|
いつかその山容を見てみたいと思った若かりし日の夢は、後年意外なことで実現した。その思い出を綴ってみた。
30代の前半、中国で海外生活を送っていた時に一時帰国休暇を得たことがあった。こんな機会は一生に二度とないに違いない。そこで、日本に直行しないで、わざわざ香港経由で妻とヨーロッパを旅行して日本に帰ったのだった。
この旅行では、スイスのアルプスとイタリアのローマには行ってみたい。アルプスは、もちろんガストン・レビュファの映画、ローマもこれまた映画「ローマの休日」の影響である。
同僚は、ユーレルパスを使えば、鉄道は乗り放題で、スケジュールの自由度が高くなるし、何よりも経済的とのアドバイスをくれた。そこで、あれこれ考えて、パリ観光から新幹線を使ってスイスのジュネーブに入り、ツェルトマットでアルプスの山並みを見て、イタリアへ。イタリアでは、ローマ、フィレンツェ、ベネチアを回ってドイツ経由でパリに戻るという大旅行計画を立てたのだった。
ジュネーブには知人がいて、マッターホルンの麓のツェルトマットのホテルを予約してくれたのには大助かりだった。鉄道を乗り継いで夜遅くツェルマットに着くと、４月の中旬というのに雪がはらはらと降りしきっていた。
翌朝も、昨夜来の雪が静かに降っている。9時16分発の登山電車に乗って、ゴルナーグラートに向かう。我々2人を除いて、みなスキー客ばかり。私はオーバーコート、妻はえんじ色のヤッケ姿と、場違いの珍客といった趣だ。
標高3100mにあるゴルナーグラートは、昨日一晩で30�僂寮兩磴任△襦Ｃ紊い燭箸�は、まだレストハウスの従業員が雪かきの真最中であった。時計はちょうど10時半。マッターホルンの雄姿がガスの切れ間からかすかに見える。さらにロープーウェイを乗り継いで、標高3405mのストックホルンまで上がると、マッターホルンを遮るガスも晴れ、モンテローザなどアルプスの山並みが一望できた。こうなると、マッターホルンは、巨大な山々に包まれて華奢な山容に感じられた。
12時近くなり、ロープーウェイと登山電車を乗り継いで、麓のツェルマットに下り始める。ロープーウェイから大自然の巨大なゲレンデでスキーをしている人々の姿が見える。思わず、羨ましい気持ちがわいてくる。登山電車は、往復40スイスフラン、ロープーウェイは往復28スイスフランだった。下りたところで、いささか遅い昼食をとる。ツェルマットでは天気に恵まれず、ついに山の頂を見ることができなかったのが、唯一の心残りとなった。
なお、今はゴルナーグラートとストックホルンを結ぶロープウェイは撤去された様なので、こんなまねはできないらしい。
参考情報：ガストン・レビュファについて
「ガストン・レビュファ：山を攀じ登り表現したアルピニスト」
https://yamahack.com/books/m04/vol02
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する