黒部源流域縦走(薬師岳・雲ノ平・高天原・水晶岳・ワリモ岳・鷲羽岳・三俣蓮華岳)
sada
- GPS
- 119:15
- 距離
- 58.9km
- 登り
- 4,394m
- 下り
- 4,662m
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富山駅6:10⇒7:50折立8:10⇒9:20三角点(朝食)9:45⇒11:35太郎平小屋(昼食)12:10⇒13:30薬師平⇒14:30薬師岳山荘(泊)
8月31日(月)
薬師岳山荘4:30⇒5:20薬師岳5:40⇒6:10薬師岳山荘6:15⇒7:30太郎平小屋(朝食)8:15⇒カベッケガ原10:10⇒薬師沢山荘10:30⇒13:00アラスカ庭園13:15⇒14:15雲ノ平山荘(昼食・泊)
9月1日(火)
雲ノ平山荘6:00⇒コロナ観測所6:50⇒奥スイス庭園7:05⇒詩の原7:35⇒高天原峠8:15⇒9:00高天原山荘9:30⇒10:05夢ノ平・竜晶池(昼食)10:30⇒11:00高天原温泉14:10⇒14:30高天原山荘(泊)
9月2日(水)
高天原山荘6:15⇒8:45岩苔乗越8:50⇒9:30水晶小屋9:35⇒10:10水晶岳南峰10:20⇒10:25北峰10:40⇒11:15水晶小屋(昼食)11:45⇒12:35ワリモ岳12:40⇒13:10鷲羽岳13:30⇒14:20三俣山荘(泊)
9月3日(木)
三俣山荘5:45⇒6:50三俣五郎分岐7:00⇒(途中で退却)⇒8:15三俣蓮華岳8:25⇒三俣峠8:35⇒(巻道)⇒10:05双六小屋(昼食)10:45⇒12:30鏡平山荘⇒15:10わさび平山荘(泊)
9月4日(金)
わさび平山荘6:45⇒7:25新穂高7:55⇒(路線バス)⇒8:30平湯温泉(入浴・昼食)14:30⇒高速バス(16:05諏訪SA16:25)⇒深大寺BT18:30
| 天候 | 8月30日(日) 曇り時々晴れ 8月31日(月) 曇りのち晴れ 9月1日(火) 晴れ 9月2日(水) 晴れのち曇り 9月3日(木) 曇り時々雨 9月4日(金) 曇り時々晴れ |
|---|---|
| 過去天気図（気象庁） | 2009年08月の天気図 |
| アクセス |
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感想
【８月３０日（日）】
夜行列車は朝靄の消えるころ富山駅に着いた。
ホームに立てば剱に挑んだ昨年を思い出す。
”あの日と同じ香りがする。”
折立行きのバスは芦峅を目前に有峰口へ右折する。
亀谷温泉を過ぎると有峰林道に入った。
７：５０、折立に到着。
水場へ行くと「生水は飲まないで下さい」との文字。
既に自販機のミネラルウォーターは売切れ。
仕方なく緑茶を２本購入する。
登山道に入るとすぐに『十三重之塔 慰霊碑』がある。
愛知大学山岳部員１３人が薬師岳で遭難した。
昭和３８年１月の事である。
いま自分はその頂を目指している。
太郎坂は三角点まで急登が続く。
見晴らしの無い登山道を延々と登る。
９：２０、三角点に到着。
富山駅で買った「焼き鯖寿し」を食べる。
山中での海産物は有り難いものだ。
三角点を過ぎれば石張が続く。
箱根の旧東海道を思い出しながら登る。
”今日は曇りで見晴らしが無いな”
雨が降らない事を祈りつつ登れば太郎平小屋に着く。
１１：３５、コーヒータイムとする。
薬師岳を目指して北上する。
太郎兵衛平の木道を行くと薬師峠野営場に出る。
テントの中から楽しそうな声が聞こえた。
湧水が流れる岩場を登れば薬師平だ。
秋色に染まり始めた葉を見れば涼しい風が届く。
その地に立つ愛知大遭難碑は大きなケルンとなっている。
