奥秩父主脈縦走だいたい7割?(飛龍山~将監峠~笠ヶ岳~雁坂峠~甲武信岳)


- GPS
- 48:20
- 距離
- 34.4km
- 登り
- 3,610m
- 下り
- 3,084m
コースタイム
10:40 丹波バス停 - 12:15 サオウラ峠着 - 昼食 -
12:45 サオウラ峠発 - 13:22 熊倉山 - 14:55 飛龍権現 -
17:00 将監(しょうげん)小屋着 / テント泊
●Day2/5月2日
06:50 将監小屋発 - 07:12 山ノ神土(かんど)分岐 - 08:00 唐松尾山 -
09:12 水干手前分岐 - 09:28 水干-09:45 小さな分水嶺-10:06 雁峠-
10:34 燕山 - 11:26 古礼山着 - 昼食 -
12:07 古札山発 - 12:34 水晶山 - 途中一瞬ロスト! - 13:21 雁坂峠 -
14:02 雁坂嶺 - 14:50 東破風山(スリップ緊張の急登) -
15:18 西破風山(にわか雪) - 16:00 笹平破風山避難小屋着 / 小屋泊
●Day3/5月3日
06:15 破風山避難小屋発 - 07:40 甲武信小屋着 - 07:55 甲武信小屋発 -
08:15 甲武信岳山頂 - 08:30 甲武信岳山頂発 - 08:40 甲武信小屋 -
08:58 木賊山(スリップ緊張の急登) - 09:06 戸渡尾根分岐 -
10:10 徳ちゃん新道分岐 - 11:00 西沢渓谷(この間ほぼRUNモード) - 11:30 東沢山荘着
天候 | 晴れ(5/2夕方一時雪) |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2010年05月の天気図 |
アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
丹波〜飛龍山/ 1.奥多摩駅発のバスだと最速でも丹波に10:30頃着となり、 一日で将監峠に着くには体力がいる。 2.サオウラ峠までのトラバースは急斜面でスリップ注意。 サオウラ峠(竿裏/登山地図にはサオラとある)は昼食に最適。 3.ミサカ尾根は岩場の急登で大きなザックを背負っているとふらつき、引っかかりに注意。 飛龍山〜将監峠/ 1.飛龍から向かうと途中左手に禿岩の標識だけがあるのでそちらに行くと行き止まり。 禿岩の展望はよい。コースは禿岩とは逆の右方向へ。 2.禿岩標識右に入ると今年は雪が大分残っていた。軽アイゼンがないとつらい。 程なく溶けるでしょうけど。 3.将監小屋までは所々沿道で雪解け水が流れ出ている。 澄んでいて試しに飲んだがうまかった(保証しません)。 将監小屋/ 1.テント泊者には張りやすい整地された階段状の草原。気にならないが鹿の糞だらけではある。 2.水はじゃぶじゃぶ流れている。 ただ濁っているときは小屋横の蛇口からどうぞと言われた(本文関連記述あり)。 3.テント泊500円、缶ビール500円だった。 将監小屋〜唐松尾山/ 1.山の神土分岐で唐松尾山方面に入った道で前の人と一緒に一瞬ロスト。 倒木で道が不明瞭になっていることがあり注意したい。 唐松尾山〜水干手前分岐/ 特にありません。 水干手前分岐〜水干〜小さな分水嶺〜雁峠/ 1.特にありません。トレランには最適のトレイル&草原。 2.雁峠山荘は老朽化のため閉鎖したらしく。水場もありません。 雁峠〜燕山〜古礼山/ 1.燕山からは笠取山の眺めがよい。 2.古礼山は巻道と山頂道があるが山頂道と言っても緩やかで 山頂近くの草原にはベンチもあり眺望もよい。おすすめ昼食スポット(夏場は暑いか?)。 古礼山〜水晶山〜雁坂峠/ 1.水晶山から雁坂峠へ向かう途中の林の中で急に雪が深くなり踏み跡交錯し一時ロスト。 雪を何度も踏み抜き靴が濡れた。 雪でなければ分かるのかも知れないが林間は赤テープをよく見るようにしたい。 雁坂峠〜雁坂嶺〜東破風山/ 1.東破風山手前登りは急登。しかもほぼ一直線で、今回は雪がついていて滑り台状態。 