2012年7月9日から15日まで旭岳から十勝岳までかみさんと二人で歩きました。
前の年には知床岳でヒグマの怖さが身にしみ、今回も人間の腕の太さほどもあるうんちを跨ぎながらの山行でした。
いよいよ縦走も残すところ僅か。
濃霧の中オプタテシケ山を越えてべベツ岳の登りに入りました。
ゴアテックスの雨具を着ていましたが袖口から水分が侵入して脇のあたりまで冷たいです。
風速は10メートルを超え、瞬間的には20メートルはありそうです。
かみさんが遅れ気味なので時々振り返りながらの登高です。
十勝岳に近づいた証のように一面黒い砂礫が覆う広い斜面に所々に1〜2メートルほどの火山弾が突き刺さる吹き曝しです。
真正面から吹く風と雨を避けるようにまた、遅れ気味のかみさんを見やると何か慌てている。
左手のストックをあげ、私を指し「クマー、クマー!」と声を張り上げている。
ここにきてついに熊と遭遇かと「どこー?」と聞くが、私のすぐ後ろをストックで指し、「クマー、クマー。」
振り返り、進行方向を見るも熊を発見できない。
というか黒い火山弾が熊と同じくらいの大きさなので熊が動いてくれないと識別ができない。
「どこに居るんだ!」と叫んでもストックで私のすぐ後ろを指し「クマー」と叫ぶばかり。
こんな強風の中、風上から熊に来られては熊よけスプレーは使えない。
ストックで勝負か。
ああ、人生はこんな感じで終わってしまうのかと思った瞬間、バンという音とともに目前が真っ赤になった。
熊の右手で顔面を叩かれたのであろう。
真っ赤な影が左から右に流れていく。
かみさんを見ると物凄い勢いで斜面を右から左へ逃げていく。
まー仕方ないよなー。
相手が熊じゃ自分だけでも助かるために逃げるかみさんは正しいよなー。
まだ意識がある。
かみさんは赤く転がるものを先程のストックで刺したというか、抑え込んだ。なんだ。?
あなたのザックカバーが風で飛ばされそうになっているので「カバーカバー」と教えていたのに何を慌てていたのとかみさんはのたまう。
人生で最も恐怖したべベツ岳のクマでした。
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