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山はそれぞれ、色々な魅力を持っている。夕日や朝日が楽しめる山、めずらしい花が咲く山、紅葉が美しい山、笹原の山、海が見晴るかせる山、遠く名山に会える山、数え上げればきりがない。
その中には、巨木に会いにでかける山もあるだろう。愛媛の旧別子村と高知の大川村との境にある大座礼山(1587m)は、そんな山の一つだ。お目当ては、巨木のブナが続く尾根道である。
新居浜市街からその大座礼山に行くとなると、大永山トンネルを抜けて旧別子村の筏津に出て大田尾越に行くのが、最も手っ取り早い。
11月の初めの土曜日、午前中に用事を済ますと、出発は昼過ぎになった。今回は、木々の黄葉、紅葉にも、山の頂の景色にも執着はない。まして晩秋の山歩きを日永たっぷり楽しもうという考えはなかった。もっぱら巨木に会いに行くのが目的だから、頂にすら至らなくてもかまわないのだ。
だが、大田尾越からしばらく高知県側に下った登山口に着いたのは、もう午後3時近かった。晩秋の夕暮れは早い。いくら楽なルートとはいえ、ブナの巨木の尾根は山頂間近にあって、標高にして400mは登らなければならないから、自然と気がせいて急ぎ足になった。
稜線との分岐の名野川越までは、小さい沢をわたり、大北川源流部を過ぎてトラバースの道を進む。この辺りの道は、瀬戸内と土佐を結ぶ古道だという。それは、別子銅山が大量の木炭を使って山中で精錬していた時代の炭の道の一つでもあったろう。稜線の分岐に来ると、木々はもう枯れ果てていた。
尾根道沿いに登っていくと、ブナの巨樹が目の前に現れた。幹がいかにも太い。いったい目通しどれぐらいあるだろうか。それにしても凸凹と襞のある太い幹が途中から八方に枝をのばし、これまで見てきた樹高の高い伸びやかなブナの巨樹とはひどく印象が違う。このずんぐりとしたところが、四国型のブナの特徴だという。
巨樹の生えているあたりは、平坦で、その間をゆっくりと進む。道から少し離れた傾斜地にあるブナの根元は、落ち葉に覆われているが、風が吹き抜けるのか登山道にはほとんどなかった。
季節と時間によって色彩を失いかけた世界。巨樹が何か話しかけてくるような気がして、幹に身を寄せて耳を澄ます。もちろん、風の音が聞こえるばかりである。
このブナの巨木群も、最近の山行記録では、樹勢が衰えて昔の面影はかなり失われてしまったようだ。わずか、20年ほどの時間の経過である。自然の営みは、厳しい。
(山行記録)2003年11月1日
14:51 登山口 15:46頃からブナの巨木群 16:04山頂 16:41大北川源流部 17:01登山口
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