自分的には今回の山行で一番の緊張箇所。 東破風山〜笹平破風山避難小屋/ 1.西破風山から笹平の避難小屋までは岩場の急坂だが丁寧にクリアすれば問題ない。 登りはキツイのかな? 2.避難小屋は素晴らしい。新しくてなんと薪ストーブ完備。 寒かったのでさっそく利用させてもらう。 暖かいしお湯は沸かせるし同室の方々ともうち解けやすくなるし、最高! 火災の危険から撤去されるケースが増えていると聞いたが、 きちんと使ってストーブがある避難小屋をなくさないようにしたいと思った。 3.小屋付近に水場の標識があるが、道が不明瞭な上、途中から沢へと凄い傾斜で切れ落ちている。 行かない方が身のため。水はそれまでに何とか確保しておきたい。 笹平破風山避難小屋〜甲武信小屋/ 特にありません。 甲武信小屋〜甲武信岳山頂/ 特にありません。小屋の水は1L50円です。 甲武信岳山頂〜木賊山/ 1.東破風山の時と同様、雪で滑りそうで怖い急坂が続くのでこの時期は注意。 アイゼンがあれば問題なし。 木賊山〜戸渡尾根/ 1.ここの坂もこの時期は凍結していてツルツル。 だがアイゼンがあれば問題なし。間もなく溶けてしまうだろうが。 戸渡尾根〜徳ちゃん新道〜西沢渓谷/ 問題ありません。 |
写真
感想
イントロダクション
(※すいません、全部だと長いので見出しで気に入ったパートがあればお読みください。何かひとつでもご参考になればよいのですが)
今年のGWどこへ行くか?自分の今の装備と技術ではこの時期の北アや八はまだ無理。となれば前々から気になっていたロングコース、奥秩父縦走をやってみようと思った。でも本気で計画を吟味してみると、瑞垣、金峰から雲取までは4泊5日が一般的。がんばれば3泊4日が可能? これならいけるか。あーしかし、サラリーマンの悲しいサガ、あんまり無理もできないので、距離をちょい縮めて雲取はやめ、金峰・瑞垣は様子見でGOサインを出した! 慌てて買い出し、パッキングを済ませ、一路奥多摩からバスでの終点丹波へ向かった。
Day 1
●「バスに揺られて、丹波ダバ丹波ダバ♪」
GW初日、しかも快晴。奥多摩駅はハイカーでごった返していた。鴨沢や日原など各方面に臨時バス連発。自分は丹波行きで最後の最後に増発便での出発となる。どこかのおばちゃんは「どうして乗せてくれないのよー!」とかぶつくさ言っていたが、バス会社側でちゃんと座っていけるように配慮してくれていたからだョ。だって終点丹波までは1時間もあるしね。西東京バスさん、さんきゅー!でもさっきのおばちゃんはぜんぜん手前の奥多摩ダム辺りで降りたっけ。
結局、鴨沢を過ぎた頃にはだいぶ人がはけて、丹波まで行ったのは自分ともう一人だけ。その方は大菩薩へ向かうと言っていた。荷物は大きめだが、走り出すかのような気合いを感じました。
登山口は、バス停から少し行った右手にある。標識に従って農作業道のような道に入り、奥多摩あたりで恒例の鹿よけ?の柵を「失礼しまーす」と開けては締め、また「失礼しまーす」と開けては締めて、謙虚に?旅が始まったのだった。
●「のっけから結構ハード! サオウラ峠とミサカ尾根」
丹波からサオウラ峠までは意外と急斜面だ。そこをジグザグにトラバースしていくのだが、これがちょっと怖い。道が細いし、枯葉とか積もってて滑りそう。奥多摩3大急登のひとつ、本仁田山への道、あれにちょっと似ている。まだ始まったばかりで意気揚々!ではあったけれど、少し慎重に登っていった。1時間半ほどかかってサオウラ峠に到着。あ〜…バテた。おいおいさっき登り始めたばっかやん! と心の中で一人つっこみを入れつつ、気を取り直してお昼にした。お昼は来しなに買ったコンビニギリ×3&豚汁。豚汁クンの袋はもうこの高度でぷっくりと膨らんでいた。早すぎ。
サオウラ峠からは熊倉山を経てミサカ尾根づたいに飛龍山をめざす。ここでオスプレーのエクソスを背負った若者に追いつく。少し言葉を交わすと、今夜は自分と同じ将監峠泊まりの予定らしい。日暮れまでに着けるかなとか話し合って「では後ほど」!