一つだけ小石を重ねてみた。
ハイマツの多い場所で眼下を見れば小さな池塘が点在する。
山頂はまだ見えないが東南尾根は良く見えた。
その尾根こそ１３人の命を飲込んだ場所である。
薬師岳の巨大さを感じつつ小屋に着いた。
１４：３０、薬師岳山荘に入る。
暖かいお茶を頂いた。
寝床の隣になったオジサンが「百名山達成まであと２つ」だと言う。
黒部五郎岳、そして最後が笠ヶ岳らしい。
まだ早いが、持参した日本酒でお祝いした。
【８月３１日（月）】
午前４：００、冬の星座で有名なオリオン座が美しい。
期待を胸に山頂を目指す。
ヘッドライトが不要になった頃、急にガスが出てくる。
薬師岳山頂での眺望は無かった。
おまけに小雨になった。
”いつも山なんてこんなものさ”
そう思いつつ小屋まで戻れば雨粒は無くなる。
気分を新たに雲ノ平を目指す。
太郎平小屋まで戻り薬師沢を降りた。
湧水の多い薬師沢ルートは素晴らしい。
木道のベンチでコーヒータイムとした。
沢のせせらぎと鳥の鳴声が心地良い。
カベッケガ原を過ぎれば薬師沢小屋に出る。
１０：２０、小屋のつり橋を渡りダケカンバの登山道を行く。
無数の岩が重なる所を延々と登り続ける急登である。
通称『ゴロゴロ坂』を登る身体は悲鳴をあげた。
後方から来る４人組に先を譲る。
後に知る事だが、
その一行こそ雲ノ平山荘の管理人である伊藤さんであった。
雲ノ平山荘は建直しの為、３１日である本日が最終日である。
伊藤さんは棟梁を出迎えに来ていた様だ。
”それにしても大変なルートを選んだものだ”
蒸し暑く喉が渇き、持参する水の減りが早い。
ザックが重く感じれば腰が痛む。
何度も休憩しては登る。
石にはコケがあり滑りやすく案内の印も無い。
”登りで幸い、下りは不安になる事だろう。”
１２：４５、やっと木道となりゴロゴロ坂は終わった。
水場の無い登山道を行くと『アラスカ庭園』に出た。
２口分の水を残し休憩を終えた。
”早く小屋に着きたい。”
渇いた身体には雲上の庭園を楽しむ余裕は無かった。
１４：１５、雲ノ平山荘に到着。
食堂でカレーライスをいただく。
牛肉がたっぷり入っていて美味しい。
食後は軽く寝てしまった。
翌日から改築作業に入る雲ノ平山荘。
５０年を迎えるこの小屋での最後の宿泊者は４名。
八王子在住のＹさん（ヤマレコ：kazuchin）、
福井から来たカメラマン、富山大学の学生、そして自分。
４人でここの名物である石狩鍋をいただく。
最後の晩餐で身も心も暖まった我々は消灯時刻まで談笑が続いた。
富山大のＭ君は、
地質学のために２週間も毎日水晶岳を往復し石を探している。
難しいことを色々教えてもらい水晶岳の魅力が増した。
カメラマンさんは高天原に泊まり雲ノ平へ来たそうだ。
重い荷物も撮影のためなら苦にならないという。
八王子のkazuchinは、自分と同じく高天原へ向かう。
陽気な彼と風呂に入れば楽しい事だろう。
明日はいよいよ高天原温泉だ。
ここ雲ノ平で楽しみな明日を想像しつつ雲を枕に熟睡した。
【９月１日（火）】
天候晴れ。６：００、出発。
山荘を出て少し登れば全てが観える。
薬師岳、黒部五郎岳、祖父岳、三俣蓮華岳、水晶岳・・・
遠く立山連峰も確認できた。
”なんて素晴らしい光景なんだろう”
笠ヶ岳がまるで富士山のように見える。
”美しい”
昨年登頂した愛峰をしばし眺めた。
雲ノ平から高天原へのルートは楽園だ。
アップダウンはあるが、木道も多く歩きやすい。
コロナ観測所、奥スイス庭園、詩ノ原と続く。
池塘のある場所で時間を忘れて休憩する。
鉄梯子を３つ降りれば高天原峠は近い。
沢を渡り林を抜ければ草原が広がる。
木々に囲まれた一画に赤い屋根が見えた。
”ま、まるで、おとぎ話の世界のようだ。”
