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Yamareco

記録ID: 109000
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積雪期ピークハント/縦走
槍・穂高・乗鞍

乗鞍岳縦走(安房峠〜乗鞍岳〜野麦峠)[本州横断シリーズ])

1994年04月28日(木) 〜 1994年05月01日(日)
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Junjapa その他1人
GPS
80:00
距離
29.6km
登り
2,226m
下り
2,761m

コースタイム

04/28 小田原=安房峠
04/29 安房峠(1:50)安房山(3:00)十石山(1:50)硫黄岳コル手前TS
04/30 TS(0:50)硫黄岳(1:00)乗鞍スカイライン(1:10)肩ノ小屋(1:00)乗鞍岳剣が峰(0:50)高天原(1:40)2154m手前コルTS  
05/01 TS(1:00)2066.6m峰(1:50)戸蔵(とぞ)(1:40)野麦峠(1:15)川浦
天候 04/28 晴
04/29 快晴 風が出てくる
04/30 曇〜ガス 強風
05/01 小雨〜曇
アクセス
利用交通機関:
自家用車
04/28 神奈川県小田原市=籠坂峠=御坂峠=一宮御坂IC(中央高速)=松本IC=奈川渡=安房峠(車中泊)
コース状況/
危険箇所等
昨年のGWは悪天候と湿雪に悩まされながら安房峠〜焼岳〜上高地を縦走した。今回はこの北アルプスの空白地帯を南へ進むこととした。昨年の縦走の起点である安房峠から十石山をへて乗鞍岳にいたり、高天原を通って県境尾根を南下し野麦峠までを踏破することとした。乗鞍スカイラインが開通するまでは乗鞍岳にも立派な登山道があり豪快な縦走を楽しめたと思われるが、モータリゼーションの波はその古き良き縦走路を廃道としてしまった。無雪期は密やぶとなっている古道がこの残雪期は快適な尾根歩きを提供してくれた。

 4/28 安房峠へとクルマで向かう。今年は雪が少なく昨年、歩いて登った安房峠までクルマで行くことができた。雪面だったアカンダナ山の斜面も今年はササ原になっている。峠に到着すると安房峠の茶店の前にクルマを泊めると軽く一杯やって寝た。

 4/29 朝三時に外を見ると星空。天気は快晴。小屋の主が出てきたのでクルマの停車場所を聞いてそこに移動したのちアイゼンをつけて茶店の脇から登りはじめる。すぐ上の安房トンネル排気口の立派な工事現場まではトレースがあった。工事現場の右側からルンゼ状の急な雪面を木につかまりながら登り、一汗で尾根に乗った。尾根上はところどころにビニールテープがぶらさがっていて全くの廃道でもなさそうである。予想どおりヤブはほとんどなく雪も締まっていて快適だ。1900m地点で振り返ると昨年苦労して登った焼岳がまぶしい。やがて朝日のあたる稜線に出て安房山頂上についた。素晴らしい眺めである。大気が澄み、焼岳、穂高岳、霞沢岳など上高地方面がよく見渡せる。この角度から眺めるのは初めてである。見慣れたはずの山々の姿が実に新鮮だった。安房峠から十石尾根への下りは大雪原で歩行はどこでも自由。稜線を漫歩しながら2390mピーク手前のコルについた。空ま真っ青に晴れて風もなく暑いくらいだ。小休止しているとカモシカの子供がふぐ近くまで寄ってきてこちらを見ている。カメラで撮ろうとしたら警戒したのかブオーン!と一声、豚のように鳴いて逃げていった。
2390mの岩峰を越えるとあとは緩やかな登りである。やがて大雪原状の十石山頂上についた。きれいに整頓された避難小屋があり、このまま泊まっていきたい衝動にかられる。しかしまだ11時前であり泊まるには早すぎる。少し休んだのち先へ進むこととした。金山岩に向かうと少し風が出てきた。狭いナイフエッジの上を行く。今回の山行での唯一の危険場所だ。ザイルも持参したが使うほどでもない。見るとナイフエッジの雪の上にカモシカの足あとがある。さすがのカモシカもこの尾根はここを通るんだなぁと思うとほほえましい気分になった。カモシカの足あとを忠実にたどり無事に岩場を通り抜けられた。金山岩を過ぎると急に雪が少なくなりハイマツを漕ぎながら下る。13:20コルの一つ手前のコルに着き強くなってきた風を避けてテントを張る。「ビールが飲みたいなぁ」と云ったらH2O氏がおもむろに缶ビールをザックから出してきてくれて大喜び!早速乾杯して初日の疲れを癒したのである。

