http://www.modbee.com/news/article138573098.html
クライミングをやっている人でも若い人は知らないかもしれません。米国のクライマーで1960年代から1970年代にヨセミテで多くの初登攀を行い、現在のフリークライミングの基礎となっているクリーンクライミングを提唱した人です。
クライミングの解説本は「クリーン・クライミング入門」以外にも色々とあったけど、ユーモアのある挿し絵で判り易く説明されており、従来使わなかったカムやナッツを使ってのランニングビレーや、スリングでの簡易ハーネスとかが斬新に思えたものです。
その原書が画像1(左)の「Basic Rockcraft」と「Advance Rockcraft」です。両方とも100ページに満たない薄い本なので「クリーン・クライミング入門」は一冊にまとめられていました。
現在のクライミングテクニックや道具は進歩しているので内容的に少し古い感じですが、基本的なことは変わっていないので今でも十分に役立ちます。
この本を読んだ当時はカムやナッツだけを支点とするのは、脆い滝谷や、クラックの少ない屏風岩のような所では無理があると思っていました。特に屏風岩などは、連打したボルトにアブミを架け替えて登るルートが多く、あのような壁を登るにはボルトを打つしかないと思われ、ボルト工作にドリルを使ってクリーンクライミング派から批判されたウォレン・ハーディング氏の方に共感を覚えました。
ちなみにウォレン・ハーディングと言っても第29代アメリカ大統領ではありません。ヨセミテのエル・キャピタン・ノーズを初登攀した人物で「墜落のしかた教えます」というクライミングの本を出しています。その本の中で、ボルトを打つ穴をあけるのは時間がかかるから、浅くあけた穴にフックの先を細くした物を軽く打ち込んで、それにアブミを掛けて登るというのがあって、その大胆な発想に驚きました。
長時間に渡る作業を不安定な所で行うという労力と危険性を別にすると、理屈から言えばボルトを連打すればどのような壁も登れてしまいます。それからすれば、カムやナッツだけを使って、オーバーハングもフリーで越えるクライミングスタイルはクリーンで美しいと思います。しかし、ハーケンやボルトを駆使しても巨大な岩壁に真っ直ぐにルートを引くというのも、勇壮で豪快だと思うようなところもあるのです。それは既に時代錯誤的な登攀である事は分かっているのですけどね。
久々に取り出したこの本で懐かしいと思ったのが、画像2(中)のクライマーが履いているクライミングシューズ。
一見、普通の登山靴のようですが、ハイカットでありながら柔軟性があり、靴底も適度に柔らかく、登山靴よりフリクションを効かせた登り方が容易でした。この靴は仲間内ではロビンスシューズと呼んでいましたが、一般的な呼び名ではなかったかも知れません。その後、クライミングシューズは、よりフリクションが効くフラットソールになり、ローカットが主流の現在のクライミングシューズとなりました。
個人的には、雪渓を歩く事も多いアルプスの岩場ではソールにブロックパターンがあった方が良いと思いますが、岩だけを考えるならフラットソールに軍配が上がります。ただ、ワイドクラックに足を突っ込ん登るような所では、踝保護の為に柔軟なハイカットの靴が好ましいと考えるのです。
画像3(右)は、ロビンスシューズの後に履いていた、35年位前のクライミングシューズです。今の靴と比べると、ソールがやや厚めではありますが、長時間履いていても足裏が痛くならないので気に入ってました。まだ履けない事もないけど、劣化が著しいから今は別の靴を履いています。
今の靴を買う時に、この手の物を探したのですがローカットでソールの薄いものしかありませんでした。最近のアクロバティックな動きで極限を目指すようなクライミングでは、足の保護より自由度の方が優先なのでしょう。
まあ、ゲレンデで余興程度のクライミングしかやらない私にとっては、どのような靴でも遊べれば”それで良し”ではあります。
こんばんは
何かの巡りあわせでしょうか。
数十年前に買った訳書を最近本棚から取り出して毎日少しずつ読んでいるところです。当時はクライミングをするところまでいかなくて、きちんと読めませんでした。クライミングを始めた現在は初心者なりに本の内容が理解できるのでとてもおもしろいです。
いい記事をありがとうございました。
shiremonoさん、おはようございます。
こういう巡りあわせはロイヤル・ロビンスのお導きなのかも知れません。
クリーン・クライミング入門は古い本だけど、今でも十分に役立ちますよね。
書いてあることが全て理解できて実践できれば(応用が難しい事もあるけど)独り立ちしたクライマーと言えるかと思っています。
なんか、上から目線でエラそうですね、失礼しました
コメントありがとうございました。
guchiさん、こんにちは!
