美濃禅定道〜平瀬道☆錦繍の白山と奇跡の邂逅
- GPS
- 14:14
- 距離
- 33.1km
- 登り
- 2,950m
- 下り
- 2,439m
コースタイム
- 山行
- 4:20
- 休憩
- 0:14
- 合計
- 4:34
- 山行
- 7:23
- 休憩
- 2:15
- 合計
- 9:38
天候 | 二日間とも晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
良好に整備された一般登山道 |
その他周辺情報 | 下山後は平瀬のしらみず温泉 https://www.hidahakusan.jp/spa/ |
写真
感想
この時期の白山は紅葉が紅葉が美しいことが期待されるが、金沢からの白山に向かうバすは既に終了し、松任から白山の市ノ瀬に入る登山バスは運行は今週末限りだ。白山を訪れる機会があれば、今年は久しぶりに再開通した釈迦新道を歩いてみたいと思っていた。前々から13日の金曜日に休みを取得して連休を予定していたのだが、週末の白山は混雑が予想されるので、金曜日から土曜日にかけての泊まりがけ山行を計画する。
この時期は平日は松任からのバスは早朝の5時出発であり、松任に前泊しない限り乗車することが出来ない。そこで初日は美濃白鳥から石徹白からバスに乗り、三ノ峰にアプローチする方法を考える。この石徹白から三ノ峰にアプローチする方法は3年前、北縦走路を辿って白川郷まで縦走した時にも辿ったことがある。この時は石徹白の白山中居神社にお参りしたせいもあるが、13時20分に出発し、およそ5時間をかけて三ノ峰に到着している。今の季節は日が短いので18時前には到着したいところだが、その時よりは荷物の軽量化を図ることで、時間を短縮をすることが出来るだろうと踏む。
コースタイムを考える上では当時の記録が役に立つ。当時は三ノ峰から七倉の辻までほぼ7時間半を要しているのだが、御前峰に立ち寄ることを割愛すれば荷物が軽いこともあり、6時間半を切ることが出来るだろう。釈迦新道を下ってから、市ノ瀬を15時半に出発するバスに乗る前に温泉に浸かる時間をとることが出来るだろうと皮算用をする。
京都駅7時33分発のひかり号に乗り、米原から在来線を乗り継いで美濃太田に向かう。美濃太田で長良川鉄道に乗り込むと、平日なので乗客は少ないだろうと思っていたが、驚いがことに車内はほぼ満席だ。明らかに乗客の多くは郡上八幡に向かう観光客のようだ。
美濃太田からは長良川鉄道で美濃白鳥までほぼ2時間の列車の旅となる。郡上八幡でほとんどの乗客が降りると車内に残っている乗客はわずかに数名であり、それまでの喧騒が嘘のように車内は静かになった。
美濃白鳥に到着するとところどころに旧家の目立つ街並みを抜けて、長良川の対岸にあるスーパーに寄り道する。ここで食料を買い足してから橋のたもとにある「向小駄良」のバス停に向かうと、すぐにバスがやってくる。
バスは白山中居神社のある終点の上在所には13時過ぎに到着する。早速にも登山口を目指して歩き始める。石徹白川の谷の周辺の樹々の紅葉はまだのようであるが、道端のトチノキ、サワグルミやカツラの黄葉が目立つ。谷の彼方では左手に薙刀山と思われる笹原の草稜が広がる山が見える。
道が北向きになると右手にも笹原の広がる山が見える。いよいよ銚子ヶ峰だ。草稜の周囲の樹々は錦繍に染まっているようだ。一刻も早くあの稜線に立ちたいという想いが自然と歩調を速める。石徹白の登山口には車が四台ほど停められていた。
石徹白大杉を過ぎるとすぐにも尾根に乗る。尾根上にはすぐにもブナの樹林が広がるようになる。
尾根の周辺では紅葉真っ盛りであり、カエデの黄色やナナカマドの色鮮やかな紅色が目を惹く。Ca1500を過ぎて尾根がなだらかになると尾根は低木帯となり、左手には銚子ヶ峰の展望が大きく広がる。笹原の斜面に点在する紅葉した樹々が