このルート、なかなか登りごたえがあるのです。特に前飛龍前後はゴツゴツした岩場でチャレンジング。重く大きいザックが石にすれたり木に引っかかったりして苦労した。ザックは各部のベルトを締め直したりして、なるべくコンパクトにしておくのがいいですね。振り向くと意外と高度感もあってふらついたりすると怖いけど、所々見晴らしが気持ちよく抜けている場所もあり、おお登ってきた登ってきた!とモチベーションもグングン上昇する。
●「やっと会えたよ!奥多摩の鹿ちゃん」
と、不意に僕の前をドタドタと何かが駆け抜けた。?! 見ると、大きな鹿さんではないですか!奥多摩でよく遭遇することは聞いていたけど、自分は初めてだったので感動〜。ちょっと離れたところでじーっと僕を見つめていたっけ。つぶらな瞳でね!それにしても熊さんでなくて良かった。
14:55飛龍権現に到着し、飛龍山頂はパスして先を急ぐ。すれ違った人に聞くと、この先北面は雪道とのこと。軽アイゼン、忘れずザックに入っているよな!と忘れん坊の自分を一瞬不安に思いつつ歩く。
●「禿岩でプチ遭難しそうになるの巻」
まもなく標識があって左方向に「禿岩」。地図上の「禿岩」の文字が頭に入っていて、ルート上にあるものだ、と思いこんでいたので、迷わず標識通りに左に進む。しかぁーし!…行き止まり。なのに、しばらく気づかず「えー、こんな岩場を降りてくのー?」とがんばって進んでしまった。しかもここでまた鹿が目の前に一瞬現れて、鹿の去った方向に木をかき分けかき分け、崖っぷちに出てようやく「…違う」。あそこを無理して降りていったりして、「遭難」は始まるんだろうな、と来た道を戻りつつ反省。こんなところで迷う人、あんまりいないと思うけど、ご注意ください。あ、でも「禿岩」は素晴らしいビューポイントですのでフォローしておきます。
●「北面の道に入ると、そこは雪だった」
北側斜面は情報通り雪道。件の軽アイゼンは無事にザックに入っていたので、ガッツリ装着してガンガン進む。僕の軽アイゼンはGRIVEL/SPIDERというすごく簡易的なアイゼンだけど、トレランシューズにも装着できて浅い突起の割にはかなり刺さる印象で使える。でも、それ以上になんと言っても軽いのがいい。付けたりはずしたりする今回のような山行にはベストです。
雪道区間は意外に結構長かったけど、なんなくパスしてあとはひたすら将監小屋へ。この時点で15時半ぐらいだったので、ややスピードをあげて進む。
険しい山道であっても誰もが快適に歩きたい、と考えるのは当然だろう。だからなのかな、基本的に道は日の当たる明るい斜面にとられている。特にこの奥秩父の主脈縦走路はほぼ東西の横移動なので、おおむね尾根上か、やや南面にルートがある。道というのは、そういうふうに、おのずと人が選び取ってできていくのかもなぁ、うんうん!なんてひとり納得してしまった。もちろん地形によって例外箇所はあるがほぼそんな感じなので、もし北側の暗い道をずんずん進み始めたら、ありゃ?間違えたかな?とルートを確認するのがいいのかも、と自分なりの道迷い防止法などを考えながら歩いた。
●「気持ちよくテントが張れる、将監小屋」
そんなこんなで時刻が17時近くになった頃。ようやく将監小屋が見えてきた。鮮やかな色のテントも数張り確認できる。縦走路をしばし離れ、小屋への道を下っていくと、この日のテン場に到着。ジャスト17時だった。将監小屋のテン場は、ゲレンデ上に開けた草原で、階段状になっていてテントがすごく張りやすい。ま、鹿のフンがあちらこちらにあるのは、ご愛敬かな。
さっそく受付を済まし、ビールをゲットしてテント設営。山行途中でビールを補給できるのは、いやはや、なんともうれしいですね。
この時期はずいぶん日が長くなっていて19時までぜんぜん明るかった。遅れてミサカ尾根で追い越したエクソスさんも無事到着したようだ。テン場のテントは目視で20張りほど。となりの団体さんはジュウジュウ焼肉したりしていいニオイ!うらやましいなぁ〜と思いつつも、自分は袋飯とキムチ鍋、それに冷えたビールで案外幸せ気分になり、ちょいと読書をしてから眠りについた。
Day 2
●「将監峠から笠取山-雁峠が、この旅のハイライト」
夜中に何度か寒さで目が覚めたがほぼ問題なく眠ることができて、4時頃起床。水場にはつららができていたから、外気温は0度辺りになったようだ。だらだらと朝ご飯を食べ、テントをたたみ、出発したのは7時前だった。ほぼ同時スタートの昨日のエクソスさんと峠で再び挨拶を交わし、縦走路に復帰した。
