蝶ヶ岳
- GPS
- 32:00
- 距離
- 33.7km
- 登り
- 1,786m
- 下り
- 1,797m
コースタイム
- 山行
- 10:20
- 休憩
- 1:30
- 合計
- 11:50
- 山行
- 4:15
- 休憩
- 0:25
- 合計
- 4:40
天候 | 初日雪のち晴 2日目雪 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2016年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
その他周辺情報 | 平湯の森 |
予約できる山小屋 |
蝶ヶ岳ヒュッテ
|
写真
感想
1月9日(土)雪のち晴 沢渡岩見平ー2400M付近露営地
冬季に上高地へ入山する場合、釜トンネル入口から歩き始めることになるが、もっとも近い駐車場の沢渡までは5〜6キロほど距離が離れている。公共交通機関は松本〜高山間の高速バスであるが、釜トンネル入口の最寄バス停である中ノ湯に到着する最も早い便でも10時頃着であり、ちょっと遅い。やむを得ないところだが、初日の行動時間を確保するため、早朝に車で到着し、沢渡〜釜トンネル間を歩くこととした。ただし、この区間は空身で歩けるよう、あらかじめ釜トンネル入口まで車で来て荷物をデポし、その後沢渡まで戻ることとした。4時20分頃沢渡岩見平駐車場を出発。昨晩から降雪があり、路面は圧雪状態となっていた。まだ夜明けまではしばらく時間があり、夜中同然の真っ暗闇である。時々車が追い越しすれ違うが、こんな山奥の真っ暗闇な雪道を手ぶらで歩く姿が、幽霊か何かと間違えられそうで嫌な感じだ。
釜トンネル入口には、「砂をまくな」「側溝が詰まって迷惑だ」などというような、誰が誰に対して告げようとしているのか不明な看板があった。トンネルを出て最初の下り勾配で1回派手に転倒した。うっすら雪が積もっていたので気付かなかったが、一部天然アイススケートリンクのようにつるつるになっている箇所があった。
大正池付近でようやく明るくなり始め、周囲の様子がはっきりしてくるが、どうやら天候は良くないようだ。しかし、今のところ風は弱く気温も高めだ。上高地BTにはテントが張ってあり人が何人か突っ立ていた。指定のテント場は小梨平のはずだが?その先の小梨平にもテントがいくつかあったが、上高地周辺の散策客だろうか?
徳澤方面のトレースは降雪でなくなっていたが、一部の吹き溜まりを除けば歩きに支障はなし。明神から先でも天然アイススケートリンクに侵入してしまい、惨めに2回目の転倒。このとき右手を地面に強く突いてしまい、下山後に腫れ上がり、今もPCのキーボード操作が痛くて辛い。転倒した辺りから雪雲が消え、急速に天候が回復してきた。遠くに常念とおぼしき白くて高い峰が目に入った。
徳澤園は釜トンネル入口にも看板があったが、今冬は管理人が入らず冬季小屋も開設しないとのこと。最近下界ではあまり見かけなくなったバラ線で周囲をぐるぐる巻きに覆っていた。徳澤の手前に大きな吹き溜まりがあり、わずかな区間であったが不意のラッセルを強いられた。積雪も増加し、ここから先の長塀尾根登山道はどれだけのラッセルになるのだろうかと不安に思った。しかし、実際に登りが始まると樹林帯で積雪が遮られるのか、途端に雪が少なくなった。歩道の上で5センチ程度だろう。ワカンは履かず、アイゼンのみ着用した。ところで、ヤマテンあるいはウェザーニュースによれば、今日の午前以降は冬型が弱まり、強風も一段落し晴れ間がのぞくらしい。しかし、明日は再び冬型が強まり天候は悪化する予報になっている。当初の予定では長塀山付近まで進み、明朝に蝶ヶ岳頂上を往復し下山する運びだったが、この予報では今日中にピークまで進んだ方が良いだろう。ということで、強行軍だが、適当な場所で設営し、その後今日中に蝶ヶ岳まで往復してくることにした。徳澤を出たのが9時頃であり、夏時間で頂上まで5時間弱なので、強烈なラッセルにならない限り何とかなるだろう。合戦尾根に比べれば標高差も勾配も大したことはないが、それでも最初の内は登り一辺倒であり、重荷を背負っての疲労感は半端ない。トレースは明確なものではなかったが、正月の入山者の跡と思われるような名残りは時々見かけられた。
徳澤から3キロ(蝶ヶ岳まで3キロ)の標識を過ぎ、恐らく標高2400M付近まで登ってきたところで、勾配は一段落し平坦な部分が多くなってきた。そこで、登山道が「く」の字状に曲がった進行方向左手にテント一張り分の平坦地が隠れているのを見つけ、そこに設営を行った。樹林に囲まれ、上空の狭い部分のみ視界が効くような場所だったが、どこを選ぶにも似たような感じであった。設営に30分程時間がかかり、時刻を見ると正午を過ぎていた。サブザックに変え身軽になったところで頂上目指し出発。このときテント場が登山道からやや死角に入り見えにくい場所にあることに一抹の不安を感じていた。
