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今の時代はgoogleで「単独登攀」と調べると、既に先人様らがソロについて研究を重ね実践し、紹介してくれているのだ。
だが、1から10まで事細かく情報を載せている程甘くはない。
色々試行錯誤しながら結局は自分でシステムを確立していかなければならない。これだとう正解は今のところ無い。
一般的に単独登攀といえばZ法が主流となる。Z法のZとは↑↓↑を一筆書きにした時をそのまんま文字にしただけで、つまり・・・
『登って、降りて、登る』という事。
結局、1人で登っているのに結局2人分登らなければならない。
むしろ2人の登りに行けば、トップが登ってビレイをしてフォローがギアを回収しながら登ればいいので、1人1回だけ登れば済む。しかも装備は分担できるので負担も少ない。
且、1人の場合は、降りるが行程に加わるので、2人で登るよりも手間がかかってしまう。ペアとソロを比べて見ると2倍の負担どころじゃないのだ。
しかも怪我でもすれば一発アウト、誰も助けてくれないので精神的な負担も大きい。たまに1人で登っているだけで、冷たい目で見られる事もある。
殆どの山岳会が単独登攀を禁止しているのは、そういった負担が大きく、ただでさえ危険が伴うスポーツをわざわざ危険にする事ないだろうというのが常識的な意見だろうと思う。ゲレンデで事故でも起して下手すればゲレンデが使用禁止になる可能性もある。お手軽に出来なくもないが、お気軽には手を出すと痛い目に合うかもしれない。
一人で登ると一言でもトップロープで登るのとリードで登るのとでは大きく違ってくる。正直トップロープで登る分には、上記のような負担というのは殆ど感じない。相方をビレイしてあげる時間もないし、ロープだけ落としてしまえば、集中して練習が可能だ。
実際危険度を考えても二人でやろうと三人だろうが、ロープを繋ぐ支点に頼るしかないので変わらない。
今回はそのトップロープで登るシステム(我流)をこっそりまとめようと思う。
1.システム概要
既にインターネット上に多くの人がシステムを紹介しているけれど、ざっくり言うと、『ロープを垂らして、自分をアッセンダーでロープと繋ぐ』である。
アッセンダーとは、僕が使っている画像1のようなグリップ付のアセッションの他やグリップのついていないシンプルなベーシック(どちらもPETZL)のような登高器。シンプルな機構でロープをどちらか一方向のみ流すというギア。リードでのソロクライミングでは一回降りてからの登り返しに使う事が多い。詳しくはグーグル先生に「ユマーリング」を教えて貰うといい。
アッセンダーを使ったトップロープでの登攀では、アッセンダーをハーネスと連結し、ロープを通せばストレスなく自分が登ればロープは流れ、万が一フォールすればその場で止まる。
人にビレイを頼めば、たまたまフォールした瞬間に油断している事もあるだろうが、アッセンダーさんなら油断するというはない。
2.支点を作る。
スリング一本とアッセンダーにザイル、ハーネスがあればソロでもフリークライミングが出来るが、問題点がないわけじゃない。何度も言うようにお手軽だが、お気軽では恐い。
まずは支点の確保。落ちても大丈夫と言えるのはロープを固定する支点が確実なものであるからだ。ユマーリングして登り返すにしても弱い支点では何度も過重をかければ危険だ。万全を期して支点は最低3点は確保し、なるべく加重は分散させておきたい。
トップロープを落とす支点を環付カラビナとテープスリングで最低3箇所は確保し、大きめの環付カラビナにロープと支点のスリングを連結する。
これだけでテープスリング3本、環付カラビナ4枚になる。
しかも支点はまったく均一に打たれているわけではないので、テープスリングは長さが異なる種類を持っていく必要があり、微妙な距離はクイックドローも使える。
また、ロープを落とした時に岩角でロープに負担がかからないようにする工夫も必要となる。専用のロープカバーも売っているが、タオルやウレタンマットの切れ端などを巻きつけて代用する事もある。支点がしっかりしていてもザイルが切れてしまえば無意味だ。
また、ロープに加重が掛かり、張った状態でないとアッセンダーをロープが流れてくれない。下に荷物を吊るして重しにしている人もいるが、僕は余ったロープを束ねて重しにしている。ザックなんかで重しにするとロープを動かすたびにザックを振り回すので、直ぐにボロボロになる。重すぎるとロープを引き上げる事に苦労するし、登り始めの左右に体を振ることすら出来なくなるので程よい重さはそれぞれ調整する必要がある。
3.宙吊りからの脱出
支点を設置して、何も考えなしにハーネスにアッセンダーだけつけて登ってしまうと大変な目にあう。アッセンダーさんは落ちた時に止めてはくれるが、地面に降ろしてくれはしないのだ。当然、宙吊りになってしまう。
垂直やスラブであれば直ぐにホールドを掴んで登る事が出来るが、ハングした岩で落ちた場合はホールドまで手が届かない(画像2)
こうなってしまえばお手上げで、再び登攀は難しく、テンションがかかったアッセンダーは中々解除できないので、片手でロープを掴んで自分を持ち上げてアッセンダーを解除して落ちるか、ザイルを切って落ちるか、ロープを使って登るかなので、僕はロープを使って登る事にしている。
脱出に一番いいのはビレイに使うアッセンダーの他にアッセンダーを持っておいて、それを使って登るのが一番簡単だ。2個あると尚良いが、せっかく身軽にトップロープで楽しんでいるのにもったいないので、80cm程度の幅広テープスリングを使ってフレンチ・ブルージックでユマールすることにしている。
