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3日目の夜、明日になれば夜遅くには自宅に戻ることができる。奇跡的にもう一度会えるかもしれない、と期待が膨らみ始めたそのとき、携帯電話が鳴り響いた。着信を見ると自宅からだ。
私は何も考えず。いや考えたくない。とりあえず電話に出ると妻が電話口に出た。
「あのね」「あー」「ベルが逝っちゃった」
あとは電話の向こうで号泣するばかりでパニックになっている。
落ち着くように説得し、これからの行動を指示した。まず身体を綺麗に拭いてやり、多分明日までは大丈夫だろうけど箱の中に入れて氷を入れて置くように。
妻は獣医さんにも連絡を取っていた。切羽詰っているのは先生も解っていたので、何か有ったら何時でも良いから電話するようにと、携帯の番号も教えてくれていた。
翌日の夜になり、私は家までたどりつくと階段を登っていく。現実では有るが、言いようの無い息苦しい感覚を覚えながら、努めて冷静に玄関へ入っていった。
玄関を開けると妻は「おかえり」と何ともいえない顔をして、もう泣き疲れた後にベルの世話をしたせいか、淡々としている。
私はそのままベルの部屋へ行くと、寝室にエアコンの風を受けている小さな白い箱がある。白いガムテープで閉ざされたその箱を、少しずつ剥がしゆっくりと蓋を開けると、バスタオルに包まれ小さくなったベルが横になっていた。バスタオルをゆっくり剥がすと、目は小さく開け毛並みは完全にねてしまっている変わり果てたベルの姿があった。妻も後からそっと入ってきた。
私は右手をベルの身体に当て4日間帰ってくることが出来なかった事を詫びた。随分頑張ったんだってな。
ここまで涙が出ることは無かったのだが、今はこの部屋へ1人にして欲しかった。しかし声を出すと涙声になり、涙が止まらなくなりそうだ。私もベルと同じく気高くそういった姿は見せたくない方だ。
何とか耐えようとするが、ポタポタと落ちてきて耐えることができない。しばらくすると妻も一緒にベルに手を当て又号泣し始めてしまった。妻は辛過ぎるらしく、直ぐに隣の部屋へ行った。
私は手を当てたまま、ベルが若かった頃、一緒に遊びまくったり、引越ししたときに慣れるまで怯えてしょうがなかった事や、いつもうまいもんに目が無いこと、ギターの音が好きでいつも丸くなり、気持ち良さそうに聴いていた事などをベルと一緒に思い出していた。おそくなってごめんベル最後にもう一度テンダリーを聴いて欲しかった。
ここでちょっと不思議なことがあった。
つづく
左の写真は野菜を匂わされムッとするベル。右の写真は牡蠣フライをおねだりベル。比べるとその表情の違いが良く解ります。
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