大荒れの黒部五郎岳(雲ノ平・鷲羽岳の周回から)
- GPS
- 23:05
- 距離
- 43.4km
- 登り
- 3,491m
- 下り
- 3,476m
コースタイム
- 山行
- 5:08
- 休憩
- 0:05
- 合計
- 5:13
- 山行
- 9:09
- 休憩
- 0:27
- 合計
- 9:36
- 山行
- 7:55
- 休憩
- 0:04
- 合計
- 7:59
天候 | 初日:雨、夕方に晴れ間 2日目:曇り。13:00から強風。13:30から雨、徐々に雨脚強まる 3日目:大荒れ。雨風ともに強い。太郎平小屋あたりまでくだってようやく小雨、時折強風 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
初日:ぬかるみ 2日目:良好 3日目:登山道が川…序盤で靴の中までぐしょ濡れ。特に…黒部五郎岳のカール・赤牛岳山頂直下の登り、北ノ俣岳から太郎平、折立までの下りは足首まで浸かる場所だらけ。開き直って水溜りを気にせず歩く。 |
その他周辺情報 | 薬師岳山荘の秘境感、黒部五郎小屋の過ごしやすさが素晴らしかった |
写真
感想
薬師沢・雲ノ平・鷲羽岳など書きたいことが多いのに、3日目の体験が強すぎた。
無事下山したものの、今後「絶対にやっちゃいけない」山行となってしまった。
装備・計画ともに概ねGoodだったが、「やりたい気持ち」と「早く下山したい」を優先して、リスクヘッジのプランBを選択しなかった,,,ということで、自戒を込めたまとめです。
<<全体のまとめ>>
★強風(暴風)の稜線歩きはダメ
暴風は体力も気力も奪う…本能的な恐怖感を感じます。
山行中ずっと緊張で喉が渇きっぱなし。どうなるか分からない怖さ。
稜線で暴風の場合、、当たり前ですが万一怪我をしたら進退に窮します。身を隠すところもなく、救助も難しく、装備があっても低体温症になりかねない。
普通の山行では、ちょっと足を痛めたくらいなら下山できます。ですが、暴風ではわずかな足の痛みすら致命傷。踏ん張りが効かないと歩くことはおろから、立つことすらできない。顔を前に向けることさえ難しい…顔に吹き付ける雨のなんて痛いことか、、実際、突風で体が煽られたり、しゃがみ込んで耐えたりすることもしばしば。
1日過ぎてさえ、夢だったのか?というくらい非日常過ぎる体験。
歩くことに全神経を集中しないと前に進めないので、写真も一切とらず。記憶が風化しないうちに詳細を書き残さないといけない。
※山にもよるでしょうが、個人的に目安は風速15m以上なら回避かなぁと。今回は標高3100m付近で24m...これはダメですね
★装備と行動食、ハイマツに助けられた
適切な装備の重要性を痛感。ホント、装備に命を救われたと思う。
レイヤリング(finetrack)によってあれだけの雨・風なのに、いずれも完全シャットアウト。
濡れた登山靴と指先の冷えはやむなしとしても、それ以外は問題なし。
むしろ体幹は適度な暖かさがずっと保たれ、そこだけは快適な登山と同じ。
小分けにしたチョコや飴による糖分補給も大切。前日まで体力温存して歩いたことと相まって、エネルギー切れの気配なく最後まで行けた。
やはり僕の山行スタイルは、前半(上り)ゆっくり、後半(下り)を爽快に飛ばす...が気分も良いし、リスクヘッジにもなる。
ポールの使い方、歩き方の改善ができていたことも大きい。
そして、本当に実感したのがハイマツ。稜線のビバークはハイマツの陰で、と聞くがまさにその通り。
点在するハイマツ帯が暴風すら防いでくれたので、身も心も立て直すことができた。
★どうすべきだったか?(プランB)
ポイントは2日目午後の判断。
予報どおり天候が崩れ始めた午後、三俣山荘に泊まることもできた。
そうすれば雲ノ平経由で太郎平まで2時間強の短縮になり、小舎からのキツい登り返しもないので折立まで行ける。
だが、三俣山荘に着いたのが13:30、三俣蓮華岳にも黒部五郎の肩からの稜線も歩きたい...3つの要素から黒部五郎小舎まで行くことに。
小舎からだとプランBは選択しづらく、リスクの高い判断を誘発しやすく、実際そうしてしまった。
<<3日目の山行>>
(黒部五郎小舎~赤木岳~北ノ俣岳~太郎平~折立)
2日目夜半から荒れはじめ、小舎の外からはビュービュー猛烈な風の音。
ただし、天気予報で荒れることは分かっていたこと。
朝、予備日もあったので、黒部源流から雲ノ平(風の影響が少ない)、薬師沢小屋(行ければ太郎平)にするか迷うも、当初予定の稜線歩き決行(黒部五郎はカール)。
Goの決め手は「気温」。この時期だと吹雪もあり得るが、低気圧は南からで気温は高め。あらゆる天気予報でも雪はないと判断。
小舎にいた方それぞれも不安気な面持ちながら、シーズン終盤に雨の中ここまで来ているので、いずれも経験豊富な方々。
