弘前で親子二代にわたり医者であり現在函館在住81歳の弘前大学名誉教授が2007年に出版した本書です。著者は父親から高校生の時に第五聯隊の四肢を失った生還者に温泉で会った話など聞き育ち、医局に入局した後に生存者の治療に関する論文を見出したり、医療事故目撃して、事故を未然に防ぐためには真実を極めること、と本件に情熱を注いだようです。しかしながら矛先は当時の陸軍と著者から見て瑕疵のある他者が記した論文や著作に向かい、少々残念です。山屋としては「リーダーは何をしていたか」と「生還と遭難死者を分けたもの」が知りたかったのですが、それらについては「歩兵第五聯隊雪中行軍に関する衛生上の意見」と「歩兵第五聯隊雪中遭難に関する衛生調査報告書」の復刻を待つしかないようです。
”意見」には被服、装備、糧食、露営、雪中行軍、遭難時の全身変状、遭難隊に関する衛生上の観察、雪中体温、生存せし将校及び特務曹長の凍傷の比較的軽かりし理由。
また”報告書」には同等の内容以外にアイヌの服装携帯品起居が巻末に加わります。
遭難救助及び遺体回収に北海道茅部郡森村のアイヌ人弁開凧次郎一行の尽力があたのですね。
尚、著者の父親が高校生の時に温泉で出会った生還者とは後に小笠原孤酒が国立箱根療養所に通い聞取りをした小原忠三郎です。
さて次は「雪中行軍はなぜ失敗したか」川口泰英です。
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