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「システム」とは、私たちの世界を規定する枠組みであり、登山を例にとれば、その最たるものがGPSであると筆者は述べる。システムは、通常であれば、私たちの安全を約束する存在であると同時に、私たちの心と身体を束縛する存在である。しかし、システムの中にいると、そのことすら気が付かない。
「空白の5マイル」は本多勝一的冒険論の実践であり、「極夜行」は「脱システム」としての筆者が定義付けた冒険論の実践であろう(但し、前者も脱システムとしての冒険に包含される)。そもそも「陽の昇らない北極圏の世界に数箇月間身を置く」という発想は、普通思いつかない所業である。
「極夜行」では、予測しなかった、もしくは、望まない現象が次々目の前に起り、死と隣り合わせの日々が繰り返されるが、そのことでかえって「生」を意識させるのだろう。そんな中で、筆者の、日々葛藤や後悔に悩む姿や「クソがっ!」と喚き散らす姿、終盤の家族や知人とのやりとりは、実に人間臭さを感じさせる。
因みに、「極夜行」を読む前に「極夜行前」を読んでおいてよかった。そのことで、「極夜行」が成立する所以が理解できたし、冒険と無謀との違いも理解できる。
私自身「脱システム」なんて思いもよらないけれども、「脱システム」の考えは、大いに共感するとともに、自分の山歩きを豊かにしてくれる重要な視点であると改めて感じた。
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