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銅山川源流部の別子山中七番に銅山事業を支える森林造成のための苗木栽培所が置かれたのは、明治15年（1882年）のことである。
今は、この住友林業ゆかりの地に「大造林計画」100周年を記念して住友フォレスターハウスが整備されている。この「大造林計画」は、明治27年（1894年）別子銅山の支配人となった伊庭貞剛が「濫伐のあとを償ひ、別子全山を旧のあをあを（青々）とした姿にして之を大自然にかへさねばならない」（注� 砲箸了廚い芭�案し、実行したものである。
平家平、冠山には、2005年11月初旬にフォレスターハウスを起点にして周回した。以下その思い出である。
新居浜市内から車で鹿森ダムを越えて足谷川沿いに進み、銅山峰から笹ヶ峰につらなる稜線下にある大永山トンネルを抜けると旧別子山村に入る。そこから更に15分ほど車を走らせると、中七番にある住友フォレスターハウスに着いた。
落葉松の林が美しい敷地内には、伊庭貞剛の句碑「五か年のあと見返れば雪の山」が建てられていた。この句は、伊庭が任務を終え新居浜を離れる船上で、その感慨を詠んだものである。この句には後日談があるそうで、畏友の品川弥二郎が「月と花とは人に譲りて」という下の句をつけて返し、伊庭の無欲で潔い人柄を称えたのだという。
空は雲一つない晴天である。きれいに手入れされた黄葉の林が進み、まずは平家平に向けて登山開始である。1時間も登ると、西赤石山が木の間より顔をのぞかせ、広葉樹の木々もブナが目につくようになる。
「尾根に出（い）で空見あぐれば褐色に染め上げしブナ天を覆へり」
送電線鉄塔から更にブナやトチ、カエデの林の中を45分ほど登っていくと、ようやく稜線（巡視路分岐）に出た。ここまでくれば、平家平のなだらかな姿が眼前に現れ、ちち山、笹ヶ峰へとつながる稜線が見渡せる。振り返れば、二ツ岳。気持ちのいいシコクザサの道をすすむと平家平（1692m）の山頂も間近である。のびのびとした笹原の山頂で、ゆったりと景色を堪能して冠山に向かう。
ここからは、笹原の登山道の踏み跡は狭く、いささか歩きにくい。それにしても石鎚山まで遠望できる景色は、何物にも代えがたい。1時間ほどで冠山（1732ｍ）に着く。山頂はせせこましいが、下りながら振り返るとボリューム感のある山頂部はいかにも冠山の名にふさわしい。
一の谷越からなすび平に下る。途中、銅山川の源流の碑があった。木の根の隙間から水がしずくのように滴り落ちている。この水滴が吉野川へと連なっているのだと思うといとおしい気持ちになった。
なすび平では、昨年春に中七番の山中の涸れ沢で滑落し、とぼとぼとした足取りでたどり着いた時のことがしきりと思い出された。以下その時詠んだ歌も載せておこう。
「とりどりに木々めぶきそむ陽だまりに穏やかにさける片栗の花」
「紫の花風車咲きにほひ傷負ひし吾の心なぐさむ」
当時のなすび平は、カタクリの季節になると多くのハイカーが訪れていたものだが、近頃ではシカの食害で見る影もないという。そんなニュースを耳にすると本当に悲しくなる。
なすび平からは、平家谷の方に下る。一度渡渉し、奥七番川の河原に出た。紅葉、黄葉に彩れている伊予青石の渓流を眺めながら一息入れる。
「ひたすらに紅葉の山歩み来て甘露甘露とのどを潤す」
川沿いの道を歩いていくと、昨年幾度となく新居浜を襲い大きな被害を出した台風のせいだろうか、道が大きく崩れていたのには、いささか戸惑った。
秋の山の日暮れは早い。フォレスターハウスに人影はない。
注� Ш�に生きる住友語録「国土報恩」より 住友広報委員会
https://www.sumitomo.gr.jp/history/analects/06/
（山行記録）2005年11月5日
10:30住友フォレスターハウス 11:37送電鉄塔 12:22鉄塔巡視分岐 13:05平家平 14:09冠山 14:45一の谷越 15:01銅山川源流の碑 15:28なすび平 15:57奥七番川出合 16:44フォレスターハウス
（注：現在、中七番からなすび平、一の谷越のルートは道が荒れていて通行禁止の由）
参考資料��
「新居浜市観光サイト フォレスターハウス」
https://www.city.niihama.lg.jp/kanko/37/forester.html
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