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茶会の行われた建物は、京都御所の中にあった九条邸から移築された由緒あるものだそうだが、茶席としては開放的な雰囲気だったので気が楽になった。
茶会を仕切るお茶の先生も、茶の心得のない者たちに鷹揚に接してくれるので助かる。とはいえ、まずはお道具の拝見をしなければならない。掛物には、「花香千里行 人徳萬年薫」とある。傍らの生け花を見ると、小ぶりの梅の古木に蕗の薹（フキノトウ）が添えてある。目を凝らしてみると、小さな白い花が線香花火のように複散形の花序をなしていけられていた。これはひょっとして山で出会ったあの花ではと思い尋ねてみると、やはり仙洞草（セントウソウ）だという。
花材店で手に入るようなものでない。茶会前日に、先生自ら目星をつけていたところまで車を走らせて、採りに行って来たという。一期一会の世界とは、こういうものだと痛く感じ入った。
さて、山で出会ったセントウソウの話である。
セントウソウは、セリ科セントウソウ属の日本固有の草木で、早春に他の花に先駆けて咲くので、山で比較的容易に見つけることができる。しかし、何といっても地味で目立たない白い小さな花では、見栄えがしない。それをカメラで格好よく撮るのは、なかなかむつかしい。ヤマレコの花レコを見ていても、顧みられることが少ない印象である、ある意味薄幸な花と言えそうだが、盗掘の恐れがないのは花にとって何よりの幸福だろう。
今回を機に私の春の山行記録を色々検索してみたが、写真が見当たらない。唯一、今年の3月初旬に伊豆の発端丈山・葛城山に登ったレコに、「未だ、花は少ない」とのキャプチャーをつけて山道にひっそり咲くセントウソウの花の写真をアップしていた。名前を知っている割に、実に冷たい扱いである。
ただ、セントウソウの別の品種の深山仙洞草（ミヤマセントウソウ）には、思い出がある。
接写機能付きカメラを新調してまもない2022年4月中旬にキバナハナネコノメソウの花を求めて奥三河の天狗棚に行ったことがあった。残念ながら、件の花は事前調査不足でカメラに収めることはできなかったが、散策路で巡り合った夫婦ずれに教えられた花が、ミヤマセントウソウだった。
「本州の愛知県以西、四国、九州の山地に稀に見られ、セントウソウと比べて、小葉の裂片の幅が0.3〜1mmと、非常に細いことが特徴」だという。女性の方が、「小さな花」が何より好きだと言ってスマホを取り出し、そこに納められた花の写真をいっぱい見せながら、小さき花の美しさを語り掛けてくるのであった。
湿原の一期一会の語らひに小さきものの美を感じけり
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写真��ミヤマセントウソウ（拡大）（奥三河天狗棚にて）
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