 4/30 明るくなってから出発した。風が非常に強くまっすぐに歩けない。強風のためか昔の夏道が露出している。歩きやすい雪面を求めながら登り硫黄岳頂上に立った。空を見るとレンズ雲が出ていて乗鞍岳が飲み込まれようとしている。振り返れば穂高は上半分がすでにガスの中だ。こりゃ天気が悪くなるぞ!風にあおられながら土俵ヶ原を登りつめガードレールをよっこいしょとまたぐと誰もいないスカイラインだ。雷鳥が飛び出してきて悪天を知らせてくれている。除雪された舗装道を進み人っ子ひとりいない畳平から再び雪の道を肩ノ小屋へ向かう。小屋の手前では林道がすっかり雪に埋まり大斜面となっていてやや緊張するがアイゼンをしっかりフラットフッティンして慎重にトラバースした。肩ノ小屋から強風とガスと中コンパスを見ながら剣ヶ峰に向かう。途中で七人組と単独行者とすれ違った。人がいるんだな〜!こんな天気でも!(笑)剣が峰に着いたが、ガスで展望は〇。あとは下り一方なので予定通り下ることとした。頂上から高天ヶ原への下りは急斜面である。地形図とニラメッコして大日岳とのコルから傾斜のゆるい沢状を下ることとした。コルはあたり一面の濃いガスと足元の残雪で白一色の世界。天地の境がわからず自分たちの体が宙に浮いたような不思議な感覚だ。目の前の斜面がどう傾斜しているのかもわからず、数歩ふたりが離れたらもう相手が見えない状況だ。慌てて持参したザイルでコンテで行くこととした。コンパスと高度計を見ながら左へトラバース気味に一歩一歩白い世界を進む。やがてガスがさっと晴れて高天原とのコル方面に自分たちが進んでいることがわかってほっとした。斜面はザイルを結ぶほどの斜面ではなかった。高天ヶ原の頂きは平坦で円くそこで直角に右に曲がる。相変わらず風は強い。地形図に従い前川の支流に落ち込む崩壊壁に沿って下る。ハイマツを避けながら調子よく下っていくうちにいつの間にか右手の斜面にそれてしまった。先は急斜面になっていて下れそうにない。結局ハイマツ帯をこいでトラバース、崩壊壁きわまで戻るハメになった。戻ったものの相変わらず見通しが悪く県境尾根の方向がよくわからない。この地点からコルまで急激に落ち込んでおり夏道が露出していないか探しに出かける。うろうろしているうちにハイマツのわずかな切り開きが確認できて嬉しくなった。道があったので、H2O氏のところに戻ってみると道も探さずにテントを持ち出して幕営の準備をしている。こらぁ!とは云わなかったが再度パッキングをしてもらって温かい場所で眠ることとする。ハイマツ下の細々としたフミアトをたどり疎林の斜面を尻セードしながら下る。夕闇にでかい山のシルエット・・・H2O氏が「富士山がきれいだなぁ!」と云うので「え?ここから富士山は見えないよ木曽御嶽ですよ!」。一瞬疲れから自分を失ったかとあせった一瞬だった(笑)。無事尾根に乗り下りきった静かなコルの中で一夜の夢を結んだ。

 05/01 朝はガス。小雨が降っている。雪が腐って歩きにくいのでワカンを着けて快調に野麦峠に向かう。視界が悪く小広い尾根を地形図・磁石・高度計で確認しながら進む。木に打ち付けられた「戸蔵(とぞ)へ」の』ふるい小さな指導標を見つけてほっとした。2066.6mピークを越えた先で尾根の左側山腹を歩くようにして山腹から張り出す尾根を探していたが予定になっても現われない。とうとう平坦な地形となり目の前には沢が現われた。どうもおかしい! やばい! 「遭難」の2文字が頭に浮かぶ。これまでやってこれた自信が災いした。自分たちは合っている!このクソ高度計が違うのだ! そのようにも思った。完全な思い込みだった。振り向いて歩いてきた尾根の方向を確認すると北西のはずが北北東を示している。やっぱりおかしい! 明らかに迷った。誰もいない樹林の中でもルートファインディングには細心の注意を払ってきたのに・・・。迷ったら戻れの鉄則どおり戻ることとした。結局1066.6mから南西に張り出している野麦東尾根上をそのまま南下してきており、正しい道であるその尾根の山腹から東に張り出している尾根を見過ごしていたのだ。登り返しは肉体的にも精神的にも辛かったが、暫く登って頭上の薄日の中に横行する小尾根が浮かび上がってきたときには心底嬉しかった。尾根に乗ってすぐが番所越(ばんどころごえ)のはずだが積雪のせいなのか、すでに夏道が消え去ったのかわからないが判然としなかった。むしろ・1874を過ぎた先の戸蔵との最低鞍部にはフミアトが南北に横切っていることが確認できた。この場所が本当の番所越(峠)かも?って思った。戸蔵(とぞ)をすぎるあたりは雪面がまばらになり背たけ以上のひどいササヤブとなった。それをワカンで踏み分けながら忠実に尾根上をたどり・1793の先では赤いポールと御料局の三角点を確認できた。最後は明瞭な道となりやがて観光客でにぎやかな野麦峠に出たのだった。