この日の将監峠から雁坂峠までのトレッキングは今回の旅のハイライトと言えるかもしれない。
たとえば唐松尾山周辺にはちょっとチャレンジングな岩場があって結構たいへん。でもそれを乗り切るとまるでご褒美のようなトレイルが続く。苔むした林道には陽光がキラキラと木々の間をすり抜けて降り注ぐ。所々で南西に富士が顔を出す。このリズムが実にいい!
また笠取山周辺は明治以来の東京都の水源地、水干として整備されていて、その昔の歴史に思いを馳せることもできる。トレランにはもってこいの緩やかなアップダウンを描く道が西へ西へと延びている。
笠取山を越えると気持ちの良い風が渡る草原に出る。雁峠だ。この丘には「小さな分水嶺」があり、ここに降る雨が、ある一滴は多摩川となって流れ、ある一滴は荒川となって流れ、またある一滴は富士川となって流れる。これはほんとにドラマチックだなと思う。しばし、丘の上で風に吹かれて、のんびり気分に浸った。奥秩父、大好きになってしまいそうだぜ、ベイビー!
●「古礼山で水に浮いてるアブラ発見事件」
雁峠を過ぎると燕山の急登になる。途中で笠取山を振り返ると、まさに笠のカタチをした美しい裾野を持った山だということがよく分かる。(ただし坂道で振り返るときはバランスにご注意!)
朝、将監峠を出発したら、この辺りでそろそろランチにしたくなる頃。水晶山を経ていい場所ないかなと思いつつ古礼山にたどり着く。古礼山へはピークを踏む南側のコースと北側へ迂回する巻き道があるのだが、その分岐に到達したときに現場にザックがデポられていて、ちょうど山頂コースから戻ってきた方が荷物をつかんで再び山頂コースに戻っていった。「これはきっとこっちに見晴らしの良い場所があるんだな」と踏んだ僕はさっそくその方のあとについて行くにした。結果は、ビンゴー!そこは富士山もよく見える開けた草原で、ベンチで先行の男性がランチを広げていた。自分もその横に…とも思ったのだが、なんとなく気が引けて、ちょい先の山頂ポストの脇に腰を下ろすことにした。そこも広々とした気持ちいい場所だったので、おいしくお昼を楽しむことができた、、、
と、思ったら、実はこのとき、ひとつ気になることが発覚。朝、将監峠でプラティパスに入れてきた水を湧かすために鍋に注いだ時に、見つけてしまったのだ。
「アブラが浮いてる…」
初めは鍋に着いたアブラなのかな?と思ったのだが、きれいなコップに注いでも、やはりうっすらと機械油のような膜が見える。「…。」
かといって周りに水場はないし、あきらめて、見なかったものとして、飲んだ…。
ええ、飲みましたとも!もちろん味で分かるほどでなく、気分の問題だし、なんだそんなことか、と思われるかもしれないが、自然のゴミじゃなく、化学物質的な汚れだったので、なんだかその後もしばらく気持ち悪かった。
将監小屋の主人に水を入れる時にいわれた忠告を思い出す。「もし水場の水が濁ってたら小屋の横の蛇口を使って。」これは濁り、ではないかもしれないが、なんらかの汚れがある場合があるのかな、と考えると、蛇口から汲んでくるんだったと後悔した。でもその朝の小屋の蛇口は凍結していて使えなかったんだが。あー前日に蛇口から汲んでおくんだったぁ…。ま、ほんとうに将監小屋の水が原因か、は断定できないのだが。とにかく雁峠から向こうはしばらく水場がないので、それまでに清潔な水を確保しておくことをお勧めします。
●「踏み後交錯、水晶山でロスト!」
水晶山を越えたあたりから、いつの間にか道に雪がつきだし、アイゼンをせずに乗りきれるかと奮闘しつつもついにすっころんでしまった。たいした転び方ではなかったのに、思わず着いた左手の中指を少し捻挫した感じ。雪道だったとはいえ、どうして自分はこうも転んでしまうのか? 確かに靴は底が平らなトレランシューズだけど、雪道でなくても、普通の山道でも山へ行くと必ずといっていいほど、ずっこける。私生活でもずっこけてばかりだけどね!でも仕方ない、それが私の生きる道?とほほ。
負傷した?指をちょっと気にしながらめげずに先へ。すると受難パート2、ちょっとした林の中で雪面の踏み後が交錯し、ロスト。気がつくとズボズボの雪上を歩いていた。僕が頼りにしていた足跡は、いつの間にか鹿の蹄の後に変わっていて。鹿の馬鹿(笑)!