ロープにセットしたスリングを上げて、余らした端部に足を乗せて体を持ち上げ、アッセンダーを上にずらして体重をかけ、再びスリングを上げて足をかけてを繰り返して、尺取虫のように体を伸び縮みさせて登る。これなら軽いスリングで脱出できるし余計な重荷にならないで済む。
4.装備
僕がトップロープで登攀する時は、
・シングルロープ50m 1本(10mm前後)
・ハーネス、チェストハーネス(環付カラビナで連結)
・アッセンダー 1個
・テープスリング 15cm4本、80cm5本、120cm2本、240cm1本
(支点用とユマール用 巾も種類を揃えたい)
・ロープスリング(8mm以下のロープを持って行って加工する)
・環付カラビナ7枚以上(支点用4、ハーネス用2、下降器用1 他)
・カラビナ5枚(スリング等を持ち歩く用など。あればあるだけ使う)
・エイト環(下降器は何でもいい。ATCよりは8環の方が扱いは簡単)
当りを持っていく。結構これだけで重いもので10kg近くなる。
30リットルザックがてんこ盛りになり、おやつが入らなくなる。
安全を考えるなら他にもヘルメットやバックアップ用にシャントがあると良いかもしれない。
アッセンダーの他に、ビレイ器のグリグリ、バックアップ用のシャント、ソロデバイスであるソロイストなどが、同じようにロープを一方向にしか流さない機能を持っているが、一番簡単なのはアッセンダーだと思う。難点はロープを止める機構がトゲとなっていてテンション掛かったまま解除しようとするとザイルの皮膜を傷つける事だが、それも気をつけていればそれ程ダメージを与えないで済む。シャントはロープにダメージを与えないが、金属との摩擦によって止める機構の為、あのツルツルに全体重とかけて落ちた時に止まってくれるかどうか考えると恐い。後はスリングをブルージックにして登るという方法もあるが、何かとトラブルが尽きないし面倒だ。
簡単なシステムなのにいざやろうと思うと荷物が嵩張るし、それに比例して当然お金もかかるが、徐々に買い足して行けば良いというものでもないので他の人の記事も参考にしながら準備をして家で色々試して見ながら必要なものを買い足し、あらゆる場面をシミュレーションしながら実践して欲しい。
何も知らない初心者でもわかるように書いたつもりだけれど、一部クライミングをかじっていないと分からないような言葉も使った。簡単なシステムではあるけれど、やっぱり岩場によってはソロで登ってはいけない雰囲気もあるし、ましてやジムでは絶対にソロクライミングはやらせて貰えない。常連のジムに練習させてくれと頼んで許可があればいいが、基本的にはNGな行為だろう。
自分が悪い事をしているという自覚はないけれど、存在するだけで迷惑をかけているという実感があるのも事実だ。さっきも書いたが万が一事故でもあれば岩場が使用禁止になる可能性もあるのだ。マルチピッチを登っていれば、渋滞の原因にもなる。おかしな話だが、1人で登る方が他のクライマーに対して人一倍気を使う必要があるのだ。岩場によっては単独登攀が禁止されているところもあるので、必ずチェックしておきたい。
以上、自分に対しての復習や見直しも兼ねての紹介となったが、ご意見あれば遠慮なく言って貰えたらと思う。クライミングは誰でもやれるスポーツだが全ては自己責任なのであくまでも参考程度にして貰いたい。
これからクライミングを始めよう。でも仲間が居ないから中々踏ん切りつかないという方。たまたま見つけたこの記事でやってみようと思ったらまずはボルダリングからやってみる事をお勧めする。あわよくばジムとかで友達も出来る。リードをやりたいと思えばその人達とやればいい。1人は成長も遅いし、寂しいし、危ないぞ。いつも隅っこの湿った壁でしか練習できないぞ。滑りに滑って身の丈に合わないグレードに手を出したりして1ピン目すらたどり着けなかったりするぞ。勝手に上手い人だと思われて恥ずかしい思いしたりするぞ。
わかっちゃ居るけど1人で登るんだよなぁ・・・・・・。
kaakakaさん初めましてこんばんは。
とても分かりやすい説明をありがとうございます。
岩は40年近く前から基本ソロじゃないですが一緒に練習に行く連れがいないときはソロでトップロープで登っていました。ソロの時はクライムダウンもよくしました。
オーバーハングで宙吊り状態になった時の脱出はある意味いちばんテンションが上がるときですね。私はプルージックを使いこなしていましたが読ませていただいて器具も考えようかなと思いました。
私たちは環付ビナは実はほとんど使わなかったですが最近再び始めて年をとったので感性が弱まっているので道具に頼ろうかとも思う気になってきました。
私にとってとても参考になる良い日記となりました。ありがとうございました。
>>murrenさん
こちらこそ初めましてkaakakaと申します。
40年以上のベテランクライマーにコメントを頂きまして大変恐縮です。
僕は最近始めた人間なので、道具が充実しているのが当たり前な世代なもので道具ばかり増えて技術が一向に身に付かないばかりでお恥ずかしい限りです。
初期段階では環付ビナはハーネスと繋がる部位にしか使っていませんでしたが、墜落事故などの例を通して徐々に通常のビナから環付に変わって行きました。
環付ビナもロックの解除が容易ですので、それ程それに対してストレスを感じませんしね。
今後も思いつくところは日記にして行きたいと思いますので、宜しくお願い致します。
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