そこで、ヤマレコのGPSログのデータを集計して平均的と思われるコースタイムと「山と高原地図」のコースタイムと比べて見ることにしました。
コースとして選んだのは馴染みのある丹沢の塔ノ岳から檜洞丸。ところが、GPSログをダウンロードし始めて条件に合うデータが少ないのに気が付きました。「山と高原地図」のコースタイムの前提条件は、無雪期で40〜50歳の2〜5名のパーティが目安。しかし、これに合致する記録があまり見当たらないのです。
仕方がないので、趣旨が少し変わってしまうけど自分の山行形態に近い無雪期の単独行の記録で集計してみました。
集計したデータは次の通りです。
・2015年3月末〜11月末および2016年3月末〜10月末のGPSログがある123の記録
・塔ノ岳から檜洞丸までルートが繋がっているもの
・単独行
・日帰り、宿泊は問わず
・ジャンルがトレランになっている山行は除く
集計は、GPSログで「山と高原地図」でコースタイムが設定されている各ポイントの緯度/経度の近傍点を通過した時間を検索して、その時間差から求めました。
結果は次の通りです。(単位は分)
●塔ノ岳から檜洞丸(43山行)
平均 Min Max σ(標準偏差)
塔ノ岳→竜ヶ馬場 50 25 86 13
竜ヶ馬場→丹沢山 41 11 853 129
丹沢山→棚沢ノ頭 175 32 1004 296
棚沢ノ頭→蛭ヶ岳 65 22 944 138
蛭ヶ岳→臼ヶ岳 192 43 1139 318
臼ヶ岳→金山谷乗越 49 9 94 17
金山谷乗越→檜洞丸 68 35 142 25
●檜洞丸から塔ノ岳(80山行)
平均 Min Max σ(標準偏差)
竜ヶ馬場→塔ノ岳 62 22 782 97
丹沢山→竜ヶ馬場 16 8 65 9
棚沢ノ頭→丹沢山 71 23 929 138
蛭ヶ岳→棚沢ノ頭 70 16 914 154
臼ヶ岳→蛭ヶ岳 101 40 960 135
金山谷乗越→臼ヶ岳 50 23 101 14
檜洞丸→金山谷乗越 44 18 96 14
この結果には休息や宿泊の時間が含まれており、それを除くために平均値+σを越えているデータを除外して再集計すると
●塔ノ岳から檜洞丸
平均 Min Max σ’
塔ノ岳→竜ヶ馬場 46 25 62 9
竜ヶ馬場→丹沢山 22 11 164 24
丹沢山→棚沢ノ頭 58 32 106 18
棚沢ノ頭→蛭ヶ岳 45 22 94 16
蛭ヶ岳→臼ヶ岳 78 43 151 23
臼ヶ岳→金山谷乗越 44 9 64 12
金山谷乗越→檜洞丸 59 35 89 14
●檜洞丸から塔ノ岳
平均 Min Max σ’
竜ヶ馬場→塔ノ岳 47 22 145 19
丹沢山→竜ヶ馬場 15 8 23 3
棚沢ノ頭→丹沢山 49 23 138 17
蛭ヶ岳→棚沢ノ頭 40 16 125 16
臼ヶ岳→蛭ヶ岳 77 40 146 18
金山谷乗越→臼ヶ岳 46 23 63 9
檜洞丸→金山谷乗越 40 18 55 8
Max値が少し大きく、休息時間が完全に除外されたとは言えないけど、過大なデータ除外後の標準偏差σ’から見て、まあ妥当な値のように思えます。
この値とコースタイムを比較して見ます。「山と高原地図」の最新版を持っていないので、ヤマプラと手元にあった1992年版のコースタイムで比べました。
()の値は、それぞれでの平均値との比率(%)です。
●塔ノ岳から檜洞丸
平均値 ヤマプラ 山と高原地図(1992年版)
塔ノ岳→竜ヶ馬場 46 70(65.7) 40(115.0)
竜ヶ馬場→丹沢山 22 30(73.3) 20(110.0)
丹沢山→棚沢ノ頭 58 60(96.7) 45(128.9)
棚沢ノ頭→蛭ヶ岳 45 60(75.0) 35(128.8)
蛭ヶ岳→臼ヶ岳 78 70(111.4) 60(128.3)
臼ヶ岳→金山谷乗越 44 70(62.9) 60(73.3)
金山谷乗越→檜洞丸 59 60(98.3) 50(118.0)
●檜洞丸から塔ノ岳
平均値 ヤマプラ 山と高原地図(1992年版)
竜ヶ馬場→塔ノ岳 47 60(78.3) 35(134.3)
丹沢山→竜ヶ馬場 15 20(75.0) 15(100.0)
棚沢ノ頭→丹沢山 49 50(98.0) 40(122.5)
蛭ヶ岳→棚沢ノ頭 40 50(80.0) 30(133.3)
臼ヶ岳→蛭ヶ岳 77 80(96.3) 75(102.7)
金山谷乗越→臼ヶ岳 46 70(65.7) 55(83.6)
檜洞丸→金山谷乗越 40 40(100.0) 30(133.3)
ここまでデータをまとめたら、檜洞丸、蛭ヶ岳、丹沢山の各山頂を含む区間でコースタイムとの比率(ヤマプラで)が100%に近く、休息時間の影響が取り除けていない事が判りました。
全然、駄目じゃん!!