とにかくそんなに広い林ではなかったので、コースアウトしたと思われる方向に向けて雪原を横に突っ切ればかならず復帰できると考え、道なき道をズボズボズボズボ。踏み抜くたびに靴の中に冷たい雪が入ってきて、「つ、つめたー!サイテーや!」
一瞬焦ったものの、なんとかルートに戻ることができた。ほんとなんてことない林の中なのに、自分が嫌になった。ルーファイは遠くばかり見ていてもダメ、近くばかり見ていてもダメ、遠くを見たり近くを見たり、ためつすがめつ視線に気を配らなければならないなあと反省。バリエーションルートでもないのに、笑われちゃいますね。
●「スリップ緊張の急斜面、東破風山」
さてさて奥秩父の旅もいよいよ終盤。日本三大峠の一つ(だそうです)雁坂峠に到達したのは、13時20分。さすがに節目のポイントだけあって数人のハイカーが休んではいたが、その昔の交通の要衝も今はずいぶんひっそりした雰囲気。いまでは甲府と秩父を貫く長大な雁坂トンネルがこの峠の下を貫いているからか。峠から山梨側の景色が開放感があり眺めが良い。直下に広瀬湖とほとりの街並みが見える。こちら側の登山道からやってくるハイカーも多いみたい。のどが渇いていたが、例の水を飲むのはやっぱり気が引ける。埼玉県側に降りれば雁坂小屋の水場があるみたいだが、ブログで書かれている方の記録を見ると意外に歩かなくてははならないようなので。もうちょっと我慢しよう。
雁坂嶺を越える頃には、再び雪道になっていた。そして、今回の山行で自分的には最大の緊張箇所となった、東破風山の急斜面へ取り付いた。急斜面、といっても斜度でいえばそれほど急でもない。問題は、雪。そして道がほぼまっすぐ直登していたので、スリップしたら雪の滑り台を転滑落してしまいそうなのだ。もちろん登り始めはそんなこと気づかない。ある程度高度を上げて、ふと振り返ってみて、気づく。「ここで滑ったらやべ」と分かったときには、引き返せないところまで来ている。軽アイゼンだと、こんなとき心細い。右足、左足、一歩ずつ、慎重にステップを蹴り込み、念入りにストックを突き刺しながら、登っていった。これも慣れなんだろうけど、小心者のあたしゃ心臓バクバク。何とか通過できた時は、ふーと大きく安堵の息をついてしまった。おかげで自分の中でまたひとつ、ヤマを越せた気がしました。はい。
●「突然の雪?急げ笹平へ、甲武信小屋へ」
東破風山頂では急に空が暗くなり、なんと雪が舞い始めた。結構降るか、と思われたので、防水ジャケットを身につけた。時刻はほぼ15時。そろそろ行動停止、といわれる時間だ。今夜の泊まりは甲武信小屋を予定している。でもあと2時間はかかりそうだ。そこにこの天気。僕は荒天での山行の経験がほとんどなく、さらに暗くなってからの歩きもまだ知らない。そんな中で、この天気が悪化するのか、すぐ回復するのか、悪化した場合は日暮れはどれくらい早まるのか、万が一となったらこの先途中でビバークするところがあるのか、などいろんな思いが駆けめぐった。
笹平へ行くまでに一人ずつ、計二人の男性とすれ違った。どちらの方も昨晩は避難小屋に泊まったらしい。二人しかいなかったらしい。この雪でこの時間では避難小屋泊まりもありかな、と考えた。
到着した笹平破風山避難小屋はビックリするほどきれいな小屋だった。しかも薪ストーブがあり、薪も十分な量がストックされてある。かなり気持ちが動かされたが、誰もいなかったし、雪もやんだし、時刻もまだ16時だったので、一か八か甲武信小屋をめざすことにした。が、登山道の取りつきを数分登ったところで、若い二人組の男性に会い、この先結構雪が深いと聞いて、彼らが避難小屋に泊まるというので、心変わり。自分も同宿させてもらうことに決めて、来た道を戻り避難小屋に向かった。
