生活のディテールを持つ男だ。すっきりと分かりやすく、思いがけない比喩と時々でてくる寓話が、静かで悲しいストーリーを膨らませている。春樹が好きな人なら、この春樹節はやはり魅力的だし、嫌いならとことん鼻につくのだと思う。
結末は完結しない。結末どころか、ジャズピアニストも指の話も、あの事件の真相もメインの筋の結末も、何一つ完結していない。本当に春樹的な作品である。でも私はこれを許してしまう。この話に続編を期待してはいけない。これは終わらないままでもいいのだし、これ以上書かれるべきではないと思う。
春樹の小説によく出てくる、サブモチーフとなる幾つかの寓話が好きだ。カート・ボネガットjrやサリンジャーの系譜の作家だと思う。決して日本文学の正嫡ではない。だから村上春樹がノーベル賞をとっても驚かないし、とらなくてもそれでよいと思う。
僕の手元にも金曜日には届いていましたが、まだ読んでいません。
読みかけの本が思いがけず面白くて、そちらを優先しているのです。
アマゾンのレヴューでは評価が見事にばらけていて興味深いなと思っていたところでした。
やはり好きな人は好きだし、わからない人はとことんわからないままの物語なのかなと。
そういう傾向は村上春樹のどの作品にも共通する特徴ですよね。
たのしみたのしみ
村上春樹は、一冊ずつの本として読むより、全部つながった巨大な物語世界の一つとして読むといいと思います。
心を病んだ人間と、極限の優しさと、正当だけどちょっと奇妙な論理と、美しいまでに正確な生活のディテールと、こうしたものを受け入れられる人が読めばいいと思います。デビュー作以来ずっと読んできて、時々嫌いになったりしたが、お互い年をとったので、なんとなく和解したみたいな作家が彼です
面白いかどうか、とにかく一気に読み切れるよ
kiyoshi さんへ
早速の読後日記のUPありがとうございます。
結末は完結しない
結末どころか、何一つ完結していない。
・・・これがモヤモヤしてずーっと考えてしまうのですよ
でも読んでみたいですね〜
職場のデスクにわざわざ届けてくださるなんて、素晴らしいですね
ミステリーじゃないから大団円という訳にはいかないのね
私はストーリよりも、登場人物たちが語る、風変わりな論理(理屈)とか、主人公の日々のルーティーンの颯爽ぶりとか、そういう細かいディテールが結構好き。
根無し草みたいな、リアリティはないのに、際立つキャラとかね。あとはところどころに散りばめられた、本筋と関係の無いお話、意味がありそうでなさそうな寓話群が、頭の中にグルグルしてくるんです。
これが春樹文学の楽しみの一つですよ
男女のことは…読んでみてくだされ
きよしさん
3年前の図書館トークはもう無いのか〜。
うっかり予約を忘れていましたが、甲府の図書館は
たったの5人待ちでした。3か月。たくさん仕入れたのかな?青森で届いたのは半年後でした・・・。カフカは名古屋、スプートニクは江戸、ねじまきは長野・・・と各図書館で借りてきました。転勤サイクルと同じじゃん!
yoneyamaさんは、三ヶ月待つんですか
でも急いで読む、という感じの本ではないかな。じっくり待ってもいいというか、春樹らしい本だと思います。
昨日、京都での講演のニュース、全国トップでやってましたね。ちょっと間がることがありました。まとまったら日記にアップしますので、お暇な時に
「多崎つくる」と一緒に「海賊と呼ばれた男」も予約したら、連休前にもう届いて(これも私が最初)、間もなく読み終わりそう。こっちも面白い本でした!
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