メチャメチャ、マニアックな日記でしたね〜 。 引用のサイト読みましたよ。へえ〜!っていう感じでマジに面白かったです。
私が少し岩登りをかじった頃は、クライマーの関心はヨーロッパアルプスでしたから、三大北壁やドロミテの登攀の書籍は懸命に読みました。ハラーやヘックマイアーから、ブールやレビュファ、それにヒーベラーやフレンド、日本人では芳野満彦とか高田光政とか(古い! )。まだまだヨセミテまで話題には上りませんでしたね〜。(なんせ衝立初登攀からまだ10年の世界でしたから )
そんなわけでロビンス氏のことは全然知りませんでしたけど、登攀記録を見ると凄いんですね。 彼の奥さんも一緒に登っているのは驚きでした。
guchiさんのクライミングに関する見識の広さも知っちゃいましたよ。
f15eagleさん、こんにちは。
私が岩登りを始めた頃も、主流はヨーロッパでした。
私のお師匠さんはレビュファのファンだったし、長谷川恒夫が三大北壁の冬季単独をやったりしていたので、私自身もアルプスの壁にあこがれを持っていました。
ちょうどその頃でしょうか、アメリカのカリフォルニアに凄い岩壁があって、そこが新しいスタイルのクライミングで登られているという話が注目を集めはじめたのは。
ヨーロッパの壁は雪と氷で、ヒマラヤに通じるものがあるけど、ヨセミテの壁は岩登りだけに特化していると感じました。
それで、ラグビーやサッカーと違って、システマチックに分業されたアメリカンフットボールが主流になる国らしい、なんて思ったものです。
ハラーやヘックマイアー、ブールの記録は私も読みました。
「山靴の音」は無くなてしまったけど、「登頂あと三〇〇」は持ってますよ。
お久しぶりです。
3〜4年前、ハイカットのクライミングシューズを探していて、ファイブテン(キャラバンだったかも)でありました。商品名はグランドストーン?しかし、その時点で既に廃番扱いで在庫限りでした。
池袋の秀山荘に在庫があって見に行きましたが、サイズが無く、諦めてファイブテンのスパイアを購入しました。その直後、上の子の妊娠が発覚してお蔵入りになったのですが(笑)。
男性サイズは数多く残ってたと思います。もしかしたら、まだあるかもです。
matsukoさん、ジュニア2の発育は順調ですか。
ハイカットのクライミングシューズは絶滅したようですね。
3、4年前で、廃番の在庫限りだったら、流石にもう残っていないでしょうね。
私は踝の骨が出っ張っていて傷つけやすいから、ハイカットがベストなのですけ、諦めるしかないようです。
それと、紐で締めるタイプの靴も少ないですよね。
去年、買いに行ったときも主流はベルクロのタイプで、紐のは2種類のみ、うち1つはサイズが合わないので、結局、私もスパイアになりました。
確かに紐靴が少ない!紐の方が融通がきくからいいのですが…。
ハイカットの紐靴をどこかのメーカーが復刻してくれれば、結構ニーズはありそうなんですが。
ベルクロタイプが多いのは、登攀力を重視して登る時に極限まで足を締め付けるから、休息やビレーのときにすぐに緩めたいというのが、理由であるような気がします。
時には長時間の行動を強いられることもあるので、締め付ける部位と度合いが加減できる紐靴の方が良いと思いますけどね。
ハイカット紐靴のニーズはあるでしょうけど、山道具も流行主体みたな所があるから、誰か著名なクライマーとかが言い出さないと復刻は難しいような気がします。
お久しぶりです。
そうそう、私が岩やめた頃から、クリーンクライミングになって、コップの掃除とかやっていましたね。
でも、いつの間にかクリーンどころか、アンカーだらけになっているではありませんか。フリークライミングは自然のままにということで始まったのに、今では、何でも構わずアンカー打たれています。壁屋と山屋の違いですかね。
去年、峠の大根おろしにアンカーが打たれましたが、クリーンクライミングなんて、過去のことです。
misuzuさん、お久しぶりです。
妙義周辺の藪岩で精力的にやっておられるレコは拝見してますよ。
コップの掃除とか、衝立の雲稜第一をフリー化してグリズリーとかやっていましたよね。
ただ、主流にならなかったのは、一般人にはハードルが高すぎるのではないかと思っています。だからアンカーが増えたのではないでしょうか。
あと、岩質の問題もあるから、理想通りには行かないのでしょう。
古い記憶しかないけど、大根おろしには危なっかしいハーケンが1,2本あっただけだったと思いました。あそこでリードしてアンカーを打つのはかなり難しいだろうから、上からザイルで降りてきて打ったのではないでしょうか。
ロイヤル・ロビンスも言っていますが、初登攀の時と同じ条件でやる事に意味があると思うので、難易度をさげるような事は、あまりやるべきではないと思います。
練習場だから、何をしても良いという訳ではないと思うのですけどね。
とは言え、あそこにピンがあるのは安全上の観点からは妥当であるとも思える面もあり、難しいところです。
何にしろ基本は、ハーケンやボルトは必要最低限で、でしょうね。
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