即興演奏で紡ぎ出される流麗なメロディーに、つい聴き惚れて陶酔してしまう。
そう言えば9年前の日記に山で聴く音楽に託けて、戦後昭和登山風俗の実情を有りの儘に書いた。
読んで腹を抱える人も居れば、眉を顰める人も多かったのではないだろうか。
その時、ペッパーの此の即興演奏の二曲名を日記のタイトルにした。
我が、思い入れの二曲なのである。
昭和50年頃の単独行時代に、10穴単音の小型ハーモニカを山中に持ち込んだことがあった。
よく知られたブルースを何曲か吹いてみたが、人跡のない大自然の山中では場違いに聴こえた。
ジャズ系、ブルース系の曲は、どれも場違いに聴こえる。
巷、それも夜の繁華街を連想する曲想だからだろうか?
山には山の曲か!〜と気付き、雪山讃歌と北帰行を吹いてみると雰囲気に合う。
他の「リリー・マルレーン」も、「ダニー ボーイ」も自然に溶け込むように響いていた。
ブルースは、紫煙の酒場や群衆の中に居て孤独を感じさせるが、大自然には似合わない。
知る曲も限られて直ぐに種が切れ、出任せにメロディーを紡ぐ出鱈目節を吹き鳴らして、暫し退屈を凌いだ記憶がある。
聴いている人が誰一人居ないとなると、大胆に出鱈目節を吹き鳴らせるものだ。
昭和60年頃、ブルース紛いの出任せ節が癖になり、吹き易いハーモニカに買い替えた。
同じ10穴単音だが、敢えてキーを変え品種グレードも少し上げ輸入品にした。
家人の留守を見計らい、窓を閉め切って出任せの「出鱈目ブルース」を飽きるほど吹いた時期がある。
1本駄目にして新調した位だから、よほど性に合っていたのだろう。
吹きながら頭に浮かぶのは、いつも「ブルース イン」「ブルース アウト」だった。
唯一本の単音楽器から紡ぎ出される即興メロディーは美しく、自分の出任せフレーズとは天地雲泥以上の違いがある。
極めて当然のことである。
近年、歳のせいか体調が悪く、肺活量が低下しハーモニカを鳴らすのが辛くなった。
もう4年以上も出任せの「出鱈目ブルース」を封印している。
ブルースらしいフレーズを綴ろうとすると、吹くと吸うのバランスが悪く、息が苦しいのだ。
吹くだけが発音のフルートも辛いが、吹く吸うのハーモニカも其れなりに辛い。
家人は「ピアノなら簡単に出任せ弾きができるのに〜」と云うが、私は自分が和音楽器に向かないことを承知している。
ピアノは譜面が頭の中に無ければ上手く弾けないし、有れば即興紛いの出任せ弾きにはならない。
要するに、不器用なのだ。ainakaren
*「ブルース イン」
*「ブルース アウト」
*関連 山日記「BLUES IN〜BLUES OUTの狭間 1」
https://www.yamareco.com/modules/diary/8042-detail-39933
山の写真を一枚追加しましたが、直接文面に関係のない、近年撮影の写真です。
「ブルース イン」のURLを探して追加しました。
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