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化学繊維もあまり種類のない昭和40年代、山シャツは起毛性のある織り方をしたウールの長袖でなければならないと考えられていた。山シャツは、チェック柄が多い。汚れが目立たないとか視認性がいいなど諸説があるが、試しに高校時代に山でとった写真で確認してみると、やはり茶系統のチェックの柄のシャツであった。
ただ、気に入った山シャツとなると、見つけるのはなかなかむつかしかった。細身で背が高く、人一倍腕が長かった私には、ぴったりサイズの既製品がなかったのである。仕方がないので、腕が袖から不格好に飛びだし、裾がズボンのウエストバンドからしばしばまくれあがる代物を我慢して着ていたものだ。
しかし、厳冬期の山に登るようになると、そうとも言っておれなくなった。父親のお古の純毛の下着に腹巻を着け、シャツの裾がまくれあがっても我慢できるように工夫してみても限度があったのである。
身丈、裄丈（ゆきたけ）のたっぷりある信頼できる上着が是が非でも欲しくなった時、裁縫が得意だった姉が助け舟を出してくれた。外套用の純毛の厚手の生地を使って作ってくれるというのだ。工業用ミシンを使って縫い上げるのはさぞかし大変だったと思うが、１月もすると出来上がってきた。これは、実にありがたかった。
この山シャツは、就職した後も長く愛用した。ただ、元々コート生地自体は収縮処理がしていないので、大汗をかく登山の激しい使い方では、しばらくすると酷く縮んでしまった。これでは積雪期や残雪期の登山に不都合が生じるので、あれこれ知恵を出して仕立て直してくれた。確か、腕の途中から一旦ちょん切って、15センチぐらい裄丈が長くなるように上腕部に生地を足して補修し、背中の部分も同様に、十分な身丈がとれるよう生地を足してくれたのだった。
次に思い出に残る山シャツは、たまたま登山店で見つけたアメリカ製のチェックのシャツだ。試着すると、アメリカ製だけあってMサイズなのに裄丈がまだ余裕がある。しかも決してだぶだぶではなかった。かなり派手な色彩とデザインのシャツで、値段も結構張るものだったが、衝動買いした。
これは、今も着られるほど状態もよく、思い入れも深いので、手元に大切に保管している。今回この記事を書くにあたって、改めてメーカー名を確認すると、「ワイオミング ウーレンズ」とある。これを手掛かりに調べてみたら、愛用の山シャツは、ウール80%、ナイロン20%のカウボーイシャツで、1970、80年代にかなり流行したものだったということが分かった。この頃では、同じようなものが、ビンテージ古着としてヤフオクに出品されているのだから、驚きである。
実に丁寧なつくりで、ヤフオクの説明を拝借すると、「ウエスタンヨークやポケットのフラップ、前合わせの部分はウール生地が二重になっており、襟ぐりと袖ぐりにはナイロン系別布の補強布が付いている」価値ある逸品だった。
数年前、これを着て御嶽山に登っていたら、なつかしい登山スタイルだと、声をかけられてしまった。
最近は、秋山や夏の高山の服装には、もうこだわりもなくなって、大衆的なブランドの化学繊維の厚手のシャツを着ているが、その生地も近頃どんどん薄くなっていくようで、なんだか物足りない。
やはり、身に着けるものは、納得のいくものを選ぶべきだと、山シャツの思い出にふけりながら思うのだった。
写真�々盥算�代に買ったチェック柄の山シャツ
写真�∋个�コート生地で仕立てた山シャツ
写真��今やビンテージ古着のアメリカ製の山シャツ
シャツを縫ってくれた素敵なお姉さんに感謝ですね。
コメントありがとうございました。
わたしは、靴の方はよかったのですが、若い時分にイージーオーダーでワイシャツを誂えるのは、実に財布に優しくありませんでした。今では、スリムサイズの方こそ長い袖のシャツを見かけるようになりましたね。
結婚披露宴で嫁さんのたっての希望で、白のタキシードに衣装替えしてキャンドルサービスしたのですか、タキシードの袖口からワイシャツがとび出ていて様にならない写真だけが残ったのには、参りました。
今ではよき笑い話です。
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