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3000ｍ級高山への登山を始めたばかりの頃のことです。
知識も経験も技術も無かった僕が9月下旬に妻と二人で後立山連峰の遠見尾根〜五竜岳〜唐松岳〜八方尾根下山というコースを2泊3日で計画しました。
五竜テレキャビンに８時前に乗り、地蔵の頭を９時前頃に出発しました。天気はやや霧雨っぽい曇りです。テレキャビンの係のおじさんに、「２泊じゃ余裕だね」と声をかけられ、そのつもりで歩いていました。２日間テン泊予定でしたので荷物は30�埃紂�それでも体力には自信がありました。(つもりでした)
山の歩き方など知らない僕は、到着時間を気にしながら歩きます。小遠見の辺りから霧が小雨に、やがて雪が混じり始めます。中遠見〜大遠見の辺りではすっかり雪。９月23日、後で聞いたところによると、この日は富士山も初冠雪だったようです。ピクピクと足の痙攣が始まりました。大遠見からはそれをだましだまし歩きます。まだ先は長い。時々、足が完全に突っ張って、動けなくなるので30分〜40分ぐらい休んで足をほぐします。そんなことを繰り返していると、どんどん時間が過ぎていきます。痙攣した足を引きずりながら、気持ちだけが焦ります。もしかしたら、陽のあるうちに五竜のテン場に着けないかも知れない。そんな不安がよぎり、ハイマツの下でツエルトを被ってビバークも考えました。冬山想定はしていなかったので、すっかり荷物は夏山仕様。といったって、その頃は冬山の知識など皆無。
多分、僕一人だったらビバークしたかも知れません。でも妻が一緒。一晩すごしたら凍死なんてことも頭をよぎりました。死なせるわけにはいきません。何としても山荘までたどり着かなければという一心でした。幸い、僕と違って妻は元気でした。
雪は止むどころか、しっかりと降り始めます。地面にはまだ積もらないものの、ハイマツの枝は白くなり始めました。
秋の日はつるべ落とし。西遠見の手前でこれは完全に日没までにはたどり着けないと確信しました。なおさら、気が焦り、足を必死に動かします。
白岳への登りに差しかかる頃に日が落ち、残照の中をヘッドライトを付けて登ります。山頂ではすっかり闇。相変わらず雪は降っています。山頂から下り始めると下に五竜山荘の灯りが見えました。「あそこまで」と思いながらヘッドライトの灯りを頼りに下ります。(明日の日記につづく)
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