高天原山荘が「お菓子のおうち」に見える。
私は童話の世界に入っていった。
９：３０、山荘に到着し夢ノ平へ向かう。
露天風呂が点在する温泉沢を越えた所に夢ノ平はある。
そこには竜晶池が存在し、あまりの美しさに言葉を失う。
”夢が覚めないうちに温泉に入ろう”
戻ればkazuchinが一番風呂を楽しんでいた。
沢で冷やしておいたビールを飲みながら湯に浸かる。
”最高だ。なんて贅沢な一日なんだろう。”
まだ夢は覚めないようだ。
裸の仲間が一人加わる。
”どこかで見た顔だ”
同じ列車で富山で降り、折立から入山した人である。
その横浜在住のＴさんも考える事は一緒だった。
3人そろって最高の時を過ごす。
快晴のなか沢で洗濯が始まった。
喉が渇けば沢の水をガブ飲みである。
もちろん全ての作業は全裸で行う。
秘境中の秘境ゆえ出来る事だ。
悲鳴にも似た声がしたと思えば一人の女性が現れた。
その女性ＨさんはＴさんの全てを見てしまったらしい。
夢の世界ゆえ許されることだ。
我々は時の流れを忘れていた。
3時間以上が経過し山荘へ戻る。
途中、大きな蛙が現れた。
”登山に来ている事を忘れていた。無事に帰ろう。”
紅一点のＨさんを含め山荘のテラスで乾杯が始まった。
涼しい風が湯上りの身体を刺激する。
見上げれば水晶岳が我々を見守っていた。
空には都心でみる顔とは違う月があった。
酒と月に酔った自分はランプの灯りに誘われて眠りについた。
”本当に素晴らしい一日だった”
【９月２日（水）】
高天原に朝靄が立ち込める頃、山荘を後にする。
木々が生い茂る道に入ればもう高天原は見えない。
”童話の世界にいたいが山々が待っている”
森林から抜けると沢沿いを登る。
陽光が身体を焼き始めた。
目指す水晶岳が堂々と左手に存在する。
”まだまだ遠いな”
焼けた身体を雪解け水で潤しつつ登る。
８：４５、岩苔乗越に着いた。
稜線になびく冷たい風が気持いい。
水晶小屋では富山大のＭ君も来ていた。
お互い笑顔を交わす。
先行したkazuchinは既に山頂を目指している様だ。
水晶岳の山頂部はかなり険しい。
慎重に足を運ぶが、筋肉痛で足が重い。
”温泉で暖めたのが悪かったのか”
約束どおり南峰の頂上でkazuchinが待っていた。
「高天原が見えないね。」
「山荘からは見えたのになあ。」
試しに北峰へ移動する。
眼下に今朝出発した高天原を認めることができた。
我々は充実感に満たされる。
水晶小屋に戻りカップ麺をいただく。
”カップヌードルってこんなに美味かったかな。”
午後の天候は崩れそうだ。
計画通りkazuchinは水晶小屋に泊まる。
「先へ行きますか？」
自分は「はい」と答える。
ヤマレコでの再会を誓い右手を差し出した。
前進する先にもう知る人はいない。
水晶岳が遠くなっていく。
ガスの多いワリモ岳山頂では見晴らしは無い。
”鷲羽岳が全く見えない。”
おまけに風が冷たい。
急に寂しくなった。
１３：１０、鷲羽岳山頂に着くと雨粒が落ちる。
”こんな天候だと、その山の印象も良くないものだ。”
下山中、三羽の雷鳥が仲良く群れている。
全てオスで赤いアイシャドウが誇らしい。
”兄弟であろうか。”
ハイマツに囲まれた一画に三俣山荘は建っている。
１４：３０、山荘に到着。
冷えた身体にビールを流し込む。
昨日までは少人数の静かな山荘で時を過ごした。
団体さんの賑やかさに馴染めない自分がそこにいた。
【９月３日（木）】
５：４５、黒部五郎岳を目指す。
”今日は曇りのようだ。”
三俣蓮華分岐に差し掛かると雨粒が落ちてきた。
前進するほどに雨が強くなる。
五郎が見えなくなり登頂意欲が無くなった。
そしてついに足が止まる。
”やめよう。五郎は次回の楽しみにとっておこう。”
そう思うと声が聞える。