無駄な作業を一生懸命にやっていたようです・・・
ともあれ、せっかくやったのだから、もう少しこのデータを元にコースタイムについて考えて見ます。
先ず、ヤマプラのコースタイムと平均値を比べます。
休息時間の影響が少ないと思われる区間のデータでの比率は65%〜80%。
休息時間の平均を10分として、休息が入っていると考えられる区間の値から引いて比率を計算すると、およそ75%〜80%になります。
これから考えて、いささか強引ではあるけれどコースタイムの70%〜80%が平均的な時間であるように思います。
ただし、GPSの記録には、かなり健脚と言える丹沢主稜の日帰りが多く含まれていたので、一般的な平均値としてはヤマプラのコースタイムが妥当なのかも知れません。
1992年版の地図のコースタイムとの比較では、ほぼ同等か、やや長めとなっています。これは非常に興味深い結果です。
昔は丹沢主稜は1泊2日が普通でしたが、今は日帰りでやる人も多くなっています。(ヤマレコの記録では)だから、比率はもっと小さくなると思っていたので意外でした。
歩く速さは同じようなものでも、昔は無理に頑張る人が少なかったとか、のんびりと山を楽しむ人が多かった等々のスタイルの変化を表しているような気がします。
新旧コースタイム自体の変化も興味を引きます。中高年の登山者の増加から今のコースタイムが長くなっているのは周知の通りで、3割がた長くなっているのは納得できます。しかし、塔ノ岳と竜ヶ馬場の間が極端に増えている理由が分かりません。登山道が大きく変わったとは思えず、昔のコースタイムが厳しすぎたような記憶もありません。何か特別な理由でもあるのでしょうか。
もう20年以上は塔ノ岳から先へは行っていないので、確認に行きたいような気もします。しかし、塔ノ岳は人も多いし、今頃は泥濘が酷いから、わざわざ行くのは躊躇してしまいます。
今回はグダグダな集計で、あまり意味のないような値しか出ませんでした。休息時間を除いて集計すれば、もっと正確な値が分るので引き続きやって見ようと思っています。
その為にはGPSログから休息時間を取り除く方法を考えなくてはいけないけど、これが中々厄介です。さてさて、ちゃんとした結果が出るのは何時になる事やら・・・
guchiさん
プログラミングとかデジタルデータ処理がお得意な感じはしてましたけど、流石ですね〜。
私なんか、GPSログデータを引っ張り出して集計する方法さえ考えつかないです。
自分のレコでもそうなんですが、ヤマレコのコースタイムには、代表的な地点以外での休憩が入っていまうんですよね。平均値+1σ超過を排除するのは、まずは妥当な方法ですね。
でも、これでどこまで排除できているかは分からないから、どうやってより正確に排除するか、guchiさんの次の一手を楽しみにしています。(私には手も付けられないので )
昔のコースタイムに比べて、ヤマプラは長いなと感じてましたけど、やっぱりそうなんですね。塔ノ岳〜竜ヶ馬場ですけど、ヤマプラは長すぎますよ。極めて歩きやすい道ですよね。
ヤマレコの平均値が92年版のコースタイムに近いということは、ギアの軽量化が進んでも歩行速度は大して上がっていないということですかね。(でも昔よりも、長時間、長距離は歩いているのかな)
とても面白かったですよ。
f15eagleさん
わたしゃ回路屋なんで、プログラミングはあんまり得意じゃないんですね〜
だから、ちょっとしたプログラムでも時間がかかってしまうのです。
今回は統計的に休息時間を取り除こうとして、あまり上手く行かなかった訳ですが、プログラムでGPSログから休息時間を取り除くのは結構、厄介なのです。
ご存知かと思いますが、静止していてもGPSの位置データは動いている事が多いので、休息か動いているかの判断が難しいのです。
速度が、あるしきい値以下で、ベクトル的に目的地に向かっているかで判断する方法を考えたのですけど、プログラミングがかなり面倒な上に、どれだけ効果があるのか判らないのです。
あんまり面倒だと、やる気が失せるので、もっと簡単な方法は無いかと考えている所です。
塔ノ岳〜竜ヶ馬場だけでなく、地図のコースタイムがオカシイのではないかと思う時は有りますよね。地図の担当者の主観によって設定されて、それが一般的なものとずれている、なんてのも在るかも知れません。
今回やってみて、昔の地図と今の地図でコースタイムを比べて、その差やコースタイム自体の設定を考えるのも面白いと気が付きました。
山へ行かなくても遊ぶネタは色々ありますね。
guchi999さん こんばんは
以前から勝手に決めていることの一つに例えば山と高原の地図のコースタイムは、現場の看板や道標に記載されているタイムを最優先しているものと推察しております。
そのように決めて比較すると今まで異なっていたことは無いように思うのですが、いかがでしょうか?