神鳩避難小屋に到着すると水場に水を汲みに行く。水場は少し下降したところにあり、往復で10分近くを要するが、今回は水の用意が少ないのでここで水を補給する。避難小屋を過ぎるといよいよ笹原の稜線に飛び出し、パノラマを眺めながら高度をあげてゆくことになる。
背後の山々を振り返ると午後の斜陽のせいもあるのだろうか、一面に山肌が橙色に染まっているように見える。尾根の右手には別山の南斜面が荒々しい岩肌を見せている。
母御石を過ぎると、銚子ヶ峰のピークまでは夢幻的な広い笹原の尾根を緩やかに登ってゆく。銚子ヶ峰の山頂に到達すると、三ノ峰にかけての長い笹原の稜線が視界に飛び込んでくる。銚子ヶ峰は既に標高1810m、三ノ峰の避難小屋は標高2080mなので、270mの標高差はそれほどではないよう思えるが、実際にはここから見上げる三ノ峰はもっと標高差があるように感じられるのは、一ノ峰、ニノ峰と繰り返されるアップダウンのせいだろうか。しかし、嬉しいのは笹原の稜線を紅葉の樹々が色鮮やかに彩っていることだ。鮮やかな橙色を見せているのは多くが灯台躑躅のようだ。
西の方角の赤兎山から大長山を結ぶ稜線の彼方には広く雲海が広がっており、夕陽が雲海の照らし始める。一ノ峰を越えても、ニノ峰にかけて、まだまだ稜線を彩る紅葉が続く。気がつくと足元の登山道に大型動物の糞が転がっている。熊のもののように思われる。
ニノ峰を過ぎると太陽が西の雲の中に沈んでいく。三ノ峰の斜面が急に薄暗く見える。ニノ峰を過ぎると途端に笹原の中に点在する樹々が少なくなり、三ノ峰にかけては緑の絨毯のような笹原が広がっているばかりだった。気がつくと空には美しいローズピンクの夕焼け空が広がっているようであったが、三ノ峰の直下では登山道は東側の斜面に回り込むので夕焼け空を眺めることが出来ない。
三ノ峰の避難小屋に到着した時には夕焼けはすっかり消えてしまっていた。急速に気温が低下してゆくのが感じられる。小屋の中に入ると小さなランタン型のライトを灯した二人組の男女が夕食のカップ麺のためのお湯を沸かしておられるところであった。
こちらもまずはビールを開ける。岐阜駅のキヲスクで購入してきた青さのりとイカの練り物を鍋で温めるが、量が多いのでお二人の少しお裾分けさせて頂くと酒のあてになると喜んで下さる。お二人はすぐに消灯されて就寝されたので、こちらも赤ワインと共にロースト・ポークをつまむと、オムライスのおにぎりを温めたもので簡単に夕食を終了すると、早々に就寝する。小屋には毛布も用意されており、シュラフの上に毛布を掛けると寒さのせいで目覚めることもなく、朝まで熟睡することができた。
翌朝は3時半に起床する。湯を沸かしなめこ汁と舞茸おこわのおにぎりで朝食を済ませると4時過ぎには出発の準備が整った。当初の予定で4時半に出発するつもりであったが、白山のどこかでランチに時間を割くつもりで、早めに出発することにする。これが後で思わぬ幸運に繋がることになる。
これまで三ノ峰の避難小屋には二度、泊まったことがあるが、三ノ峰の北側斜面の笹原の夜露がひどく、雨具をつけていないとすぐにもびしょ濡れになるところだ。この日は笹には夜露がついていない。ついていたとしても凍っているようだ。
別山までもほとんどが笹原の稜線なので、好展望が広がる筈ではあるが、徐々に明るくなってゆく暁の空を背景に別山のシルエットを眺めることができるばかりだ。別山の山頂手前の登りの途中で一口水を飲もうと思ってリュックを下ろす、登山道の脇から非常に強い動物の匂いが漂ってくることに気がついた。この匂いを発しているのは猪ではないだろう。慌ててリュックを担ぐと先を急ぐ。その場を離れるとすぐにも動物の匂いは消える。
別山の山頂に到着したのはほぼ5時半。山頂で一息つく間にも急速に東の空が明るくなってゆく。
