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なにしろ、かくいう私も若い頃出張の合間に山を登ったことが一度となくあったからである。
北海道のアポイ岳に登った時もそうだった。
アポイ岳は、日高山脈の最果ての山で、えりも岬から40kmほど離れた海岸近くにある。標高こそ810mに過ぎないが、橄欖(カンラン)岩の山体には、多くの固有種を含む高山植物が生育し、花の山として知られている。
この山には、昭和52年(1977)5月30日(月曜日)に登った。札幌出張の用務は、動物園や水族館の関係者が集まる会に出席して、様々な方々と懇談することだった。仕事は火曜日と水曜日の2日間なので、日曜日に一足早く北海道に渡れば、まる1日の時間が生まれるというわけである。
東京から空路千歳まで飛ぶ。千歳空港は、当時まだ航空自衛隊と共用していた千歳飛行場の時代である。そこから国鉄に乗って苫小牧に出て、日高本線の終着駅の様似まで行き、前泊した。
駅前の観光案内所で買ったのだろうか、私の手元に「アポイ岳の高山植物」という小冊子が残っている。本の発行者は北海道様似町、編集は様似町文化協会北方植物研究会で、昭和48年4月1日刊行されたものだ。そこ見開きに様似駅のスタンプと様似町観光協会のアポイ岳登山記念のスタンプが押してあって、そこに登山した日の日付が入っているのだった。
また、観光協会の1977年の登山記念のシールもあって、その図柄には、昭和48年(1973)に発見された新種の蝶「ヒメチャマダラセセリ」と固有種の植物の一つ「エゾコウゾリナ」がアポイ岳とともに配されている。写真一枚残っているわけでなく、思い出の品はこれだけだ。
北海道は学生時代に牧場でひと夏を過ごしたなつかしいところで、アポイ岳に登った日の夜も札幌で旧友たちと集まる約束がしてあった。当時様似駅から札幌駅まで急行の「えりも」が一日3往復運行されていて、4時間ほどで行き来できたとはいえ、山に登って夕方札幌にたどり着くにはあまり時間的な余裕はない。
翌朝、バスで5kmほど離れたアポイ岳登山口のある冬島に移動する。山頂まで普通の足だと2時間半はかかるから、最短ルートを急ぎ足で往復した。
この季節、5合目から上の岩礫地にはアポイアズマギクやサマニユキワリ、アポイカラマツなどが、また馬の背のお花畑ではアポイクワガタ、アポイゼキショウなどの花々が見られたはずなのだが、どんな花を楽しんだかもう記憶に残っていない。
森進一の「襟裳岬」が流行ったのは、この数年前。この歌を聴くと、襟裳岬から続く海岸線から吹きわたってくるアポイ岳の風を今も感じるのだった。
学生時代に牧場で一夏過されたなら、なおさら印象に残りますね。
『吹きわたってくるアポイ岳の風』素晴らしい表現で、ついコメントさせて頂きました。
あたたかいコメントありがとうございます。
ery100さんも、2013年7月11日にアポイ岳に登っておられるのですね。森進一の歌声が重なる感じなど、同世代でないと分かり合えないかもしれません。
私が過ごした牧場は、丘に登るとオホーツクの海が見渡せるところでした。
流氷が押し寄せる冬の夜は氷のきしむ音がすごいという話を聞いて、卒業の年の3月に再訪したのも、良き思い出です。
その牧場も後継者に恵まれず、7年前に牛を飼うのをやめました。
ただ、嬉しいことに、今年の正月も、大木に育ったヤチダモの木を眺めて「春」を待ちますとの便りが届きました。
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