ギビッ
という音が身体中に響きわたり
「腰が破れた!」
と叫ぶ事も出来ないまま、天命尽きたセミのようにマットに沈んだ。
あの時辞めとけば!という後悔の念が頭を渦巻く。
最近歳を重ねたばかりだというのに、一切成長をしない男の腰痛備忘録。
時は5日ほど巻き戻る。
その日の土曜日は休みなのを良い事に、12時間近くの長寝をしてしまっていた。
昼前に起床してから日中は買い物と車の洗車をし、夜は忘年会へ電車で移動。
その頃から何故か腰が痛む。
忘年会が始まってからもその痛みは続いたが、酒も入ってどうでも良くなっていた。
翌日の日曜日は、腰は痛いが不思議と登っている最中は痛まないので、靴を履き、座っている所から立ち上がる際に身体が軋むような痛みを耐えれば、ボルダーで1日遊ぶことができた。
そして翌日は、同じ様な痛みが続き、仕事中もデスクから立ち上がる時の痛みに耐えれば動く事はできた。
しかし、これでは悪化は免れないと思い、サポーターを巻いて、毎週恒例のウィークリーセッションに参加して、普段通りの実力でクライミングを行う事ができた。
(と思っていた)
翌日は何時も通りレスト。
その時は、自分の腰の異常は反り腰によるものだと思い込んで、足の付け根を中心にフロント部分のストレッチを行い、それは実際に効果があって回復しているかに思えた。
そして来たる12月18日水曜日。
それなりに身体は動くので、いつもの様に追い込んで、それなりに何時も通りのレベルの課題を登り、140°壁で自作課題で遊びつつ、ボロボロにヨレた所で、いつもの130°長モノで追い込み始め、手はガバで、両足ヒールという豚の丸焼きみたいな体勢でレストしていると。
冒頭のビギッという激痛が走った。
ゴムを引き裂いたような痛みが走り、本当に腰が破けた!と思った。
起き上がろうと思うが、動けない。
英語圏ではぎっくり腰を魔女の一撃と言うらしいが、まさにクリーンヒットを喰らったように、自分の身体が全力で動作を拒否している。
たまたま居合わせた整体師のNさんに、ヤレヤレと臀部の付け根を押されると、腰とは違う激痛が走る。あぁこれは凝り固まった筋肉の痛み。。。
ヒーヒー言いながら応急処置を受け、何とか仰向けから、うつ伏せになり、腰に力を入れないように重心移動でもって立ち上がる。
ゆっくりと歩いてベンチに座る。
そしてもう動けない。
上半身は元気。何なら下半身も元気。
でも動けない。
廻りの適当な雑談に加わわりつつ、冷や汗をかきながら平静を装いつつ、何とかかんとか身体が動くようになってから着替えて、ジムを後にする。
それからは車の乗り降りは激痛だが何とか運転は出来て帰宅。
何とか動く範囲で服を脱ぎ、風呂に入り、服を着て寝る支度を整え、何年前に買ったものかもわからない、モーラステープを腰に張り、先ほど応急処置で指圧して貰った点をマッサージしてから眠った。
ぎっくり腰1日目が終わった。
1日目の状態は、とにかく腰に力が入らないというか曲がらない。
人は腰が曲がらないと動作の半分以上が制限される事を知った。。。