互いの無事を祈りつつ、小舎に留まる方、三俣方面に出発する方それぞれ。
・小舎 → 黒五の肩(2時間12分)
カール経由だったの風の影響は抑えられたものの、時折、頭上でゴォーと唸るような風の音。雨で登山道の大半が水没。一部、濁流のようで沢登り状態に。肩への取り付きは、急登を風が吹き降ろしてくるうえに、ガスで先が見えずルートミスしそうになる。風もあって傾斜が急だと休憩もできないので、気合を入れて一気に登り切る。
・黒部の肩 → 中俣乗越(1時間5分)
ピークを過ぎてからの下りが1番危険だったかもしれない。左から殴りつけるような風でポールでさえ風で持っていかれそうになる。さらに、顔に叩きつける雨粒が本当に痛い、、、目に雨粒が多く入り、コンタクトが流されそうになる...それこそ致命的。
晴れてたらめちゃくちゃ気持ち良いコースだろうなぁ、と思いながら歩く。
※30分ほどすると「歩き方のコツ」を掴む
重心落として体を半身に構え、足裏(母指球)で踏み込むように膝を意識して、ゆっくり力強く足を前に出す。
ポールは右手(風下)に持って流される体を支え(体重を預け過ぎず)、左手で吹き飛ばされそうな帽子とフードを抑えつつ、肘で雨・風から顔をブロック。
この動きで要領を得てからは、時折発生する突風以外なら、前に進めるようになる。
大前提として、岩場やザレ場など悪路の少ない、安定した登山道でないと厳しいと思うが、、、
※黒五のピーク
肩に出た直後、暴風とガスの向こうに「魔王の城」のように鎮座する姿が印象的。すごく楽しみにしていたピークで、こんなに近くにいるのに迷いなくパス。ここで無理して行っていたらどうなっていたか...来年、好天時に堂々と登頂するぞ!と誓って危険地帯を抜けるべく先へ急ぐ
・中俣乗越 → 赤木岳(45分)
ここから断続的に出現するハイマツ帯に救われるが、ハイマツの切れ目で2〜3回体が浮くような突風を受ける。
道迷いのリスクは低いルートだが、前が見えにくいし、時折広いスペースに出ることがあって地図アプリを確認する。万一、ルートミスして時間・体力を浪費するわけにいかないので、、
赤木岳は偽ピークが続く(体感で6個くらい)ので、「距離は短い、慌てず騒がず淡々と」と言い聞かせて歩みを進める。
赤木岳まで来たら、危険地帯の峠を越えているはず!ですが、テンションを上げもせず、下げもせず、平坦な気持ちで歩くことだけに集中するよう心がける。
・赤木岳 → 北ノ俣岳(30分)
ちょっとした岩場もあったが、幸い、ピークに守られて風は穏やか。
ただし、北ノ俣岳も偽ピーク(体感で3個くらい)ある上に、ハイマツが少ない or 膝の高さのため、暴風に吹かれながら進む。
体を風上に倒しながら歩く。体重を預けているのに、全然倒れない。風下にもったポールでバランスをとりながら真っ直ぐ進むよう心がける。
・北ノ俣岳 → 太郎平小屋(1時間5分)
北ノ俣岳山頂付近は風は強いが、そこを少し降りると一気に風が和らぐ。
神岡新道分岐に来た時に、ようやくホッとして一息。ここからはひたすら降るだけだし、今までより強い風が吹くことはない。
実際、風はどんどん弱くなり、登山道が川になってはいるが、今までとは比較にならないくらい歩きやすい。木道が出てきた時の安堵感も忘れられない。
だいぶ余裕も出てきたので、来年のリベンジ山行+今回の反省を思い描きながら降りる。
安堵感から足を挫かぬよう細心の注意を払いながら。
・太郎平小屋 → 折立(2時間20分)
ここまで来れば、、、時折強い風が吹くものの、今までに比べたらそよ風。
濡れて、というより水没した岩が滑りやすいので、最後まで怪我しないよう気をつけながら降りる。
青淵三角点を過ぎると雨が弱くなり、折立では雨が上がり、晴れ間すら覗いていた。
・帰り支度
雨と分かっていたので、着替えと濡れたウェアを仕舞えるよう準備していたので、手早く快適な服装にチェンジ。富山まで車内を暖かくして、安全運転で戻ることができた。
<<薬師沢・雲ノ平・祖母岳・祖父岳・ワリモ岳・鷲羽岳・三俣蓮華岳>>
ぜんぶ良かった!
・薬師沢の峡谷ならではの秘境感
・静謐でピークに囲まれた雲ノ平
・スルーされがちだけど360度名峰を見渡せる穴場スポットの祖母岳
・名峰前の小手調べのように存在する祖父岳
・水晶岳と鷲羽岳をつなぎ野口五郎岳から槍、穂高、黒五まで見渡せるワリモ岳
・百名山の鷲羽岳
・北アルプスをつなぐ三俣蓮華岳
,,,ぜんぶ良かったが、その思い出は後日写真を見ながらゆっくり味わうことにして。
いろいろな反省と学びを忘れず、様々な登山にチャレンジしたいと思う。安全第一で!
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