![]() |
お昼近くには暖かくなったものの、峠に上がった途端西からの強風に吹き晒され、寒くて休憩も取れないまましばらく尾根伝いに歩くしかなかった。
けれど一番寒かったのは早朝、家を出てから駅に向かうまでだった。何度も「やっぱり帰ろう」という考えがよぎった。まあこれはいつものことだ。
私は、寒いのが苦手だ。
朝起きたら部屋が寒いというだけで体が動かないし、気分も沈降してやる気が出ない。ずっと寒い状態が続くと何をする気力もなくなっていき、だんだん悲しい気持ちになってきて、うずくまりながら「パトラッシュ…」とかつぶやきたくなってしまう。
こんなに寒さに弱いのに、冬は山歩きやバードウォッチングで毎週末アウトドアに出かけることになっているのは、我ながらどうかしている。
バードウォッチングは冬こそがハイシーズンなのでこれは仕方がない。
冬にしか会えない、シベリアあたりからはるばる渡ってきたカモや小鳥たちを見るために、早朝、鳥たちの活動が活発になる時間帯を狙って出かけないといけない。
狙った鳥が出るまでじっと待つため、自分史上最強に防寒対策を行うのでほぼ土管のように円柱形に着膨れする。もちろん使い捨てカイロは体中に何枚も貼る。
山はといえば人気の低山を歩くなら人の少ない真冬がベストで、落葉樹が葉を落とした冬は空気も澄んで展望がそれはもう素晴らしいのだから仕方がない。
雪でも降れば「ヒャッホウ!」と言いながら買ったばかりのチェーンスパイクをザックに詰めて出かけねばならない。なるだけ人の靴跡がつく前が良い。低山では1日2日で雪がなくなることもあるから、一期一会、週末に降ったらこれはもう必ず行かねばならない。
とはいえ、私が行くような標高の低い山の話ではあるが、山は歩き始めたらどんどん暖かくなって脱いでいくので、日中は長Tだけで行動していることも多く、風がなければ実際それほど寒い思いをすることはない。
寒くなりそうな、天候が崩れそうな時はそもそも出かけないことにしているので、学生時代の合宿のように突然の雨風に打たれて震えるような目にはまず会わない。
先日ついに念願の雪山デビューを果たした時も、寒かったのは登山口でアイゼンをつける時だけだった。
じゃあ何が寒いかと言うと、冒頭に書いたけども「登山口に辿り着くまで」が辛い。
朝起きて悲しい気持ちをどうにか奮い立たせながら支度して家を出た瞬間だとか、車にエンジンをかけてから暖気がやっと車内に廻るようになるまでだとか。乗り換えの電車を待つ駅のホームだとか。
駅のホームといえば、私の行動範囲で最も寒いのは東飯能と西国分寺である。
朝でも夕方でも、とにかく我慢ならないくらい寒いので、持っていったものをすべて着込むし、山では使わない防寒着を駅で着るためだけに持って行ったりする。
特に東飯能駅の八高線ホームは待合室もなく、うっかり改札を通ってしまうと吹きさらしのホームに降りるしかなくなってしまうので、電車の来る頃合いまで改札を通らず、連絡通路のベンチに座って待つ方がいい。
先日、この東飯能駅でまさにうっかり改札を通ってしまった。電車が来るまで20分以上ある。仕方なくホームのベンチに座ってみたものの、寒さに耐えきれなくなってトイレへ駆け込んだ。けれどトイレで用を足したり身繕いをしたりしても数分で事足りてしまい、渋々と寒風吹きすさぶホームへ戻った。
すると、何という事か、制服姿の女子高校生たちがコートも羽織らず生脚もあらわにホームのベンチに座っている。しかも、あろうことか彼女らは自販機のアイスを買って食べているのだ。
若さとは、熱量(カロリー)なのだなぁ。
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する