夏休みに近所の肉屋でアルバイトをしました。
時給270円。
ひと夏働いて16,500円で革登山靴を買いました。
当時もっとも流行っていたヨーロッパのノルディカ製です。
9月になり、山岳部で奥秩父甲武信に源流を求める東沢に行くことになりました。
しかし何かで部長と意見を違え、単独で行くことになりました。
今思えば酷い後輩でした。
当時はまだあの堰堤もなくそのまま東沢に入れました。
三角形の橋もあったことを覚えています。
一所懸命飛び跳ねて行きましたが、しばらく行くとどうしても渡渉しなくてはならないところに出ました。
しかし買ったばかりノルディカを濡らすわけにはいかない。
持ってきたサンダルに履き替える。
水の中ではサンダルが脱げてしまい結構歩きにくい。
やっと両門の滝に出る。
まきみちは卑怯だ。
正面突破です。
さすがにサンダルでは無理なので、はだしになる。
今は何が入っていたかはよく覚えていませんが、パンパンのキスリングを背負って、首からノルディカをぶら下げて、スラブを登る。
あと少しで、落ち口に立てるというときにやばい状況になっていることに気が付く。
左手に力を入れるとなんと時計バンドがパチンと外れた。
あ、時計が落ちると思ったら、自分が落ちてしまいました。
あーーーーー。ぐらいで滝壺にドボンです。
落ちて行く中で考えたのは岩のでっぱりで素足を怪我しないかでした。
気が付くと水中でキスリングを背負ったまましゃがんでいました。
水中で目を開けて立ってみると水の上に出ました。
思ったより浅かったのです。
滝壺の周りにはちょうど昼時で満場のギャラリーです。
何もなかったように滝壺から這い上がる。
ここまで大事に持ってきた頸にぶら下げていたノルディカを逆さにして水を捨てる。
幸いにもキスリング本体には水は侵入していませんでした。
ハタと気が付いてもう一度滝壺に潜る。
滝壺の底には石が沢山沈んでいてとても腕時計を発見することはできませんでした。
全身ずぶぬれなので当然これからはノルディカを履いて遡行です。
今思うと落ちたことにより恐怖心が芽生え、登るのが相当遅くなったのでしょうか。
あたりは薄暗くなり、目の前は壁です。
諦めて流れのすぐわきでビバークすることにしました。
大きいホエーブス625を出してご飯を炊く。
ボンカレーです。
寝坊すること困るので黄色いとレベル時計を広げて目覚ましをセットしました。
何でトラベル時計なんぞ持っていたのでしょうか。?
翌朝目覚めるとそこが源頭であることが分かりました。
ガレ場からシャクナゲをかき分けて進むと木賊山の山頂でした。
後日、意見の違いから別行動をとった山岳部本体も迷い沢に入って散々な山行だったようです。
その後このいきなりずぶぬれになったノルディカはビブラム張替2回を経験して3月の北鎌まで良きパートナーでした。
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