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写真2）長野市松原遺跡（高速道路工事前に発見）赤漆塗りの結歯式堅櫛で長い柄と残りの良い歯は稀な名品だ。
写真3）浅川扇状地遺跡群と方形周溝墓＋箱清水式後の土器
長野県では他県同様、毎年県内の発掘調査に関する展示と講演などで市民にその様子を伝えている。また県歴史館（長野市＝北信）での発掘展のあと３地域（中信、東信、南信）を巡回する。塩尻は中信エリアにあたり、例年は安曇野市で開催され、しおじりで行われるのは初めてらしい。古墳古代の中部高地の役割を考えると、列島を北へ東へ移動するメインストリートだったように思える。東山道がより重要で、東海道は当初は多くの大河河口をわたらねばならず、海岸線も険しい場所が多いために咲けることが多かったと思われる。また古代交通を支える馬生産の拠点でもあり、それらに関連する古墳など多くの遺跡が眠っている。縄文王国だけが信州ではないようだ。
今回の県発掘展は3部構成で、県の資料によれば
１）長野県埋蔵文化財センターが発掘・整理を行った遺跡
―特に朝日村山鳥場遺跡出土の石囲い炉と出土土器圧痕から発見されたエゴマやダイズ、アズキ類の圧痕から、当時の食生活、農耕社会の成立期の状況を探る手掛かりが得られている（当日の解説から）。
２）市町村教育委員会が調査・整理を行った遺跡(長野県の弥生時代)
このコーナーは北信中心で、特に千曲市の力石条里遺跡出土土器で、東海地方の条痕門土器があり、東海地方の影響を受けて中部高地の農耕社会が成立したことが推定される。また佐久市の北一本柳遺跡の箱清水式の赤塗り土器壺からは大量の炭化稲籾が発見され、この地域の農耕社会形成過程の一端を探ることができる。
また長野市の高速道路建設時に発見された弥生中期の松原遺跡からは多くの木製品が出土、なかでも赤漆塗りの櫛は長三角の独特の形でなかなか残らない櫛の歯の一部が見事に残り、他ではなかなかでない名品だった。
３）長野県立大学設立に関わる発掘・整理遺跡
長野遺跡群の県町遺跡の中の後町小学校地点で出土した中期の栗林式後半期の土器の壺から炭化粟粒が発見され、やはりこの地域の農耕社会化の過程の解明に一歩前進した。
また、弥生時代後期になると次第に石器が減少し、鉄器が増えてくるのが普通だが、飯田などの南信の遺跡では、鉄器が少なく、この時期でも石器が多いようだ。おそらく北信などでは、北陸との関係で日本海側から鉄器が入手できたであろうと考えられるが、南信ではそうしたルートがなかったのかーー東海からの入手はなかったのか、あるいは伝統文化を守る社会だったのかーーそのあたりはどうだったのかな？
長野県域の弥生墓制の変遷
また二階の展示室には関連展示として塩尻市内＋中信（松本市・安曇野市）地域の弥生遺跡展示があり、とりわけ弥生時代の墓制の変遷が分かる展示が興味深かった。
1．再葬墓（土器棺墓）：松本平のほうろく屋敷遺跡から11基の再葬墓が出土、上部には敷石の配石が見られたようだ。円形・楕円形の墓穴に2〜4個の骨を入れたと思われる土器があり、その多くは壺だった。
2．礫床木棺墓：主として弥生中期、四方を板で囲み、そこに木の代わりに礫を敷いた墓制。長野と群馬に多く、遺跡数で30、墓で300基と限られた数。あるいは渡来系文化と関係あるか？
3．木炭棺墓：松本市県町遺跡で指輪状石製品や鉄釧（腕輪）の副葬品を伴うお墓で100�僂曚匹涼魂什爐�発見された。埋葬時に焼いたん墓か、埋葬前から炭化した材を木棺に使ったのかなどp不明点が多いが、年代測定では弥生後期と出ている。
4．方形周溝墓：松本平の田川流域で多く発見されている。丘中学校遺跡から全長13m、副葬品にガラス小玉110点や管玉、鉄釧などが出土した方形周溝墓が見つかった。
中部高地の弥生時代の始まりの時期の再葬墓は、縄文時代の終わりごろから続くお墓の伝統が継承されている。集落から少し離れた山の上などに作られ、人々がどのような信仰、考えのもとにそうした墓制を持ったのかはよくわからない。ただし、現代のお墓も、一度ご遺体を燃やして、骨を取り出してからお墓に入れるという、ある種の再葬墓とも言われている。この世とあの世をつなぐなんらかの共通する信仰があるのかもしれないーー。
一方、縄文時代でも弥生時代でも通常のお墓は考古学で土壙と呼ばれる穴の中に人は葬られた。弥生時代でもこうした土壙は多く見られる。土器棺墓や酷寒墓、礫床木棺墓、木炭棺墓、方形・円形周溝墓などはむしろ特殊な墓制で、身分差・階層差が顕著になってきた証のようだ。
この発掘展巡回は、9月17日まで平出博物館（塩尻）、9月29日から11月25日までは浅間縄文ミュージアムで開催される。
平出博物館の巡回展展示リスト
１）の展示遺跡：栄村 ひんご遺跡(縄文時代後期)、中野市 柳沢遺跡(弥生時代中期)、長野市 小島・柳原遺跡(平安時代)、長野市 長谷鶴前遺跡(近代)、朝日村 山鳥場遺跡(縄文時代中期)
２）の展示ー土器・石器等須坂市 塩川・須坂・小山遺跡群 須坂園芸高校内(後期終末〜古墳前期初頭)、長野市 塩崎遺跡群(中期前葉〜中葉)、長野市 篠ノ井遺跡群 高速道路地点(中期中葉)、長野市 浅川扇状地遺跡群長野吉田高校グランド遺跡(後期初頭)、長野市 浅川扇状地遺跡群 桐原宮北遺跡(後期終末)、千曲市 力石条理遺跡群(前期)、佐久市 森平遺跡(中期後葉)、佐久市 枇杷坂遺跡群道路遺跡��(中期終末)、飯田市 恒川遺跡群(中期後葉)、飯田市 高松原遺跡(後期前半)稀少遺物
長野市 松原遺跡 高速道路地点(漆塗り竪櫛・炭化種子入り小壺:中期後葉)、長野市 長野遺跡群県町遺跡 後町小学校地点(炭化粟粒入り小壺:中期後葉)、佐久市 岩村田遺跡群北一本柳遺跡��(炭化米入り壺:後期後半)、佐久市 西一里塚遺跡群(鉄剣・鉄釧・後期後半)
3）の展示ー長野市 浅川扇状地遺跡群 本村南沖遺跡 長野県短期大学構内(弥生時代後期初頭・平安時代)、長野市 長野遺跡群 県町遺跡 後町小学校地点(弥生時代中期後半・平安時代)
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