じつは自分は避難小屋泊まりもこれが初めて。初めての小屋がこんなにキレイなのはツキがありました。しかも薪ストーブまであるのだ。これは暖まる! 最近は火事を心配して避難小屋に薪ストーブが設置されない傾向らしいのだが、埼玉県はえらい!と同宿の二人も喜んでいましたね。
●「笹平、水場の標識は遭難への入り口?」
この小屋の近くに水場の案内標識がある。しかし地図によるとここから20分も沢に下らなければいけないらしい。しかも道不明瞭の記述。僕は例の油が浮いた水1Lしか持ってなかったので、ちょっと心細く、できれば水がほしかったので、ちょいとのぞきに行ってみることにした。
この辺りは「笹平」というだけあってゲレンデ上の広い原っぱが沢に落ち込んでいくように傾斜している。僕は帰り道が分からなくなるといけないから、写真を撮りつつ進んだ。しかしすぐに敗退。っていうかあっという間に道は道でなくなり、深く切れ落ちている崖に出たのだ。確かにはるか下には水音が聞こえる。が、あの崖を降りていったらまず登ってこれなかった、と思う。それともちゃんとしたルートがあるのかもしれないが、ほんとに道が不明瞭。これから夏になると草が生い茂りさらに不明瞭となることは間違いない。
それにしても小屋のそばにある標識はなんだ? 結構新しい標識でこちら「水場」と堂々と記してある。
あれではいつか誰かが遭難してしまうだろう。
もしこちらに立ち寄ることがある方には、水場へ行くことはとてもお勧めできませんね。
仕方がないので避難小屋に戻った僕は雪を水にして補給することにした。この方法も前から聞いていたけど、やってみると大変ですね。雪ってなかなか溶けないし、溶けても少しの量の水にしかならないし。
でも雪があっただけましなんでしょうけど。
●「薪ストーブを囲んで暖かい夜、破風山避難小屋」
この夜は、例の薪ストーブのおかげで暖かく過ごすことができた。
結局同宿したのは自分を含めて五人。
薪ストーブを囲んでそれぞれ食事を取りながら、楽しいおしゃべりもすることができた。
こんな避難小屋泊なら、ぜんぜんオッケーだ。
翌朝は4時半頃起床。先に目覚めた人が消えてしまった薪ストーブに火をおこしてくれていた。
ありがたいなぁ。
Day 3
●「甲武信を踏んで、旅の終わり」
外に出ると薄明るくなった空に月と富士が浮かんでいる。今日もいい天気みたいだ。
のんびり朝食を取り、パッキングして、出発の準備が整ったのはほぼ6時。
僕はもう今日でこの旅を終えることを決めていた。甲武信岳を踏んだら、金峰、瑞垣はつぎにとっておこうと。っていうかちょっと疲れたんですね。日にちの余裕もなかったし、今日までの行程でも十分満足していた。また夏にもう一度挑戦するか。こんどはファストパッキングってやつをやってみるかな。そのときは逆コースで行くのがラクなのかも。
甲武信小屋はまだまだ雪の中にあったけれど、たくさんの登山客で賑わっていた。
ここから山頂までは20分。標高2475m、今回の最高地点に到達。山頂から国師、金峰、瑞垣方面への美しい尾根道が見えた時は、思わずフラフラーっと吸い込まれそうになったけど、なんとか思いとどまって、木賊山へときびすを返した。また今度、来るからね!