poohtaさん、おはようございます。
コースタイムが現地の看板や道標に合わせられている、というのは有るでしょうね。
看板や道標に書かれている時間は、そのルートをよく知る山小屋や地元の人が書いている事が多く、地図を作る側もそれを信頼するのは納得できる話であると思います。
ただ、時には、この時間は少し厳しいなあ、思う事もありますね。
奥多摩で、そんな印象を受けた道標がありました。
それでも極端に違うことはないので、まあ良し、でしょう。
こんばんは〜 (^^)
昔、別のコミュとかに投稿したような内容を書いちゃいますが、
例えば、
水平の道と 垂直の岩場 みたいな
極端な場合 ではなくって、
一般的な登山道では、
おのおの の 人によって
標高差 100m を
15分で登れる人がいたり、
20分で登れたり、
25分とか、30分とか かかったり
大体・おおよそ 同じだったりしますので、
( 直登コースでも、ジグザグコース でも、急坂でも、ゆるい坂道でも、
おおよそ 同じくらいになると思うのです)
自分は どれくらいかかるのかを
計っておくと
おおよそ 予測・計算できる… ように思います
私の場合は、100m 20分で計算してまして、
( 頭の中では 2倍 して、1/10 しています )
( 100m → 200 → 20分 )
例えば 富士山では、
(吉田側だと、六合目までは ほぼ水平みたいなので、そこは除いて…)
標高差 1500m とすると
300分 → 5時間 という感じで、
…で、ガイドブックが無い場合でも
例えば
ここから 山頂まで 残り標高差300mあったとしたら、
あと 1時間くらいだから 頑張ろう… って、言えたり… するかな〜
下りの場合は、100m 10分くらい で計算しておくと、余裕があるくらいになるかな〜 って思います
T-timeさん、おはようございます。
昔から、距離に関係せず標高差300mは1時間、という目安はよく言われていますね。
健脚俊足の人は別として、普通はこんなものなのでしょうね。
私も、T-timeさんと同じように、標高差300mくらいだと、あと 1時間くらいだから 頑張ろう、と思って歩ています。
ただ、最近はもう少し進化していて、自分のGPSログを解析して
10分で進める距離は 500m +/- 0.5x(xは標高差)
なんて指標も持っています。
でも、疲れてくると簡単な計算でもしたくなくなるから、やっぱり300m/1時間の方が多いかな。
guchiさん
こんばんは。データには私のデータも入っていそうです(^。^)
塔ノ岳ー竜ケ馬場の時間がかかるのはわかる気がします。なんせ景色がいいのでゆっくり歩きたくなりますし、立ち止まることが多いです(^。^)(少なくとも私は)
「のんびり山歩きを楽しむ」派に一票です(^。^)
tagamintさん、おはようございます。
tagamintさんのテータもあるのですか、機械的にGPSログをダウンロードしていたので、気が付きませんでした。
時間がかかるのは景色がいいから、という理由は面白いですね。そういうのも有るかもしれません。
あの区間のようにアップダウンが少ないと、距離を稼ごうと早く歩いてしまいがちだけど、景色を楽しみながらゆっくり歩くのも楽しみの一つですよね。
トレランのように時間を競いたければ早く歩けばよいし、景色や雰囲気を楽しみたい人はのんびりと歩けばいいんですよね。
楽しみ方は人それぞれです。
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