『おまえは何のためにココまで登ってきたのだ・・・』
”そうだ。せっかく来たのだから小屋までは行ってみよう。”
しばらく前進すれば別な声がする。
「こんな日に登ることは無いよ・・・」
”そうだ。こんな日に登ることは無いんだ。”
『雨が止んだよ。今のうちに前進あるのみだぞ・・・』
”うん。”
「また直ぐ降り出すさ。カールは霧の中だよ・・・」
”うん。”
優柔不断な自分は悩み、そして色々考えた。
”今回の目的は何だろうか。”
”それは高天原の温泉に入ることで達成したんだ。”
”快晴のもと五郎の美しいカールでコーヒータイムをしたかったんだ。”
”鷲羽岳は天候に恵まれず記憶の薄い山になってしまったな”
その時、ある事に初めて気がついた。
私にとっての登山は、『記録』よりも「記憶」を大切にしたいという事である。
”そうだ！百名山マニアじゃないのだから無理に登ることは無いんだ。”
”やっぱり五郎は次回の楽しみにとっておこう！”
そう決心すれば三俣蓮華岳山頂を越えて双六小屋に着いていた。
一年ぶりの双六小屋で暖かいラーメンをいただく。
１０：４５双六を離れる。
雨は降ったり止んだりの繰り返し。
淡々と懐かしい道を前進する。
鏡平の水面に槍の姿は無かった。
宿を決めていない自分に新穂高まで降りる気はしない。
１５：００、わさび平小屋に到着。
風呂上りに沢で衣類を洗い、乾燥室に干した。
温泉沢で洗濯した日を思い出す。
【９月４日（金）】
６：４５、新穂高へ向かう。
”これで山ともしばらくお別れだな。”
久しぶりにアスファルトを踏む。
歩きやすいが硬く冷たいものを感じた。
７：２５、新穂高に到着。
平湯温泉に向かうバスに乗れば笠ヶ岳が見送ってくれた。
途中のバス停で見覚えのある人が乗ってくる。
”高天原仲間のＴさんだ。”
彼は上高地に行き涸沢まで登るという。
共に平湯温泉で下車し別れた。
私はある登山者に話しかけられる。
その方は８３歳になられる人で名刺をいただく。
前千葉県議会議員
ネパール教育整備促進協会(NEPA)会長
社団法人日本ネパール協会の理事
http://www.nichine.or.jp/index.htm
とあった。
「１１月にネパールへ行きますが、御一緒にどうですか？」
仕事がら現実的に困難であることを伝えたが御自宅へ遊びに行く約束をする。
そのＫさんが乗車したバスが走り出す。
自分は手を振っていた。
平湯温泉に浸かりながら来るであろう将来を考える。
”老後の人生どう生きるべきか。”
簡単に結論は出なかった。
”一週間ぶりに家に帰れる。”
乗車したバスの扉が閉まり、再び開けば日常の世界に戻っていた。
「山思えば人恋しい 人思えば山恋しい」
そんな山旅であった。
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今年も凄い行程ですね
美しい情景と厳しい行程が交錯している世界。酒と温泉は、そんな中のオアシスか。
自分は未だ槍ヶ岳失敗から脱出できていませんが、秋には良い報告ができるようがんばります。
＞ 美しい情景と厳しい行程が交錯している世界。
＞ 酒と温泉は、そんな中のオアシスか。
上手い！その通りでございます。
厳しさの中にしか美しさは無く、喜びもまた同じです。
雲ノ平・高天原・水晶岳とご一緒させて頂き楽しい時間を過ごさせて頂きました
またどこかの山で会ったときは宜しくお願いします
お近くの
ＯＨ！お久しぶりです。
雲ノ平〜高天原〜水晶岳はサイコーでしたね
温泉で撮影して頂いた写真をメインに使う事にしました。
ありがとうございました
またお会いしたいですね。
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