さて、テント場から上部は一段と積雪が増し、所々で深みにはまるようになった。トレースは無くても赤テープは豊富にあるので、道に迷うことはなかったが、前へ進むスピードが身軽になったにも拘わらずかえって鈍化した。先ほどからアップダウンを繰り返し、地図を見ても現在地が今一つ分からない。長塀山は通過したのかどうか?ここでワカンを着用することにしたが、すると今までの苦労が嘘のように楽になった。こんなことなら早くワカンにしておけば良かったと思うが、久しぶりの装着だったので、バンドの巻き方が分からなくなり、無駄な時間を費やしてしまった。
何やらピークのような地点に着くと、蝶ヶ岳まであと2キロの標識が見えた(帰路に確認したところ、これが長塀山のピークだった)。その後も上り下りを何度か繰り返し、ラッセルは尚も深くなるが、一向に目的地は近づかない。地図には「妖精池」なるものの近くを通るよう示しているが、雪に覆われ分からない。残り1キロ標識を過ぎ、右手が開けてきたが、これは恐らく大滝山方面だろう。また少し進むと、今度は前方左手に森林限界を越えたハイマツ帯(雪に覆われているが恐らく)が開け、ようやく頂上が近づいたと感じられた。窪地のような雪原を横断しさらに登って行くと、待望の蝶ヶ岳ピークと山小屋が視界に入ってきた。それにしても今の時期にあるまじき完全無欠の快晴に覆われた大絶景だ。対岸の槍穂高を始め、前方に続く常念山脈、浅間山・四阿山、八ヶ岳、富士山、南アルプスなどもすべて美術館の展示品のように勢ぞろいだ。ピークに立ち、一通り写真に収めてから冬季小屋を物色。ここは雪が風で飛ばされ付着しにくいため、地面すれすれのところに出入口がある。しかしその入口にある鉄扉の何と重いことか。女性や非力な登山者では入るにに一苦労だろう。
30分程頂上に滞在し、時刻は3時を過ぎたため下山に向かう。風は一応吹いているが、この時期にしてはかなり弱い方だろう。年末に常念山脈縦走を試みた際に、この程度の風だったら良かったのにと、未練がましく今更どうにもならないことを考えるのであった。
帰り道、頂上からテント場までは1時間ちょっとで着いた。ただし、行きに感じていた不安が的中し、そろそろこの辺りかと思しき地点まで下ってきても一向にテントが見つからない。通り過ぎてしまったのではないか?という焦りが出てきたところ、右手にひょっこりと黄色いテントが現れた。テント場所の目印は忘れずに!次回以降の反省点である。それにしてもこの長塀尾根は、ひたすら樹林帯を黙然と登って行く他に何の慰めもなく、頂上に着くまでひたすら耐えなければならない苦行のような道だったと思う。
1月10日(日)雪 2400M付近露営地ー釜トンネル
テント場の気温は昨晩も今朝も変わらず、マイナス17℃位を指していた。温度計を地表近くに置いていたので、実際の気温の定義としてはもう少し高いかもしれないが。テントから出て見上げると雪が降っていた。予報では、稜線は強風に見舞われ、風雪の荒れた天気になるそうだ。昨日登っておいて良かったと思うし、今日は下山するだけと思うと気が軽い。7時10分頃下山開始。しばらく行くと、予期せぬ登山客に遭遇。しかも10人くらいの大所帯である。やり過ごしたあとも、それぞれ単独行の2組とすれ違う。昨晩の降雪でトレースはどうなっているか分からないと教えておく。
徳澤から先も、登山か上高地散策か判然としないがとにかく多くの人とすれ違った。そして上高地BT付近まで来ると更に人の数が増えた。冬の上高地は雪に閉ざされ静けさに包まれているというのは嘘なのか?
ここに来て風雪は強まり、BT内で休んでいた自分のところにも襲い掛かってきた。逃げ出すように退散し、釜トンネルを目指す。この感じでは山の上は厳しいだろう。今朝蝶ヶ岳まで目指した人たちには気の毒なことだが。
釜トンネルには正午前に着いた。バスには時間があるなと思っていたところ、ゲート前には何とタクシーが6台も止まっていた。あの上高地の人の多さからして納得に思うし、ここまで自家用車で来られない登山・散策客は良いカモなのだろう。さて、そのカモがうろうろと近づいて来るのを見て、早速運ちゃんから声がかかった。急がないのでバスでも良かったが、折角なのでタクシーで沢渡の駐車場へ向かうこととした。雪は降り続いていたが、路面に雪はなくなっていた。「降っているのはこの辺だけ」という運転手の言葉通り、数時間後松本市内に戻ると青空だった。
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