空には雲が多いが、東の空の端では雲が切れており、御嶽山と乗鞍山の間がひときわ濃い茜色に染まっている。乗鞍の左手では槍、穂高から立山、剣岳、白馬に至るまで北アルプスの山々のシルエットが浮かび上がっている。御嶽山の背後に見える山々は中央アルプスと南アルプスだろう。
白山への縦走路を先に進む。御舎利山の手前で東の空、乗鞍岳と御嶽山の間から朝日が顔を出す。途端に別山の岩肌が茜色に染まってゆく。正面に見える白山も明るい橙色を帯びている。やがて朝日が東にかかる雲の上に入ると途端に山々はを照らしていた朝陽も消えてしまう。
白山を眺めながら小刻みなアップダウンを繰り返し、南竜ヶ馬場に向かって下降してゆく。正面に見える南竜山荘がなかなか近づかないが、終始、草紅葉の尾根からは終始、好展望のパノラマが広がるおかげもあってアップダウンも苦にならず、退屈しない稜線だ。
南竜山荘が近づくと、南竜ヶ馬場から左手の弥陀ヶ原にかけての緩斜面には笹原の中に針葉樹の疎林と紅葉した樹木が点在し、ジオラマのような光景が広がっている。南竜山荘から上の白山の南斜面でも樹々が美しく色づいている。
南竜山荘には明かりがついているが、山荘の周囲は静かだ。北アルプスを眺めながらの展望歩道も魅力的に思えるが、白山までの最短コースとなるトンビ岩コースを選択する。いつもはこのルートは登りも降りも多くの人が歩いているのだが、この日は全く日の気配が感じられない。
トンビ岩を越えると御前峰の山頂が再び視界に飛び込んでくる。室堂に向かって進んでいくと、平瀬道の方から快足で歩いて来られる一人の単独行の女性がおられる。あの歩き方とリュックには見覚えがある。
室堂の手前の合流地点には女性とほぼ同時に到着する。この日の最初に出遭った登山者はなんとハナさんであった。なんと驚いたことにハナさんは平瀬道の登山口で車中泊して、早朝から登って来られたらしい。登山口を5時40分に出発されたというからここまで3時間で登って来られたことになる。リュックの中にはチェーンスパイクまで入っているというから驚きだ。
釈迦新道へのスピードハイクをキッパリと諦めて、ここからの道中はハナさんに同行させて頂くことにする。平瀬道は是非、歩いてみたいと思っていたところではあったが、ここは登山口まで公共の交通機関がないので車を運転してくる他ないのだが、登山口までのアプローチが長いのが難点であり、二の足を踏んでいたのだった。幸いなことに、リュックには昨日の残りの食糧が食べ切れないほどあるので、のんびりと室堂でランチというのもいいだろう。
まずは室堂にリュックをデポして御前峰のピークを踏みにいく。ハナさんが先頭を歩かれるが、その速いことと行ったらない。こちらは付いて行くのがやっとだが、ハナさんは若い人達を次々と追い抜いて行く。ハナさんとは長いお付き合いであるが、よくよく考えて見ると山行中にほとんど人と出遭うことのない山ばかり歩いているので、それなりに人の多い登山道を一緒に歩いたことに思い至る。
そうはいってもこの日は土曜日のまだ早い時間のせいか、御前峰の山頂を歩いている人は少ない方だろう。前回、この山頂を訪れた時には登山者の列が連綿と続いており、山頂の山名標の写真を撮るのに50名以上の長い行列が出来ていたことを思い出す。この日の山名標の前には行列は出来ていなかった。
山名標に近づくと単独行のご婦人に写真を撮ることを依頼される。なんと二日前に還暦を迎えたところで、その記念に登って来られたらしい。果たしてハナさんは還暦記念の登山にはどの山を選ぶだろうか・・・と気になるところだ。