木賊山へのちょっとスリップ注意の登りを終えると、いよいよ下山。近丸新道はやっかいな雪と氷のミックスロードだったけど、徳ちゃん新道からはトレランモードで駆け下りた。下りるのはラクだけど、ここを登ってくると思うと、しかも山頂まで結構距離があることを知ってるから、大変だな-と思ってしまう。もちろん登る時は登山の開始時点だし、しんどくてもワクワクしててそんなこと考えないんだけどね。
木賊山からのコースタイム3時間のところを、2時間で西沢渓谷に着いた。西沢渓谷って結構有名な景勝地みたい。GWってこともあり、たくさんの観光客。川のせせらぎがキラキラと光る。子どもたちがキャッキャとはしゃぐ。山とはまた違ったココロ癒される平和な風景。旅の終わりが寂しくもあり、うれしくもある瞬間だった。
(おしまい。おつきあいいただいた方がいらっしゃったら、本当に感謝です。ありがとうございました。)
主な装備リスト
ザック:グラナイトギア ヴェイパートレイル
住
テント:一人用シングルウォール(ブラックダイヤモンド ワンショット)
マット:サーマレスト プロライトプラス レギュラーサイズ
シュラフ:3シーズン用(ハイカーズデポ ダウンバッグ)
ランタン:UCO キャンドルランタン 雪丘スペシャル
チェア:クレイジークリーク ヘクサライト
衣
レインジャケット:アウター:パタゴニア レインシャドウ ジャケット
レインパンツ:パタゴニア レインシャドウ パンツ
パンツ:アークテリクス ガンマAR パンツ
ベースレイヤー:パタゴニア キャプリーン2クルー ショートスリーブ
ミッドレイヤー:パタゴニア R1 フーディ
ソックス:パタゴニア ウールソックス
シューズ:モントレイル ヘリウムGTX
軽アイゼン:グリベル スパイダー
ストック:ブラックダイヤモンド アルパイン カーボンコルク
ヘッドライト:ペツル ティカプラス
食
コッヘル:MSR チタンケトル/スノーピークチタンシングルマグ450
バーナー:EPI レボ3700/T's Stove アルコールバーナー(予備)
マグ:ダイネックス インシュレーティッド クラシックマグカップ
水筒:プラティパス 2.5リッター
食料
Day 1
昼(@サオウラ峠):コンビニおにぎり×3、即席豚汁
夕(@将監小屋):袋飯(梅わかめご飯)×まるごとキムチ鍋、晩酌缶ビール、ウイスキー、肴サラミ
Day 2
朝(@将監小屋):袋飯(赤飯)×丸ごと野菜ミネストローネ
昼(@古礼山):袋飯(カルボナーラ)×即席コーンクリームスープ
夕(@破風山避難小屋):袋飯(赤飯)×リフィルきつねうどん、晩酌ウイスキー、チーズ鱈
Day 3
朝(@破風山避難小屋):しらす雑炊×即席コーンクリームスープ
昼(@西沢渓谷東沢山荘):山菜五目御飯×大瓶ビール
コメント
この記録に関連する登山ルート
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BUGSLIFE さん こんばんは。
楽しく読ませていただきました
丹波からサオウラ峠への登りは大変だったでしょう
お正月にそこを下りましたがおっかなくてしょうがない感じ
>山頂から国師、金峰、瑞垣方面への美しい尾根
そうですね。昨年奥秩父主脈をやる前に甲武信に
登りこのきれいな国師の尾根を見たときに私は
奥秩父主脈縦走を決意しました。
>旅の終わりが寂しくもあり、うれしくもある瞬間だった
妄想から計画、実行そしてほぼ計画通り遂行でき
無事帰還できたときはなんとも言えないですね
yasuhiroさん、こんばんは。
わざわざコメントありがとうございます。
私もyasuhiroさんのように、つぎは主脈縦走完遂したいと思います。
こんどは瑞垣、金峰からトレランしながら雲取をめざすか、
奥多摩駅から完全徒歩縦走するか、に悩んではいますが
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