アケボノツツジ咲く西赤石山、二ツ岳

2020年11月15日 07:58短歌でつづる四国の山全体に公開

　新居浜の最初の印象は、赤石山系の圧倒的な存在感である。銅山峰、西赤石山、東赤石山、二ツ岳と続く1600ｍ級の赤石山系は、海岸から数キロほどの平野部から一気にそびえるように立ち上がり、あなじ風が吹く冬には、峰々が白く輝く。また、春には、時に猛烈なやまじ風が吹き下ろして大きな被害をもたらすこともある。初夏から夏にかけて虹が立つことも多い。
　その赤石山系の峰々の春を彩る花といえば、芽吹きの前に咲くアケボノツツジである。春のゴールデンウィーク頃に稜線に咲くピンクの花は、実に華やかだ。
　アケボノツツジは、赤石山系の中でも西赤石山（1626m）が随一だと地元の人に聞かされた。西赤石山は、銅山越（1294m）から主稜線をたどることになるが、銅山越には市内側の鹿森ダムから登るコースと大永山トンネルを超えて旧別子地区の日浦から別子銅山の遺構をたどりながら登るコースがある。どちらも、別子銅山の繁栄の跡をしのぶことができる。この時は、半月ほど前の4月の中旬に旧別子の日浦から銅山峰まで偵察がてら歩いたので、鹿森ダム側から登った。
　アケボノツツジが見られるのは、当然主稜線に出てからである。初めて目にしたときは、祖母山でミヤマキリシマに出会ったときと負けず劣らず感激した。とりわけ山頂から兜岩にかけての北斜面の群落には圧倒された。
　翌年は、4月27日に二ツ岳（1647m）でアケボノツツジを楽しんだ。
二ツ岳は角閃岩の岩峰が見事で、雪が降ったときなどとりわけ険しい山姿を見せる。市内の東のはずれにある黒島公園や新居大島に遊べば、赤星山とともにその山容を楽しむことができた。
　その二ツ岳には、隣町の土居町から浦山川沿いの林道をたどり中ノ川登山口から更に奥にある登山口から登る。
　しばらく上ると、右手に敬天の滝が見える。岩肌を細い筋を引いたように落ちる滝は、秋の季節にはもっと素晴らしいに違いないと思わせた。ワサビ沢を渡り、造林小屋跡を過ぎて植林帯を行くと、蛾蔵越（がぞうごえ）に出た。蛾蔵越は、小箱越と並び嶺南と瀬戸内を結ぶ古い往還である。別子銅山とのゆかりもあるという。
　ここから稜線をたどり二ツ岳を目指す。最初の岩峰あたりから、稜線の東斜面にかけてアケボノツツジが群生し、ピンクの花が青空に映える。あと1週間もすれば、もっと素晴らしいだろう。
　　「峰に咲くアケボノツツジに風わたり花びら淡く光かがやく」
　鯛の頭と呼ばれる大きな岩を巻くように進み、30分も歩くと山頂に着いた。狭い山頂は、土居町公民館主催の二ツ岳登山に参加した子供や中高年の男女らが一休みしていた。ここまで人っ子ひとり会わなかったので、これにはびっくりした。
　山頂は見通しがきかないので、南側の岩場で展望を楽しむ。二ツ岳からエビラ山、東赤石岳への岩稜はいかにも手ごわそうだ。眼下の瀬戸内の海と海岸線が美しい。ちょうど黒島港から新居大島へ12時40分発のフェリーが海を渡っていくのが見えた。
　その年は、連休後の5月10日にも旧別子の日浦登山口から西赤石山に登ってみた。ところが、稜線には花の姿は、跡形もない。なんだか狐にでもつままれた思いである。よく見ると枝先に茶色に変色した花弁がこびりついている。どうやら、数日前の季節外れの冷え込みと強風雨ですっかり枯れてしまったようだ。この日は、銅山峰に自生するツガザクラが見られたのは唯一の慰めだった。

【山行記録】
①二ツ岳　2003年4月27日
　中の川登山口から　　9:47敬天の滝展望所　10:44蛾蔵越付近　11:29鯛ノ頭　　12:00二ツ岳山頂　14:08敬天の滝展望所　中の川登山口へ
②西赤石山　2003年5月10日
　日浦登山口から　10：31接待館跡　10:39学校・劇場跡　10:49ダイヤモンド水　11:12　大山積神社跡　11:20蘭塔場　11:30歓喜間符　歓東間符　11:44旧牛車道　　銅山越　　12:14銅山越　　稜線のアケボノツツジは、枯れて跡形もない。13:19西赤石岳　14:37第1通洞南口　14:47東延斜坑跡　　日浦登山口へ　

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