この日は空気が澄んでいるせいだろうか、山頂からの眺望が素晴らしい。まずは東の北アルプスの山座を同定する。先週はすっかり白銀に冠雪していた薬師岳や水晶岳、笠ヶ岳からはすっかり雪が消えているようだが、剣岳の左手に見える鹿島鑓ヶ岳と白馬岳には依然として雪が付いているのが見える。西の方角には赤兎山、経ヶ岳の奥には銀杏峯と部子山、その左手には荒島岳、能郷白山といった山々をしたためる。その彼方を眺めるとドーム状の大きな独立峰が彼方に見える。みまごうかたなきその特異な形状は伊吹山だ。標高は1377mと高くはないが、改めてその存在の大きさに感心する。
ひとしきり山頂からの展望を堪能すると、山頂の北側の池に下降する。まずはコバルト・ブルーの水を湛える紺屋ヶ池だ。その先に進むと翠ヶ池を眼下に眺める。陽光が池の池の深い紺色を明るく照らしている。その美しいマリンブルーの色合いは宝石のラピスラズリーを想起させたが、よくよく考えるとマリンブルーという名称がこの宝石に由来することを後から思い出す。
大汝峰との鞍部に至るとハナさんに大汝峰をどうしようかとご相談する。ハナさんは「大汝峰な何度も山頂を踏んでいるから今日は割愛しても・・・もう少し青空が広がっていたら是非、山頂に行こうという気分になるんですけど」と仰る。釈迦新道を諦めた以上は大汝峰の山頂は踏まなくてもいいと思っていたので、室堂に戻ることにするが「そういうことを言うと、降りてきたら青空が広がるかもしれません」と申し上げる。
千蛇ヶ池は万年雪があるところだが、水面はすっかり凍っていた。室堂に戻ると小屋の前のベンチでランチにする。まずはバケットに砂肝、鳥軟骨とキノコのマリネ、ロースト・ビーフ、スモークチーズとドライソーセージなどを載せたものをつまみながら赤ワインで乾杯だ。赤ワインはドイツで作られたピノ・ノワールによるオーガニック・ワインであり、その透明感のある味わいはなんとも飲みやすく、勢いよく飲んでしまいそうだ。後半はシメジとソーセージをオリーブオイルとバターで炒めたものに玄米を投入してリゾット風にする。玄米は岐阜駅のキヨスクで購入してきた龍の瞳というものであるが、なかなか美味しいかった。食事をしているうちにもみるみる青空が広がっていき、御前峰の山頂の上に広がっていた雲はすっかり消えるのだった。
室堂でのランチを楽しんだところで、平瀬道の下降に入る。平瀬道も人気のルートのようで多くの人が歩いておられる。早朝から登られた方が多いのだろう、下山している人がほとんどだ。灌木帯に入ると、山の中腹には見事な錦繍が広がる。紅く色づいているのはほとんどがナナカマドのようだ。
下るにつれて左手の大白川谷のあたりが一際見事な錦繍を見せている。秋の透明な日差しが、赤や黄色の鮮やかさを一層、際立たせているようだ。標高が1700mよりも低くなると尾根にはブナの樹林となり、まだ紅葉していない緑の樹々が多くなるが、それでも色づき始めたブナの樹々にが十分に林相の美しさを堪能させてくれる。
登山口に到着すると駐車場はほぼ満車に近い。ハナさんの車で平瀬に向かって下ってゆくとリュックを背負った登山者が歩いておられた。平瀬道から平瀬に向かってあるいているのだろうか。平瀬のしらみずの湯に立ち寄る。先週の山行でできた靴擦れはかさぶたが剥がれていたが、湯あたりが柔らかいせいか、痛みを感じることもなかった。
温泉から上がって国道に出るとなんと国道には先ほどの登山者が歩いておられた。果たしてどれだけの時間で大白川ダムの登山口から歩いて来られたのだろうか。
R156で御母衣ダムの湖岸を南下し、東海北陸自動車に入ると、周囲の山々のシルエットが霞んでいる。空気の湿度が急速に高くなっていくようだ。各務原アルプスの下をトンネルで潜り岐阜市に入るとまもなく雨が降り出した。長いドライブであったが、ハナさんには米原まだ送っていただく。
山上でも偶然の邂逅のおかげもあって錦繍の白山を堪能することが出来た山行であった。ハナさんに深謝である。
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