神永幹雄編 新潮文庫 2023/8
全十三篇のアンソロジー。どれも珠玉の一篇で心に残りました。読んだことのあるものも再読したくなるし、未読のものは入手したくなります。
高尾山のフクジュソウに始まり、徐々に難度があがっていき、最後はヒマラヤのギャチュン・カンからの壮絶な生還の記録。
構成も素晴らしいし、それぞれのあとについた解説も素晴らしく、深い読後感に浸れました。
高尾山・フクジュソウはエッセイのお手本のような作品。こんな文章が書けたらなあ!
立松和平の紀行文も、紀行文とはこんなふうに書くのだというお手本のような作品です。
『山のパンセ』は持っていますが、実をいうと読んでいるうちに眠くなってしまい、途中で止まっていました。ここにある「島々谷の夜」はわりあい好きな章です。
どちらかというと辻まことのほうが好みかも。
長谷川恒男さんは、お会いした翌年の文章なのだなあと、伺ったお話を思い出しながらしみじみと読みました。
中嶋正宏氏の遺稿は、生きること、登ることを思索する、ひりつくような内面の記録に胸を打たれます。
山野井氏の文章の冷静さにも驚かされました。手元に未読の『凍』があって次に読もうと思っていたのですが、先に『垂直の記憶』を読んでもいいなと思いました。どっちからにしようか、楽しみです。
以下、目次のご紹介。
『花の百名山』文春文庫 「高尾山・フクジュソウ 」田中澄江
『百霊峰巡礼 第一集』東京新聞出版局 「御嶽山」立松和平
『黄色いテント』ヤマケイ文庫 「ある単独行者の独白」田淵行男
『山のパンセ』ヤマケイ文庫 「島々谷の夜」串田孫一
『山頂への道』平凡社 「スコトン岬」山口耀久
『深田久彌 その山と文学』平凡社「日本百名山」近藤信行
『深田久彌氏のこと』日本山岳会会報「山」三一一号 藤島敏男
『アルプスの蒼い空に(上)』茗溪堂 「グレポン」近藤等
『マッターホルン北壁』ヤマケイ文庫「岩と氷と寒気との闘い」小西政継
『チョモランマ 見果てぬ夢』山と渓谷1989年3月号 長谷川恒男
『ともに、あの頂へ』私家版 「Mr.ハクパ・リタ・シェルパ 」加藤慶信
『完結された青春』山と渓谷社 遺稿 中嶋正宏
『垂直の記憶』ヤマケイ文庫 「生還」山野井泰史
コメントを編集
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する