■参考資料 遊歩百山12春のコース集100頁「安房峠から乗鞍岳・野麦峠」(森林書房1995年6月10日刊)
安房山への登りで見る焼岳と穂高連峰。焼岳の左に顔をのぞかせているのは笠だろうか。
安房山への登りで見る焼岳と穂高連峰。焼岳の左に顔をのぞかせているのは笠だろうか。
安房山頂上付近から
安房山頂上付近から
安房山への登りから振り返る焼けと穂高。
安房山への登りから振り返る焼けと穂高。
不明だが、安房山の登りから見た乗鞍岳方面だろうか。
不明だが、安房山の登りから見た乗鞍岳方面だろうか。
安房山周辺。
安房山の頂上でH2O氏。焼岳をバックに。
2006年09月18日 09:56撮影
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9/18 9:56
安房山の頂上でH2O氏。焼岳をバックに。
安房山周辺から乗鞍方面を望む。目の前には十石山が立ちはだかっていた。
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安房山周辺から乗鞍方面を望む。目の前には十石山が立ちはだかっていた。
十石山の平らな頂上部。乗鞍のピークが望める。
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十石山の平らな頂上部。乗鞍のピークが望める。
十石山の頂上平原。気持ちがいい。
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十石山の頂上平原。気持ちがいい。
疲れた足取りで下る。もう少しでテン場だ。
疲れた足取りで下る。もう少しでテン場だ。
十石山の先の細いリッジには、カモシカの足跡があった。それに導かれコルの少し手前の尾根上に今夜の夢を結ぶ。もう少し先の最低鞍部まで行ったら良いテントサイトがあった。
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十石山の先の細いリッジには、カモシカの足跡があった。それに導かれコルの少し手前の尾根上に今夜の夢を結ぶ。もう少し先の最低鞍部まで行ったら良いテントサイトがあった。
翌日は稜線どおしに乗鞍のピークを超える。風は強い。
翌日は稜線どおしに乗鞍のピークを超える。風は強い。
右の十石山の平坦なピークからずっと尾根をたどってきた。高度もあがり、焼岳も左下にわだかまっている。穂高の右は霞沢岳だろうか。穂高の左は遠く槍か。一番左は笠なのだろう。
右の十石山の平坦なピークからずっと尾根をたどってきた。高度もあがり、焼岳も左下にわだかまっている。穂高の右は霞沢岳だろうか。穂高の左は遠く槍か。一番左は笠なのだろう。
乗鞍岳の火山地形。
乗鞍岳の火山地形。
頂上部には誰もいない。凍てついた世界。池も雪に閉ざされている。
頂上部には誰もいない。凍てついた世界。池も雪に閉ざされている。
乗鞍頂上付近の火山地形を行く私。あまり天気は良くなかった。
2006年09月18日 10:41撮影
9/18 10:41
乗鞍頂上付近の火山地形を行く私。あまり天気は良くなかった。

感想

天気はあまりよくなかったが、楽しい山だった。また、本州横断プランとして親不知から野麦峠まで蜿蜒と繋げてこれたことが何よりも満足だった。同好の士にして同行の師でもあるH2O氏にも感謝したい。

以下が注意ポイントかと思うので参考にしてください。とは云うものの誰か行く人いるのかなぁ?(笑)

・残雪期に登るのであればピッケル・アイゼン・ワカン・コンパス・高度計・地形図は必携だがGarminなどGPSがあればなお安心。
・自家用車の場合は除雪されていれば、安房峠での駐車は可能。(当時は安房トンネルがまだ開通しておらず山越えがメインルートだったが、いまはかなり通行量も減ったと思われる)
・金山岩付近は切り立っている。強風時は要注意。
・高天原から暫く下った先は尾根がなく丸い地形であるためにフミアトが見つからないのであれば、よく方向を定めで下りること。
・2066.6mピークから番所越までは地形図を見ながら稜線上を左山腹にからみながら進めば我々のように道を失うこともない。
・野麦峠は人くさい。
・川浦への下りにはフキノトウを摘みながら下った。

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