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一つは薬師岳での13人遭難。
太郎小屋に降り立った朝日新聞社の記者本多勝一が「太郎小屋に人影なし」と伝えた
愛知大学山岳部の遭難です。
そしてもう一つが、本書が扱うリーダである野呂氏のみが生還し、部員10人が死亡した遭難です。
1959年を境に遭難に対する報道が厳しくなり始めた時期に当たります。
地元のルポライターが書き、地元の出版社が出版した力作です。
ここに来て語ることも、書くことも波紋を覚悟しての事でしょう。
著者川嶋氏は相当に感情を抑えて書かれたことが窺えます。
本書は表題の通り、野呂氏の生まれ育ったサハリンに始まり、
生還後のリハビリ、教職、セールスマン、会社経営の現在に至るまでを簡素に記述しています。
ハンディーキャップスキー協会や北海道盲導犬協会が推薦図書とするように十分な生を突き進まれていることが、理解できます。
ただ私はその野呂氏の生き方に感動するより、遭難死した10人はさることながら遺体発掘のために卒業を1年間延ばした佐々木典夫氏の生と死に強い衝撃を感じました。
勿論無二の親友であった野呂氏のそれは想像に容易いことです。
これを読者に発見させる川嶋氏は名ガイドといえるでしょう。
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