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そこで手にとったのが山渓撰書・平山三男著「疲労凍死/天幕の話」である。フィクションも混じっているのであろうが、これを読むと、当時の山岳文化やスタイル、日本の農家が置かれた状況、遭難に至る経緯、低体温症の中バラバラになって那須連峰を下山していく生徒たち、遭難の報を聞いて、無事を祈るしかない家族の心情、遺された家族の思いなどが克明に綴られている。もちろん小説なのでフィクションも多いのであろうが、あまりにもリアルで、夢中で読んでしまった。もちろん小説なので、遭難の原因分析などは一切書かれておらず、全て読者の評価に委ねられているのもよい。
この本のあとがきに以下の記述がある。
「遭難報告書は貴重だ。でも、それは純正な記録だから『山に行った・いなくなった・捜索した・見つかった』が中心だ。ましてや遭難の現場、死の瞬間を想像して描くことは許されない。それができるのが小説の力なのだ。極現状況にあって生きることを最後まで求め続けたはずだ。・・・生きたい気持ち、その努力を書いておいてやりたい」
坊主沼避難小屋に寄ったことがあれば、この本に目を通して、胸躍らせて北那須を縦走し、悪天候の中必至に生きようとした当時の白河高校の生徒さん達に思いを馳せてみるのも悪くないだろう。
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